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LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略/リンダ・グラットン,アンドリュー・スコット

「私たちはなにかを選択するとき、それ以外のなにかをしないと選択することになる。」(p.29)
「あなたが自分の人生をどのように計画するかが最大のテーマだ。あなたは、これまでより多くの選択肢を手にし、多くの変化を経験するようになる。そうなったときに大きな意味をもつのは、あなたがどのような人間なのか、なにを大切に生きているのか、なにを人生の土台にしたいのかという点だ。」(p.36)
「第二次世界大戦期にイギリス首相を務めたウィンストン・チャーチルは、その点について賢明な言葉を残している。「未来に目を向けることは、つねに賢いことだ。しかし、目で見えるより先を見ることは難しい」。そう、未来を予測することは難しい。」(p.87.88)
「複雑な問題解決能力が人間固有の能力だと言われる核心には、「ポランニーのパラドックス」がある。物理化学者でも哲学者でもあるマイケル・ポランニーは、「人は言葉で表現できる以上のことを知っている」と主張した。この指摘のとおり、人間がもっている知識のかなりの割合は暗黙のものだ。そして、そうした知識はマニュアル化できず、ロボットや人工知能によって複製できない。一方、対人関係と状況適応の能力が人間固有の能力とされるのは、「モラヴェックのパラドックス」と関係がある。これは、「コンピュータに、知能テストや(ボードゲームの)チェッカーで成人レベルのパフォーマンスを発揮させることは比較的容易だが、知覚と運動のスキルで1歳児並のパフォーマンスを発揮させるのは困難、もしくは不可能である。」という考え方だ。ロボットは複雑な分析なら簡単にできるが、コーヒーカップを持ち上げたり、階段を上ったりすることには苦労するのだ。
しかし、これらの分野でも人間の優位は長く続かないと主張する専門家もいる。確かに、クラウド・ロボティクスやディープラーニングが急速に進歩すれば、人間が機械に対してもっている優位は失われかねない。クラウド・ロボティクスは、ロボットがクラウドネットワークを通じてほかのロボットの学習成果にアクセスできるようにするテクノロジーだ。この技術が発展すれば、指数関数的なペースでの学習が実現するかもしれない。間違いなく、その速度は人間の学習速度をはるかに上回るだろう。一方、ディープラーニングは、人間が経験からの連想を通じて帰納的推論をおこなうプロセスを模倣しようというものだ。ここでも、クラウドを通じてほかのロボットの学習成果を利用できるようになる可能性がある。」(p.110.111)
「テクノロジーは雇用に好影響を及ぼすのか、悪影響を及ぼすのかというのは、私たちの将来を大きく左右する重要な問題だ。ここまでの議論をまとめると、テクノロジーの観点からは、次のような見方になる。 イノベーションの速度が目を見張るほど加速しており、機械は人間には太刀打ちできないような知能をもつようになる。その結果、人間の労働者は機械に取って代わられ、いくら教育に投資しても、安定したキャリアと満足いく所得を手にできない時代になるという。それに対し、経済学の観点から見ると、状況はもっと明るい。テクノロジーは雇用を奪うだけでなく、それによって補完される雇用も新たに生むし、経済生産を増やして雇用を増加させる効果もあるというのだ。それに、まだ予見されていない新しい製品やサービスが登場し、新しい産業が台頭して、それが経済成長を牽引することも期待される。」(p.115.116)
「とくに興味深いのは、ハーバード大学の「グラント研究」だ。 1938~40年にハーバード大学の学部生だった268人の男性を75年間追跡調査した研究である。この研究によれば、有形の資産が重要なことは間違いない。金銭的資産が乏しかったり、ほかの人より少なかったりすれば、不満が生まれる。しかし、人生に満足している人に共通する際立った要素の一つは、生涯を通して深くて強力な人間関係を築いていることだった。この研究を初期に主導した研究者のジョージ・ヴァイラントによれば、幸福を支える柱は二つある。一つは愛、もう一つは、愛をないがしろにせずに済む生き方だ。稼ぐ金が増えれば、幸福の度合いは高まるかもしれない。しかし、幸福かそうでないかをわけるのは、あくまでも愛なのだ。」(p.124.125)
「学ぶことは人生の重要な要素であり、その価値は所得の源になるだけではない。南アフリカの黒人指導者である故ネルソン・マンデラは、「教育は世界を変える最も強力な武器」だと喝破した。」(p.131)
「問題は、一つの分野の専門技能を習得するだけでは、おそらく長い勤労人生を通して生産性を維持できないということだ。しかも、新しいテクノロジーが登場するペースの速さを考えれば、どのような専門技能もいずれ時代遅れになる可能性が高い。」(p.134)
「知識の量ではライバルと差がつかず、その知識を使ってどういう体験をしたかで差がつく時代になるのだ。」(p.135)
「なにかが変わるときは、なにが変わらないのかが重要な意味をもつ。」(p.163)
「私たちは、誰もが現状維持を好む。既知のものを選ぶ傾向がきわめて強い。人はたいてい、経験したことのない生き方を想像することが難しいのだ。」(p.170.171)
「生涯ずっと高所得者であり続けたいのか?1人のパートナーとの関係を生涯保つには、どうすればいいのか?どの程度のリスクを背負う覚悟があるのか?どのような仕事にやり甲斐を感じるのか?社会にどのような貢献をしたいのか?いまチャンスを全て生かしているか?保守的な生き方をしすぎていないか?」(p.171.172)

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