エヴァンゲリオンシリーズ(TV版・新劇場版)におけるエントリープラグについての小話

エヴァンゲリオンを操縦する上でパイロットのコクピットとなるエントリープラグ。
これはパイロットの脱出装置を兼ねているのだが、TV版ではほとんどその動作を見せることがなかった。
一方で新劇場版シリーズにおいては、何気にその回数も多く描写されたのだが、どうもちょくちょく設定に食い違いが出てきてしまっている。
そこを振り返ろうと思う。


・エントリープラグの脱出機構について

プラグ射出するエヴァ零号機(TV版)

エヴァのエントリープラグは脱出機能を兼ね備えており、パイロットの生存性を図るために強固に作られ、また遠距離に退避できるようロケット射出機能が備えられている。

零号機搭載の試作型エントリープラグ(序)
新劇場版は試作型も直線噴射ではなく曲線噴射となっている

エントリープラグにも世代があり、初期の零号機に搭載されているものと初号機以降の機体に搭載されているプラグは機能が異なっている。
まず、零号機型を見ていく。

「新世紀エヴァンゲリオン TVアニメーション設定資料集」より

これが初めて搭載型として実用化されたエントリープラグ。
パイロット正面を前部、ロケットブースター設置側を後部とする。
①射出用にロケットブースターが4基ついており、単純なロケット射出となる。
②上部にカバー、これはケイジでシートやパイロットが搭乗する用の場所。
③側面に非常ハッチが設置、外部から開けられる。

なお、零号機タイプは内部からのハッチ開閉は出来ないという仕様。(エヴァンゲリオン・クロニクル)
またロケットのみにおいては、新劇場版では曲線状に噴射する後述のタイプと同様の仕組みとなっている。

「新世紀エヴァンゲリオン TVアニメーション設定資料集」より

こちらは初号機以降の機体に搭載されたエントリープラグ。
①ロケットブースターが8基に増設され、また噴射方向が円周状にになり、プラグが回転して射出する。飛行弾道の安定化が目的か。
②上部のカバーにはイジェクションカバーが増設、外部から上部の脱出を可能にしている。外部からは側面のボックスにあるキーが必要。

インジェクションカバー

また零号機タイプではサポートされていなかった、内部からの開閉も可能になった模様。

エヴァ単機でスライドカバーの排除ができている(第九話)
プラグ内上部にも開閉レバーが有る(第拾七話)
ただ、まずプラグ射出が行わなれなければ物理的に開かないだろう

③側面ハッチは同等のもの。内側からは相変わらず開けられない。

ロケットで射出後、プラグは一定距離を飛行後にパラシュートで着地する仕様となっている。

パラシュートはロケットブースターよりプラグ側に収納されている

新劇では内部にはサバイバルキットも常備され、救出待ちや退避行動を可能にしているようだ。

ヴィレもポーチタイプを常備している模様(シン)

・劇中描写

実際のところ、この設定はTV版で生かされることは殆どなかった。
というのも脱出するシーンがあまりなく、そもそも機構動作に失敗することが多いためだ。
・零号機 起動実験時の自動射出(成功するが意図しない閉所動作)
・初号機 初陣(反応なし)
・零号機改 機体互換性実験(反応なし)
・シミュレーションプラグからの射出(成功
・初号機 レリエル初戦(反応なし)
・エヴァ3号機 使徒侵食後(信号は受信し動作するも使徒により妨害)
・初号機 ゼルエル戦後
等々…圧倒的に成功例が少ないのである。

ところが、新劇場版では結構出番がある。
「破」の仮説伍号機の脱出に始まり、「Q」ではMark9、改2号機、13号機と非常に数が多い。
「シン・エヴァンゲリオン」においてもやはり新2号機、13号機とここでも射出の光景が広げられた。

仮説伍号機のエントリープラグはブースターではなくロケットユニットで飛翔(破)

そもそも脱出=エヴァ機体の放棄に近いこともあり、それぞれの機体―――特に唯一無二の初号機に対しては機体の破棄という選択肢が物語上取りづらいというのも有る。
一説では、実は失う訳にはいかない初号機に対するプラグ射出はゲンドウないしはリツコに意図的に不発にさせられていたのでは……なんて話も浮かびそうで。

・第13号機のエントリープラグの謎

ところで、「Q」と「シン」で射出した13号機のエントリープラグ。
何気に劇中でじっくり見ることができる数少ないプラグなのだが、「破」からだいぶ間が空いたせいか、微妙に設定がちゃんぽんになっているようなところがある。

こちら、「Q」終盤の墜落したシンジの第13号機のエントリプラグ。

第13号機のエントリプラグ(Q)

さて、この写真のプラグの左側、ロケットの燃焼痕が確認でき、また右側にパラシュートの残骸が確認できる。
エヴァから射出する関係上、ロケットは当然エヴァの外側、パイロットからすれば頭、背中側になる。これは上記の設定資料からも明白である。

右上に見えるプラグインテリア(操縦席)は、別カットから正面向きとわかる(Q)

先のカットからアスカの立ち位置はロケット側であるとわかるが、プラグインテリアの位置とシンジの位置を考えると、少々奇妙なことになる。
インテリアはシンジ、アスカ側を正面に向いているが、そうするとロケット噴射側に向いていることになる。
そしてパラシュートはロケット基部に格納されているはずだが、パラシュートの残骸が右側にあることを考えると逆側に設置されているような見せ方である上、ロケット部分が吹き飛んでいない。

「Q」の制作を考慮すれば、正直そこまで設定を細かく考えて作画する必要があるかとも言えるが、もう1つ怪しい描写が「シン」にもあったりする。

ネオンジェネシス後にケンスケ宅に不時着したアスカのエントリープラグ(シン)

ネオンジェネシス後、第13号機に取り込まれたアスカのエントリープラグが第3村郊外に不時着している。
このエントリープラグは正しくロケット部分が吹き出し、パラシュートが展開されているが、こちらもやはりプラグインテリアが逆向きになっている。

シートの形がはっきりと前後を示している(シン)

では第13号機のインテリアが前後逆というそういう仕様になったのか?というと疑問が残る。

第13号機の視点は普通のエヴァのそれと代わりはない(Q)
第13号機エントリープラグ挿入時(Q)

挿入も従来同様にロケット噴出口を上にした形であるし、またパイロットの視点も同じものである。
もしプラグインテリアがロケットブースター側に向いているとすれば、パイロット達は上を向きながら前後逆に操作することになってしまう。
LCLや神経接続でどうにか補えたとしても、わけが分からなくなりそうである。

以上、実際はただの作画ミスが連続というかそこまで気にしていられないという話なのであろうが、どうしても気になってしまった話である。

・余談

「Q」ラストでのエントリープラグのシーン、アスカがこれを開けているのだが、スライドカバーやハッチではなくイジェクションカバーを開けている点が細かい。初めて使った機能だと思う。

・追記 2023-11-09

動画にしました
https://youtu.be/zSCPAzybxn0

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