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【詩】六月の慈愛

パン屋の前に咲いている
紫陽花に顔を近づけて
かたつむりと喋っている犬
瞳が大きくなったり小さくなったり
空に飛行機雲が寝転んで
カーブミラーで朝が呼吸している
夜やんだ雨で町は濡れて
マーマレードジャムみたいに輝いている
洗濯物が風に揺れて
緑のバスが通り過ぎる
次第に空気は夏色に染まる
天然パーマはくるくる
12本の色鉛筆を取り出して
スケッチ帳を開いた老人
瓶に入ったコーヒー牛乳を
ちびちび飲んでいる
公園のベンチに座っている
幼稚園生のカップルの長靴は黄色くて
永遠も瞬間も知らない
小さな手を強く握りあっている
6月の慈愛はしんみりと
優しさに変わっていく
水溜まりを避けて白いスニーカー
麦わら帽子を早くかぶりたい
Tシャツで自転車をこぎたい

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