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【詩】夏に栞を挟む

時を言葉が凍らせる
それを目の当たりにした僕の瞳が
夜に沈んだ貝殻になる
パノラマの象は鼻を宇宙まで伸ばす
輪郭を失った顔に矢印をつけて
文学少女の吐息が窓を湿らせている
いつもの星は路地に埋もれて
皮膚病の猫はぼやけた街灯に栞を挟む
尻尾にも見えるし棘にも見える
活字からもらえる回復薬は塗るタイプ
食器を集めるのが唯一の趣味で
台所に北欧が息づいている
最近では新聞紙もとるのをやめてしまった
ほうき星が港に墜落した噂は聞いたが
真相は知らないままでいい
一杯の熱い珈琲をトンネルにして
貫通した微笑みを思い出す
染みのついたカンヴァス
苺の絵を描いてレコード盤に針を落とす
太宰も芥川も腱鞘炎だったのか?
血を滲んだ万年筆が文学館にあった
僕のおばあちゃんのおばあちゃんは
戦争があった熱い夏に
枯れたヒマワリを見ただろうか?

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