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【詩】ベンガルトラ

動物園の檻のなかには
夏の暑さにやられて
心壊してしまったシロクマや
夜が明るくうるさくて
不眠症の象や
野菜くずや腐りかけの果物に
叫び続ける猿がいた
みんな怒りと悲しみで混乱して
自分の運命を呪っているようだった
でもベンガルトラだけは
生ぬるい水を舐めることもなく
堂々と空を見上げていた
自分中心に世界は回っていると
彼は知っていたのだ
絵の具を溶かしたような青
人間達を静かに見つめ返してる
突き刺すような眼は
野生を忘れていなかった
王様は俺なのだという姿勢
自由よりも美しいものがあった
それは殺意かもしれない
僕はカバンからスケッチブックと
2Bの鉛筆を取り出して
ベンガルトラの絵を描いた
遮る鉄格子のメタファー
大事なことは忘れがちだ
どんな場所に置かれようとも
誇りを持て、と彼は僕に言った
僕にはただ頷くことしかできなかった

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