プレミアリーグという名の高円宮杯を見ながら、世間でよく言われる「あれ」について真剣に考えてみたら、というお話
プレミアリーグを見てきました。と言っても、イングランドでも香港でもなく、日本のプレミアリーグです(笑)。U-18年代の全国リーグのプレミアリーグは高校、クラブユースの垣根を取り除いた、全国24チームからなるユース年代のトップリーグです。24チームを東西12チームずつに分けて、ホームアンドアウェーの2回戦総当たりで順位を競い、リーグ終了後は、東西の優勝チームはプレミアリーグファイナルを開催、その年のユース年代王者を決定します。東西下位2チームは各地区で同時に開催されているプリンスリーグへ降格。プリンスリーグからは、各地区の優勝、もしくは上位チームによるプレミアリーグプレーオフが開催され、そこから4チームが来年のプレミアリーグに昇格します。たまに札幌U-18の話題の時に出てくるのが、この大会のことです。
昨年からチーム数が東西各10チームから12チームに増え、試合数も増えた上にイーストには北海道の旭川実業、ウエストには鹿児島の神村学園が加わって、移動距離が半端なく増えた今年のプレミアリーグ。そんなプレミアリーグで今年何かと話題となったのが、横浜FCユースがイーストではなくウエストに参戦したということです。このことは、少し前の記事の冒頭に少しだけ書いていたので覚えている方もおられるかと思います。
念のため、今年のウエストの全12チームを西から上げていくと神村学園(鹿児島)、大津(熊本)、鳥栖U-18(佐賀)、東福岡(福岡)、広島ユース(広島)、米子北(鳥取)、神戸U-18(兵庫)、履正社(大阪)、名古屋U-18(愛知)、磐田U-18(静岡)、静岡学園(静岡)、そして横浜FCユース(神奈川)となっています。そしてイーストを東から挙げていくと旭川実業(北海道)、青森山田(青森)、尚志(福島)、前橋育英(群馬)、昌平(埼玉)、大宮U-18(埼玉)、市立船橋(千葉)、柏U-18(千葉)、流通経済大柏(千葉)、FC東京U-18(東京)、川崎U-18(神奈川)、そして横浜F・マリノスユース(神奈川)の12チームです。
つまり、同じ横浜市内にありながら、ちょっとだけ東か西かで年に北海道1回と東北に2回だけの遠征で済むチームと、年に4回の九州、同じく2回の中国、2回の関西、そして名古屋と静岡2回の遠征をしなければいけないチームとに分かれてしまうのです。それも、車で行けば20分も掛からない距離でですよ!実に恐ろしい話です…。
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横浜FCユースの練習場(西谷)までの距離、わずか9km弱。
この差で東西に分かれてしまいました…(ガクガクブルブル)
そんな可哀想な横浜FCユースの試合。本当は一番遠いアウェイの鹿児島まで行こうと思っていたのですが、結局予定が合わず断念。代わりにと言ってはなんですが、逆に一番西から横浜に来る神村学園の試合を見ようではないかということで先月、三ツ沢陸上競技場で行われた横浜FCユースvs神村学園の試合を見てきました。
9月に横浜FCを見た時、横浜FCは9位と苦しんでいました。慣れない長距離遠征に加えて、特に当たりの強い九州のチームとの対戦は彼らにとって未知数で、疲労とメンタルのピークだったのかもしれません。対する神村学園は前期は比較的好調でしたが、夏以降はやや下降気味といったところでした。
ところが残り3節となった終盤のこの日、横浜FCはどんどん勝っていきこの時点でまあ残留出来るのではないか?というところまで辿り着きました。逆に神村学園は調子が下降の一方。この日負ければ残留に黄色信号が灯るくらいのところまで来ていました。
そんな対照的な両チーム。でも、試合の立ち上がりに優位になったのは神村学園でした。開始5分に24番の下川の放ったミドルシュートをキーパーが弾いたボールに詰めた16番佐々木のゴールで神村学園が先制します。しかしその直後、横浜FCも8番加藤のシュートがDFに当たってオウンゴール。すぐに追いつきます。
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ここから試合は共に撃ち合いの様相を呈していきます。18分に横浜FCがCKから岩崎のゴールで勝ち越すと、32分には神村学園が先制ゴールの佐々木の2点目で追いつきます。
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キーパーとポストのわずかな隙間にヘディングシュート。
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天才的なストライカーぶりを発揮したゴールでした。
そろそろ試合は落ち着くかな、と思った直後の34分。追いつかれた横浜FCが再び勝ち越します。前半は3-2というスコアで横浜FCリードで終わりました。
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後半に入っても試合は落ち着くことはなく、56分に横浜FCが追加点。さらにその5分後にはダメ押しとなる5点目。神村学園の息の根を止めにかかります。
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横浜FCの攻撃的な姿勢が際立ったゴールシーンでした。
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得点感覚の鋭さが勝ったゴールでした。
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苦しみながらも最終順位の5位は納得です。
このままでは終われない神村学園も67分にセットプレーから1点返しますが、そこまででした。試合は5-3というスコアで終了。共に守備よりも攻撃に特化した、見ていて楽しい試合でした。
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最後まで諦めない姿勢を貫いていました。
勝った横浜FCユースはこの勝利でほぼ残留が確定。長距離遠征の続いたシーズンを何とか無事に終えそうです(しかし、後日行われたプレミアプレーオフの結果で、もしかしたらまた来年もウエストの可能性が残ってしまいました。それについては後ほど改めて…)。負けた神村学園はこの試合の結果、暫定で降格圏内となりましたが翌週の試合に勝利。さらに延期となっていた最下位履正社との試合にも勝利。最終節を待たずしてプレミアリーグの残留を自力で決めました。めでたしめでたし…。
全国リーグを単純に東西で分けると、最初はまあうまく行くのですが…
さて、この高円宮杯プレミアリーグですが、始まったのは2011年。それまではトーナメントで行われていましたが、トーナメントだと負けると試合経験を積む場がなくなってしまういう理由から、リーグ戦形式が導入されました。現在は東西12チームずつですが、一昨年までは東西10チームずつでした。
毎年、降格や昇格によって東西の境目となるチームは異なるのですが概ね東海、静岡県のチームがその境界になっていました。初年度からずっとプレミアリーグにいた清水ユースは一昨年までは東、イーストに所属していました。同様に初年度から参加した静岡学園も2013年に降格するまでの3年間はイーストでした。2018年に昇格した磐田ユースもやはりイーストに組み込まれました。逆に北信越から初年度に参加した富山第一はウエストに割り振られました。その富山第一は2014年に降格、次に昇格したの2018年ではウエストではなくイーストに組み込まれ、それが原因かは分かりませんがその年に降格してしまいました。
実はその前の年から東西のバランスが崩れていたのです。というのも2016年のプレミアリーグプレーオフで昇格したのが浦和U-18、阪南大高、米子北、福岡U-18と東1西3ということになったのです。それでもウエストにいた東海のチームがイーストに移れば問題なかったのですが、その年名古屋U-18が降格。次に一番東にいたウエストのチームだった京都U-18が、2017年にイーストに移るという異常事態となりました。その年はよく覚えていて、私も東城陽のサンガタウンまで青森山田との試合を見にいきました(笑)
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得点板にはちゃんと「青森山田高校」と書かれてます(笑)
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控えにもバイロンや三国ケネディエブスとかいて、
よく考えたらすごいメンバー見てたんですよねと…
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ベンチにも山田楓喜がいたりと結構豪華でした。
この年の京都は、一番近くても清水という過酷な遠征に耐えて何とか残留できました。まあ、今から思うとあれだけのメンバーだったから残留出来たのかもしれませんが…。そう考えると富山第一の降格はやはり遠征距離の影響がないとは言い切れないですね…。
年々、東西の境界が東にスライドするプレミアリーグ…
東海の磐田U-18が2018年に昇格しますが、磐田はイーストでのリーグ参戦でした。翌年もイーストでしたが、コロナ禍明けの2021年にウエストに転籍させられます。前年度の2020年はプレミアリーグを開催できず、プレミアリーグの代替としてプレミアリーグ関東を、他の地区はプリンスリーグを期間を短縮して開催されました。その影響で昇格チームが従来のプレーオフとは違う形となり、プレミアリーグ関東の上位チームのうち、前年度プレミアリーグに参戦していなかったFC東京U-18、横浜F・マリノスユース、横浜FCユースの3チームと、12月に開催されたクラブユース選手権の優勝チームである鳥栖U-18の4チームが新たに昇格しました。そのため、磐田U-18が2019年のイーストからウエストに変更されました。
その翌年からは東西12チームずつでの開催に伴い、降格2昇格6となりました。降格したのが浦和ユースと京都U-18、昇格したのが桐生第一、川崎U-18、静岡学園、前橋育英、JFAアカデミー福島、履正社と東5西1となったため、磐田だけでなく清水ユースと静岡学園までウエストに移ることとなりました。それでも磐田はその年3位、静岡学園も4位となり残留出来ましたが、清水は11位に低迷。2011年のリーグ初年度からずっと残留していた清水ユースがウエストへの転籍を機にプリンスリーグに降格するという残念な結果になってしまいました。
そしてもう一つ。この年のプレーオフには東西の10位チームも参戦、勝ち上がらないと残留出来ないレギュレーションでした。イーストの10位市船橋は愛媛U-18に勝利しましたが、ウエスト10位のC大阪U-18は神村学園に敗退。ウエスト12位のG大阪ユースと共にプリンスリーグ関西に降格。昇格を賭けた京都U-18も旭川実業にPK負けを喫し、関西勢は神戸U-18と履正社だけとなりました。残る昇格チームが福島の尚志、埼玉の昌平、鳥取の米子北。東4西2となったため、ウエストの一番東端の静岡学園よりもさらに東にあたる横浜FCユースが2023年の今年、ウエストに参戦することとなったのです。
そして今年のプレーオフですが、昇格を決めたのは岡山U-18、鹿島ユース、鹿児島城西、帝京長岡の4チーム。東西2チームずつということで、来年も横浜FCか帝京長岡のどちらかがウエストに入ることが確定。東西の位置関係から帝京長岡の方が西に位置するので、帝京長岡がウエストに入るのではないかと予想されてますが、果たしてどうなることか…。
全国リーグを単純に東西で分けるのはありか、それともなしか…
全国リーグだと移動とかの費用が嵩むので、下の方のカテゴリーは東西とかに分けた方がいいのではないか?という議論がよくなされます。一見、費用が抑えられそうに思えますが、実際はそうでもないです。現状のプレミアリーグイーストのようにほとんどのチームが関東に集中していれば、関東のチームにとっては近場のアウェイが大半となるので、遠征費は比較的抑えられるでしょう。しかし、イーストにいる青森山田から見ればアウェイの大半が関東なので、その都度関東までの遠征費が掛かってきます。おそらくバス移動がほとんどかと思われますが、費用を抑える代わりに選手のコンディションへの負担は相当なものと思います。それでも過去3度の優勝、うち2回はファイナルも制し、さらに初年度から一度も降格していないという成績は、驚異的と言えるでしょう。そんな青森山田の凄さのおかげで、イーストの遠征に対するさまざまな負荷が見過ごされてはいないか、と思ったりもするのです。
逆にウエストはというと、関西から九州への移動となるとバス移動というのがあまり現実的ではありません。なので、関西や名古屋から九州方面への移動は、おそらく新幹線を使っているのではないかと推測します。さらに今年のように鹿児島の神村学園が参戦するとなると、場合によれば飛行機移動という可能性も出てくるのではないかとも思います。
これが静岡や今年のように横浜FCとなると、さらに移動費は大変なことになります。もちろん選手への負担もそうです。清水ユースがウエストに移った年に降格したというのも、もしかすると移動の費用を抑えようとしたあまり、選手に移動の負担となってコンディションを崩してしまい、そのままズルズルと成績が伸びずに降格した、ということも十分に考えられるでしょう。
来年度の編成はまだ発表されてませんが、横浜FCユースか帝京長岡のどちらかがウエストに入るのは確実です。位置的には帝京長岡が西に位置するのでウエストという見方の一方、地理的交通的に言うと長岡から西方面に向かうには一度東京に出るか、もしくは北陸周りのどちらかになるでしょう。九州方面になると新潟空港から飛行機になるかもしれませんが、ちょうどいい便があるかどうか。羽田まで行って飛行機というのが現実的でしょう。移動の面からすれば帝京長岡がイースト、横浜FCユースには誠に申し訳ないのですが来年もウエスト、ということになるでしょう。
東西に分けたとしても、はたして関東関西以外のチームにとってメリットはあるのか?
さらに今年は北海道の旭川実業がいました。イーストのチームは必然的に1回は旭川(1試合だけ札幌開催)に行くことになると同時に、旭川実業は11回本州に移動して試合をこなさないといけないのです。北海道と沖縄のチームは飛行機での遠征が付き物とはいえ、金銭的にもコンディション的にも厳しいものがあるでしょう。横浜FCユースvs神村学園の翌週、千葉県総合スポーツセンター東総運動場で行われた市立船橋vs旭川実業の試合を見にいきましたが、駐車所に旭川実業の学校のバスが止まっていました。
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立派なスタンドのある陸上競技場でした。
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着いた時は旭川実業がリードしていました。
さすがに選手はバスで来ているということはないでしょう。用具などを運んできたと思われるこのバスは、少なくともここまで自走(おそらく苫小牧港→大洗港のフェリー経由)で来たのでしょう。もしかしたら青森山田戦と福島の尚志との試合では、選手もフェリー経由(苫小牧港→八戸港、もしくは函館港→青森港)でバスで来ていたのかもしれませんね。いやいや、実に過酷ですね。関東方面へは、選手は飛行機で移動、バスは先回りして苫小牧港まで行き、大洗港までのファリーを使って羽田空港に行き、そこで選手を乗せて試合会場へ向かいます。試合が終わったらまた選手を乗せて、バスで羽田空港へ向かい、行き同様飛行機で選手は帰ります。選手を下ろしたバスはそのまま再び大洗港に向かい、苫小牧港までのフェリーで旭川に帰る。おそらくそのルートを取っていたのでしょう。選手もそうですが、スタッフも大変なご苦労で…。
この試合も先制はしましたが、前半のうちに追いつかれ後半に勝ち越しを許します。旭川実業も追いつこうと必死に食らいつきましたが、市船橋の伝統的な硬い守りの前にゴールは奪えず1-2で敗戦。最終的には勝点10の12位で降格となりました。
しかし前回昇格した2012年シーズンは勝点わずか1だったことを思えば、試合数が4試合増えたといえ本土の強豪チームとの差はちょっとだけ縮まったのかな?と思います。しかも前回は一つも勝てなかったのが、今年は3勝もしたことは大きな進歩ではないでしょうか。これだけ過酷な移動を強いられながら、特に関東の強豪チームとの対戦はいい経験であったと共に、心身ともにそうとうな負担となったことでしょう。それでも、移動の負担に加えて気候のハンデも抱えてのこの成績はある程度評価されてもいいレベルだと思うのです。
というのも、開幕から4月中の4節までの成績は1勝2敗1分とそこそこ分がいいのですが、5月に入ると途端に大差での負け試合が続きます。そして、次に勝ち点を挙げたのは9月のホームでの横浜F・マリノスユース戦です。5月に入って急に気温が上がると、寒い地域から暑い地域への移動で体力の消耗が激しく、コンディションを上げることが難しくなったのかもしれません。その状態で残留していたかつての札幌U-18はやはり凄かったのかもしれません、まあ今から思えばメンバー的にも最強の時代だったとも言えますからね…
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チャンスは作るも、市船伝統の守備の堅さを崩せませんでした。
東のチームのことばかり取り上げてていますが、ウエストにしても大変なことは大変です。今年昇格した鹿児島の神村学園。幸い九州のチームが3つ(東福岡、鳥栖U-18、大津)いるので、3試合は比較的近場のアウェイですが、それ以外はやはり遠方の試合でそれなりに移動費と体力を削っての試合となります。まだ助かってるのは、ほとんどのアウェイが鹿児島から新幹線1本で移動できること。唯一、新幹線だけで移動できない米子にしても、岡山で乗り換えれば辿り着くのです(しかも神村学園のある串木野からすぐ近くに、新幹線停車駅の川内があるので利用しやすい)。
しかし名古屋U-18にとって今年は、東にも3回(磐田、静岡、横浜)、九州に4回、中国に2回(広島、米子)と、一見そうでもないように見えますが実はかなりハードな移動をこなしているのです。そして実は、この米子というのがかなりの曲者で(笑)遠征芸人としての見解でお話ししますが、関西から「近くて遠い」地域というのが実はこの山陰地方なんです。陸路で行くと軽く4時間以上はかかるので、米子や松江に行く時は可能な限り飛行機を使います。そうすると移動時間は半分以下、さらに中国山地をグネグネしながら北上するやくもの車内で、体調を崩すことなく快適に移動できるからです(笑)。
それに加えて来年、もし帝京長岡がウエストになったとしたら、もっと過酷な移動を強いられることになるでしょう。米子は山陽新幹線で岡山から乗り換えればまだそんなに時間は掛かりませんが、長岡となるといくら北陸新幹線が敦賀まで延伸しようとも、高崎まで行ってそこから上越新幹線に乗り換えて長岡まで行くか、もしくは東京まで行って上越新幹線で長岡まで行くか、あるいは便数の少ない飛行機で新潟空港まで行って、そこから長岡まで行くか。でも、新潟と長岡って実は意外と距離があって、車だと1時間くらいはかかるので、下手に飛行機で行くよりも東京から新幹線の方が安くて楽だったりするのです。こうなると、もはや関西のチームとて楽なリーグではなくなってしまうのです(今でも決して楽なリーグとは言えませんが…)
移動費の問題、コンディションの問題、それらを踏まえての最善の解決策は…
現状のレギュレーションで一番得をしているのは、なんといっても狭い地域にチームが集まっている関東と、比較的数の多い九州のチームでしょう。それでも九州のチームは全体の2/3は域外(九州以外)に行かないといけません。それに対して関東のチームは、域外への遠征は東北2回と北海道1回の3回だけで済むのです。場合によっては横浜→川崎、大宮→宮代町、一番近いのは柏市内で完結するケースもあるのです。それでも「勝負の世界なんだから、そこはなんとか乗り越えないといけない」という理屈も分かります。しかし、そもそもプレミアリーグは勝負も大切ですが、むしろ育成の意味合いの方がより強いわけです。なので、ある程度までは公平な条件でリーグを行う方が健全ではないでしょうか。
育成年代から甘やかしては、選手が育たない。世界で活躍するには、小さい頃から厳しい競争社会を生き抜いていかないといけない。その意見は否定しません。しかし、本当に世界で活躍する人材というのは、この年代にはすでに大人と同じカテゴリーでプレーして、大人と遜色ないくらいの活躍をするくらいでないと通用しません。プレミアリーグで本当に育成すべきは、まだ頭角を表していない本当の能力を引き出させるべき人材ではないでしょうか。そしてもっと大事なのは、そうした人材を正当に評価できるような環境を提供することです。さまざまな人たちの目に触れ、屈託のない評価が得られる場であるにもかかわらず、過酷な移動などからくるコンディションの良くない状態での試合が続くのは実に勿体ない話です。
経費を抑えようと思えば、リーグ戦よりトーナメントや集中開催の方がいいでしょう。しかし、トーナメントでは圧倒的に試合数が、集中開催だと開催地によって恩恵を受ける、受けないの差がはっきり出てきます。育成のカテゴリーではないものの、地域CLでもここ数年の決勝ラウンドは2016年から2019年のJヴィレッジ開催を除いてずっと関東開催となっています。特に2018年から決勝ラウンドが中1日挟む5日間開催となったため、関東以外のチームはほぼ1週間、関東に滞在することを余儀なくされ、逆に関東のチームにとっては移動時間も場合によれば宿泊費も抑えられる、というメリットがあります。Jヴィレッジ開催を除く7年で関東からはのべ8チームが決勝ラウンドに進み、そのうち3チームがJFL昇格、1チームは入替戦(今年のVONDS市原)に進みました。実力差もあるでしょうし、抽出する個体が少ないので評価は微妙ですが、少なくともかなりの高確率で関東のチームがJFLに昇格していると言えるのではないでしょうか。
トーナメントもダメ、集中開催でも地域差の不公平が発生する。そうなると何が最適なのか?個人的に考えるのは、地域で分けるのではなくランダムにグループ分けすることです。ただ単純にランダムに分けるのではなく、同じ地域のチームは均等に振り分ける、といった工夫をすれば、地域間格差を解消できるのではないかと考えるのです。
具体的に今年のチームで見てみると、東北は2チームいるので青森山田と尚志はそれぞれ別のグループに分けます。関東は10チームなので、やはり5チームずつに分けます。同様に関西と中国は2チームずつなので、それぞれを別のグループに、九州は4チームを2チームずつにそれぞれ分けます。東海は3チームなので、2と1に分けて1の方のグループに1チームしかいない北海道の旭川実業を振り分けます。これで12チームずつ2グループにそれぞれ分けられて、しかも地域ごとの偏りも最小限に抑えられたのではないでしょうか。こうすれば、地域によって生じる移動距離や時間、気候のハンデなどを極力抑えられて、より公平なリーグ運営が可能になるのではないでしょうか。
「お金が掛かる」が当たり前の金銭感覚を持つ。そして、それを意識することも強化の一環
おそらく今まで以上に経費のかかるチームが、関東を中心に出てくると思います。その点については協会から一部負担出来れば一番いいでしょう、可能かどうかは別にして…。尤も、各チームによって「捻出できる金額」と「実際に掛かる金額」を出来るだけ正確に算出して、それを元にどれだけなら協会で負担できるかを前もって明らかしておけば、後から不満などが出にくいでしょう。もちろん、私立高校と公立高校とでは出せる金額も違うでしょうし、OB会や保護者会などのあるなし、あるいはその規模によっても当然変わってきます。チームとしても、また学校としても、部活動にかかる費用についてそのような「金銭感覚」を意識することは大事でしょうし、チームの強化や選手のケアについてもっと真剣に考えるようになるでしょう。
プレミアリーグに参戦している高体連のチームは胸や背中、パンツの裾にスポンサーを入れていることが多いです。おそらく、今までの部活動だけの予算だけでは到底やっていけないということの表れでしょう。東西に分けての全国リーグでも資金的に厳しいなか、地域ではなくランダムにグループ分けするようになるとさらにお金が掛かるかもしれません。しかし東西に分けても、降昇格チームによって東西バランスが崩れるのであれば、むしろランダム分けした方がいいのかもしれないと、今年のプレミアリーグを見て改めて思ったのでした。
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