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朝のはなし。(2)

今日の主人公は、小学5年の男子、ハルタ。

今日も朝が来た。

ハルタには、通学路で嫌いな場所がある。

家から10分くらい歩くと、歩道に沿って、大きなコンクリートの壁が続く場所がある。

そのコンクリートの穴に、鳥の巣がたくさんできており、道路を挟んでコンクリートの反対側にある、公園の木と、鳥が行き来するのだ。

ハルタは、人以外の動く生物が苦手だった。

「くそー、きょうは、とおまわりするじかんもないじゃん」

ハルタはその場で30秒足踏みしてみた。

鳥がいなくなることを願ったが、まあ、無理だった。

ハルタは決心し、目をつむった。

(ごめんなさい、ゆるしてください、わるいことしませんから、わたしはあなたのみかたです。)

そう心の中で叫びながら全力で走った。

走り出して15秒くらいたった時、一羽の鳥が、ハルタの頭上20㎝くらいの穴から飛びだした。

「わああああああ!!!」

びっくりして、思わず叫んでしまった。

顔の真ん中に、目や口を一点に集中させて、ハルタ史上一番のぶさいくな顔で、死に物狂いで走った。

先週の学校の全校朝礼で、校長先生が教えてくれた言葉を思い出し…

(キョウセイ(共生)、キョウセイ、キョウセイ!!)

そう言いながら走り抜けた。

そのコンクリートのゾーンを抜けると、ハルタは気づかぬうちに涙が出ていた。

(てをだしてきたことはないし、いいやつらなんだろうな。いつか、なかよくなれるってことにしよっと。)

ハルタは、鳥に怖がっていたところを誰にも見られていないことを確認して、早歩きで学校へと向かった。

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