見出し画像

【詩】夜の帝王

夜空から星を引き剥がして
ベーコンに挟んで食べる
眠れない人達のため息が
高速道路の底で鈍く輝いている
夜の帝王は砂漠で生まれて
真珠湾で育ったものだから
言葉が微妙に訛っているけど
それを指摘する人は誰もいない
家の壁にはマティスを飾っていて
地下室の金庫にダイヤモンドが
小麦粉のように詰め込まれている
金に困ったことがないのは
自慢にはならないと思っている
昔、マーガレットという恋人がいたが
「愛している」という発音の
仕方が分からないまま
夜の帝王が欠伸をするたびに
マーガレットの身体は小さくなっていき
最期は花の種になった
その種をウイスキーに浮かべて
静かに腐っていくのを眺めている
優しさとは嘘をつくことだと気づいたとき
夜は明けないものに変わった
それから100年が経った

いつも記事を読んで頂いてありがとうございます。フォローや、ハートマークで満足ですが、ご支援して頂いたら、詩集の制作費の足しにさせてもらいます!