部活動と街クラブとは対立ではなく融合するべき時代なんだろうということを改めて感じた、というお話

突然ですが関西から山陰地方に行こうと思うと、実は意外と不便なんです。新幹線で岡山に行って、そこから伯備線に乗り換えて米子や松江、出雲市に行くのが一般的です。でも、この中国地方を南北に貫く伯備線の線形が極めて良くなく、さらに山越えをするために距離の割には時間が掛かるのがネックです。さらに今までの特急やくもの車両は「どんな強者でも乗り物酔いする」という都市伝説があるくらい、振り子車両なのに揺れが激しいのが難点でした。新型車両になって幾分かは改善されたようですが…。
もし仮に、そこを陸路ではなく空路にすると、JALのスペシャルセイバー(一番安いもの)だと(というか関西から山陰地方にはJALしか飛んでないのですが…笑)JRとほぼ変わらない値段で、しかも掛かる時間は約1/4となります(まあ、実際は空港までの行き来の時間を考えると、そこまでは違わないんですけどね…笑)。なので私は断然、飛行機派です!仮に、もし安く抑えたいとなれば、鉄道ではなく高速バスを使います。滞在時間の問題や、便の問題などは当然ありますが、一番賢い移動手段です。もっとも朝早い時間となれば、夜行バスという手もありますし…。ということで、今回の試合はそんな山陰地方での一戦です。

5/19 中国サッカーリーグ@どらドラパーク米子球技場 YONAGO GENKI SC 3-2 FCバレイン下関

今回の行程ですが、行きを伊丹→出雲の7:10発2341便、帰りは米子駅16:30発日本交通349号神戸三宮バスターミナル行きでの日帰りで予定を組みました。しかし、日程を組んだ時点でですでに行きの飛行機はもう14000円くらいにまで跳ね上がっていました。かといって、いくら新型車両になったと言っても陸路で行こうとは思えず「どうしようか?」と悩んだ結果、やはり飛行機をチョイスしました。
それでも、なんとかコストを抑えたい!と考え、今回はこういう急な予定やトラブル発生時のために確保しておいたJALの株優を使って2000円ほどコストカットしました(笑)まあ、11月末までにあと1枚、さらに来年5月末までにあと2枚使わないといけないので、今後も適材適所で使えるものはどんどん切っていこうと思います。なんなら、追加で購入してもいいくらいですし…(笑)
ということで、出雲空港から米子へ。まずは松江行きのバスで移動、JRに乗り換えて米子まで向かいます。が、よくよく考えたら陸路でも空路でも米子に到着する時間はほぼ同じという、絶望的な事実に気づき愕然としたことはナイショです…(笑)
松江から米子までは、せっかくなので新型やくもにも乗ってみました。でも、3月から全席指定に変わったことをすっかり忘れて、普通にみどりの券売機で自由席を買ってしまい、それに気が付いたときにはもはや時間ギリギリで変更が効かなかったこともあり、米子までデッキに立っていました(笑)券売機の画面に「やくも」の表記が無かった時点でおかしいなと気づけば良かったんですけどね…(汗)

273系の「新型やくも」は揺れがかなり軽減されたらしいですが
乗った区間はカーブが少なかったので、よく分かりません(笑)

前回米子に来たのは、まだ小針が鳥取にいた頃にYAJINスタジアムで見たの試合だったか?それともまだ境高校がプリンスにいた頃の米子北との試合だったか?ハッキリ覚えてないのですが、どちらにしてもかなりの昔です(笑)。その時は地上だった米子駅舎が今では橋上駅舎となり、さらに駅に隣接するショップも小洒落たラインナップになっていました。さらに南北を通る自由通路もできていて、便利になったんだねと思いつつ、時の流れは早いものだよな、と思ったりもするのです。

新しくなった米子駅。
線路を跨ぐ自由通路からは、こんな光景も見られます。
こういうのを見ると「山陰は雪国」って思いますよね…

駅舎は新しくなりましたが、駅前の雰囲気は相変わらずでした。駅前のバス停も西側にある日本交通のバスセンターも、駅前のモニュメントも変わらずでした。街の中もそう大きく変わった様子はありませんでした。この規模の地方都市だと、なかなか大規模な再開発も難しいのかもしれませんね…
駅近くのスーパーで食料を調達して、本日の現場である伯備線で一駅、東山公園駅の前にあるどらドラパークに向かいます。このどらドラパークという名前。米子市東山運動公園が平成20年から地元製菓会社である丸京製菓株式会社がネーミングライツスポンサーとなった際、米子市がどら焼き生産世界一ということを広くアピールするために「どらドラパーク」という名称になったのがその由来です。プロ野球も開催される球場に陸上競技場、今回の現場である球技場にテニスコートやプール、さらには一旦閉館、解体されて新たに米子アリーナとして収容人数4千人となる市民体育館などが集約された総合運動公園です。

東山陸上競技場ではプレミアリーグの試合があるようですね。
こちらが今日行く球技場。実にコンパクトな造りです。

この日のカードは地元米子のアマチュアクラブであるYONAGO GENKI SCとJリーグ参入を狙うバレイン下関。バレイン下関は開幕戦で廿日市FCに負けてしまい、独走の首位を走る福山シティFCを追撃するにはもう1試合も負けられないという、この時期に早くも崖っぷちへと追いやられている状況。一方のYONAGO GENKIは2009年、2017年と2度の昇格を果たすも共に最下位で降格。2020年に3度目の昇格となるもその年はリーグは中止。翌年からのリーグ戦では8位、7位、そして昨年は6位と徐々に実力をつけてリーグに定着しつつあるクラブです。開幕戦の三菱自動車水島FCには負けたものの、バレイン下関同様Jリーグ参入を目指すベルガロッソいわみに勝利するなど、上位陣とて侮れない存在になりつつあります。

試合は立ち上がりからホームYONAGO GENKIが相手陣内に押し込みます。13分に左サイドからのクロスを、ゴール前で合わせた中井のゴールでYONAGO GENKIが先制します。早い時間帯での失点に動揺したのか、バレイン下関は全体的にプレーに焦りやミスが増えていきます。その隙を突いて積極的に仕掛けるYONAGO GENKIは38分、ファールで貰ったFKを先制ゴールの中井が直接ゴールを決めて追加点。前半2ゴールの中井は昨年までバレイン下関にいた選手。この試合に賭ける思いは誰よりも強かったのかもしれません。さらに終了間際にPKを獲得。これが決まれば前半でほぼ勝負が決してしまうと思われましたが、ここはバレイン下関のキーパーがセーブしてバレイン下関はなんとか2点差で前半を切り抜けます。

38分、やや遠目からのFKを蹴る38番中井。
ボールはキーパーの頭上を超えてバーの下を潜るように抜け…
ゴールに吸い込まれました。実に綺麗なファインゴールです!
悦に浸る中井に駆け寄るYONAGO GENKIの選手。
YONAGO GENKIのエースの活躍で2-0とリードを広げます。
反撃したいバレイン下関はレノファにいた岸田が奮闘します。
この位置からシュートを放つも…
ボールは惜しくもサイドネット…
さらにサイドからクロスの雨。これはキーパーがクリア!
こちらのCKは戻って守備をする中井がクリア!
チーム全体でゴールを死守します。
終了間際に得たPK。これが決まれば断然有利となるが…
流石にバレイン下関のキーパー、岡崎がセーブ。
福山シティ追撃にはもう負けられないチームを鼓舞します。

ハーフタイムに気持ちを切り替えたのでしょう、後半は開始からバレイン下関がガンガン攻めていきます。が、52分にまたも中井がゴール前で粘ってDFを交わして角度のない位置から3点目のゴールを決めます。しかし、その直後にバレイン下関の岸田のゴールで1点返します。そこから守備の時間が長くなるYONAGO GENKIでしたが、焦りからか全体のプレー精度の悪いバレイン下関の稚拙な攻撃にも助けられ、ATにもう1点返されますがそのまま逃げ切りYONAGO GENKI SCが3-2で勝利。これで中国リーグからJリーグを目指す2チームを撃破。次節の福山シティFC戦に弾みを付けました。一方のバレイン下関は4節で早くも2敗と厳しい状況に追い込まれた試合となりました。

52分、ゴール前でDFを背負いながらボールキープする中井。
そのDFを振り切ってスペースを確保すると…
DFとキーパーの位置とコースを見極めながらシュート!
ボールはキーパーの腕の先を通って…
反対側のゴールネットを揺らします。
呆然とするキーパー、座り込んでやや足を気にする中井。
そして、倒れ込みながらもガッツポーズ。渾身の一撃でした。
追いつくためにはまずは2点目、と反撃するバレイン下関。
このボールに対して2人競りに行くも、ファールを取られます。
残りわずかとなった90+3分、DFの岩本が持ち込んで…
DFに体を預けられながらもシュート!
放ったシュートはキーパーの逆を突くコースで通り…
1点差となる2点目を決めます。
この光景が、この試合の激しさを物語っているようでした。

YONAGO GENKI SCとは何者?そしてアマチュアクラブが育成チームを持つ、その意外な理由とは…

今回の米子遠征の目的はYONAGO GENKI SCでした。ネット上でもなかなか情報が拾えないチームの一つでしたので、今回は鳥取在住の知人からいろいろな情報をいただきました。まずはこの場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

YONAGO GENKI SCは1992年、米子北高校のOBが中心となって創設された、アマチュアのサッカークラブです。創設当初の名前は「元気SC」だったようで、この名前だとどこのチームか全くわかりませんよね(笑)そして、その名前のまま2009年シーズンには中国リーグに昇格。ここからは先ほど軽くお話ししましたが、改めてお話しするとこの年はまだ圧倒的な実力差があったようで、1年で鳥取県リーグに降格してしまいました。その後は毎年のように昇格にチャレンジしますが、次に中国リーグに昇格を果たすのは2017年まで掛かります。しかしその年もやはり最下位となり降格。ふたたび昇格にチャレンジすることとなります。そして3度目の昇格は2020年シーズンですが、その年はコロナ禍の影響を受けて中国リーグ自体の開催が中止となったため、3回目の中国リーグ参戦は翌2021年からとなりました。その2021年は10チーム中7位で初のリーグ残留を果たすと、2022年は8位、そして昨年2023年は過去最高位の6位と中国リーグに定着するようにまでチームは成長しました。
そしてチームが中国リーグに定着するにつれて、かつては地元米子出身の選手が大半を占めていましたが、県外出身者や解散した神楽しまねFCの選手を受け入れたりと、徐々にチームの様相も変化しつつあるように思えます。
チームの目標としてはJFL昇格。YONAGO GENKI SCは完全アマチュアのクラブなので、選手はみんな働きながら週に何回かの「夜練」を行っています。元はサッカー中心だった選手も、このチームに来ると仕事がメインになるわけで、それはこの日3ゴールを決めた元バレイン下関の中井もおそらく、昼間働きながら夜練をやる生活を送っていることと思います。そう、YONAGO GENKI SCは生粋のアマチュアクラブです。

そんなYONAGO GENKI SC。実は社会人のチームだけではなく、U-15以下の育成チームも持っています。米子に限らず、都市部以外の大多数の地域ではサッカーを続けようと思うと、街クラブではなく学校の部活動に入るケースがほとんどです。米子は昔から県内で最もサッカーが盛んな地域ですが、それでも小学生対象のクラブはまだいくつかあっても、中学生になるとほとんどなくなってしまいます。それでもFCアミーゴのようにいい人材を輩出しているU-15クラブはあります。さすがは県内トップクラスのサッカーどころです。そんなサッカーどころ米子の老舗、1989年に創立されたFCアミーゴのように歴史のあるクラブではないものの、YONAGO GENKI SCも育成年代のチームの活動も活発に行なっています。まだそこまで強いというレベルにまでは達していませんが、それでもこのクラブにはチームを継続していく必要があるのです。それはなぜかというと、文部科学省指導のもと部活動の民間委託が始まるのを受けて、YONAGO GENKI SCはその受け皿として地域の部活動を支えていこうとする目論見があるからです。

部活動の民間委託とは?そのメリットとデメリットは?

部活動の民間委託とは、今までは学校の中でしか行われていなかった部活動を学外である民間の団体に委託しよう、というものです。昨今、時間外労働の超過が社会的問題とされている、教育現場の最前線にいる先生たちの労働環境を改善するため、本来は「課外の活動」である部活動を学校から切り離し、特に運動部の活動を民間の団体に委託することで、学校の先生の部活動の指導や引率などでの過度な負担を軽減しようというのが主な目的です。

部活動の民間委託のメリットとしてはまず、先生の特に引率や練習などによる土日の時間外労働時間の短縮が挙げられます。今、学校の現場では先生に掛かる負担が昔とは比べ物にならないくらい増えています。通常の授業で使用するプリントなどの教材作りから生徒指導、いろいろな事務処理に加えて保護者への対応というものも近年激増しています。休憩時間が「休憩ではなくなって」いるケースも多く、先生への身体的精神的な負担はどんどん増しています。それに加えて、中学校の先生の9割は何らかの部活動の顧問を受け持っており、その部活動に休日のはずの土日も引率などで駆り出されています。休む暇もないというのが現実です。部活動を民間委託することで先生たちの土日の時間外労働を削減し、少しでもその負担を軽減できるのではないかと考えられています。
次に挙げられるのは、スポーツをやる場を提供できるということ。陸上競技のような個人競技や、野球やサッカーのようなメジャーな競技は学校の部活でも行うことは出来るでしょうが、競技人口の少ない団体競技となると通っている学校に必ずしもその部活がないことも多いです。特に一番成長しやすい中学生の時期に、やりたい競技の部活がないためにその競技を続けるのを諦める、といったケースもよく耳にします。しかし部活動を民間委託すれば、今通っている学校に部活があるなしに関わらず、今やっている競技を続けていける可能性が高くなります。少子化の影響で学校の統廃合も増えていますし、部員数が足りないために公式戦に出られないというケースもかなり増えています。合同チームでの参加を認めている競技団体もありますが、それならば普段から学外のクラブで複数の学校の生徒を集めてチームを組んだ方が、子供たちにとってもいいのかもしれません。それに今後は、あらゆる競技においても学校の部活動自体が成り立たなくなる可能性だってあります。そうなる前に早めに部活動を地域のスポーツクラブなどに移管しておく方が得策かもしれませんね。
さらに、民間に委託することで今よりもよりハイレベルな指導を受けられるという点もメリットの一つと言えるでしょう。小中学校の部活動、特に中学校の部活動の顧問の場合、受け持つ部活動の競技経験のない先生が務めるとこも多く、そうなると競技レベルの向上が見込まれなかったり、あるいは間違った指導法によってその能力を活かすことが出来なかったり、場合によれば怪我や故障の元にもなったりします。しかし、民間委託されたスポーツクラブやチームの指導者は少なくとも競技経験者がほとんどで、突拍子もない間違った指導を受けることも少ないと思われます。小さい頃から高いレベルの指導を受けたい、受けさせたいと思う子供や保護者も安心して預けられるのではないでしょうか。

しかし、メリットばかりではありません。当然ながらデメリットと思われることもあります。
一つは、学外に民間の受け皿がない場合はいったいどうするのか?という点です。都市部の学校ならばスポーツクラブの一つや二つはあるかもしれませんが、山間部などの過疎地の場合、学外に部活動を委託しようにも委託できるクラブがない、またはそれを指導できる人材がいないということも考えられます。また、練習場所の確保の問題もあります。どんな小さな町でもちょっとしたグラウンドと体育館はあるでしょうが、もし部活動を学外に委託した場合、あらゆるクラブがそれらの施設を取り合うことになります。上手く棲み分けが出来ればいいですが、そう上手くはいかないでしょう。そうなると、空いている場所として考えられるのは学校の施設です。学校の施設を使う場合、先生の誰かが鍵を開けたりしないといけないので、結局は「時間外労働」が発生する可能性もあります。これではせっかく時間外労働をなくすと言っているのに、本末転倒ですね。
次に指摘されるのは、学校での子どもの居場所がなくなる可能性があることです。学校の友達と放課後一緒に部活動をすることで、学校での居場所を確保している子たちもいるでしょう。その子たちがもし学外のクラブでの活動をすることになったら、必ずしも友達が同じクラブにいるとは限らず、友達と離れ離れになることでその子たちが精神的に孤立してしまう可能性があると指摘する声もあります。
また、保護者の負担も増えるのではないかということも考えられます。今までなら学校の課外活動ということで施設を借りる費用なども掛かりませんでしたが、民間委託となるとそれなりの経費が掛かるようになります。それが保護者への負担となるでしょう。練習場所までの送迎の問題も発生するでしょう。しかもその送迎の費用も当然保護者負担となりますし、月毎のクラブへの会費如何によっては部活動の有料化ということにもなりかねません。そうなるとシングルマザーなどの経済的に苦しい家庭や、父子家庭のような日頃の送迎が困難な家庭の子供は部活動をすることすら出来なくなる可能性もあります。
始動の過熱化や部活動中の怪我の補償問題もデメリットの一つと考えられます。民間のクラブである以上、生徒を集めるために公式戦での成績を重視するあまり、能力の高い子やスキルの高い子ばかりを起用するといった不公平な指導がなされるケースも考えられます。部活動なら学校の利用時間が決まっているのでそんなに遅くまでは練習しませんが、学外のクラブだと長時間の練習が常態化する危険性も指摘されています。また、絶対にあってはなりませんが指導の際に暴力を振るったり、著しく人格を損なうようなことをしてしまう指導者が出ないとは限りません。練習や試合の際に怪我した時に誰がその補償するのか?といった責任問題も発生します。今までならば学校の先生がいたので連絡もすぐに取れたでしょうが、緊急事態の際の対応と補償についても事前にしっかりと決めておかないといけません。学外に委託することでそのようなさまざまなリスクも発生しやすくなります。決していいことばかりではありません。

部活動の民間委託は本当にスムーズにいくのか?

文部科学省では2023年4月より部活動の休日の民間委託を本格的にスタートさせました。しかし、現実的にはほとんど進んでいません。しかし、実際に委託されたケースを見ていくと概ね好評のようです。また、ケースによっては自治体からの補助もあって今までと経済的な負担はほぼ変わらないケースもあります。
ただその一方で、熊本市のように部活動を残すという方針を検討し始めた自治体もあります。まだ自治体ごと、地域ごとでどうするかの判断に苦慮しているようにも思えますし、もっと言えばほとんどの自治体がそれを検討する段階にまでまだ達していないというのが現実かもしれません。
そんな中、びわこ成蹊スポーツ大学を運営している大阪成蹊大学では今後の部活動の民間委託を見据えて、京都市立の9つの中学校にコーチとして現役の学生を派遣しました。学校側からは好評だったようですが、派遣した学生の勤怠管理などの事務処理がかなり多く、さらに怪我や事故の際の責任の所在や補償問題もはっきりさせないといけないなどの課題も見えてきたようです。それでも今までの部活動のあり方を見直す必要性があると、元シンクロ日本代表の奥野史子さんも提言されています。

記事の内容を要約すると、一つの競技だけに囚われず小さい頃からいろんなスポーツをすることで、いろんな身体の使い方を身につけることが出来たり、あるいは競技に対する見方も変わったりもします。いろんなスポーツに触れることでプレーの幅が広がったり、あるいは「この競技は向いてないけど、こっちなら合ってるかも?」と、早い段階で別の競技へ転向することも可能です。今まで諦めていた子たちが違う競技で花開くというケースも増えて来ることでしょう。
また、指導の質の向上も必要と訴えています。質の向上には指導者への資格制度が必要ですが、制度をどうすべきか。自治体ごとに資格を発給するのか?それともサッカーのように協会で共通の資格を発給するのか?それらを各競技団体だけに任せるのではなく、国が制度の整備に乗り出すべきでしょう。
そして、もし上手く移行できるようであれば、今後は学校の勉強を補う学習塾のような感覚で「民間の部活動」を選ぶ時代が来るのではないでしょうか、と記事を締めています。

部活動の民間委託は街クラブと地域のサッカーに何をもたらすのか?

部活動の民間委託が進んでくれば、学習塾のように街クラブでサッカーやその他のスポーツを行う子供たちが増えることが予想されます。それを見据えて、YONAGO GENKI SCでは2023年より中学生対象のジュニアユースチームを立ち上げました。それまでのU-12までのチームから継続して子供たちを受け入れる体制づくりを始めたものと思われます。
しかし、そう簡単にいくのでしょうか?今、学校の部活動に掛ける費用はおおよそ毎月2、3000円くらいかと思います(用具とかに掛かる費用は別にして)。それが街クラブに通うとなるとその倍から3、4倍は掛かるのではないかと予想されます。今、クラブユースに子供を通わせている保護者は現にそれくらいの月謝をクラブに払っています。それと同じくらいの費用を、今まで安価な部活動で済ませていた家庭が費用負担できるのか?というところが一番のネックとなるでしょう。ただ、それについては各自治体から一定の補助金の支給で賄うことで、従来の部活動と同じ水準にする必要はあるでしょう。とはいえ、従来の部活動でも月謝以外にユニフォームや用具、試合や合宿、さらには送迎の費用負担は保護者が行っていたことを考えると、月謝の補助で費用面はなんとかなるかもしれません、自治体からの補助金の額にもよるでしょうが…

もう一つの問題は今の制度では「土日の民間委託」のため、平日と土日で同じ指導者が指導出来るのか?という点です。既存のスポーツクラブであれば専任の指導者がいるので平日の夕方以降の指導も可能ですが、平日は仕事、休日だけボランティアで指導員を務めるというケースでは、そのボランティア指導者が不在の平日の指導は誰が行うのか?という問題が生じてしまいます。それが故に民間委託に踏み出せないケースも多いのではないでしょうか。土日だけでなく平日の部活動も民間委託出来なければ指導にばらつきが生じますし、そもそもの問題であった先生の時間外労働の削減もそれほど効果的ではないかもしれません。本格的に民間委託を図るのであれば、平日の放課後含めて委託する必要がありますし、それに向けての受け皿整備が必要となるでしょう。

その点、YONAGO GENKI SCはトップチームの監督が米子北出身ということもあり、クラブとしても米子北との連携が取りやすいのではないかと思われます。指導者の質の問題はクリア出来そうです。詳しい月謝などの情報は分かりませんが、実際に委託するとなれば自治体からの助成は入るでしょう。ひとつ問題になるとすれば、クラブに元々入っていた子と部活動の委託によって入った子との間で、月々払う月謝が違うとなると不公平が生じるのではないかということです。本格的に部活動の民間委託が始まり、その数が増えると月謝の調整が必要になるかもしれません。その助成金の額がどうなるのか。受け入れた人数に応じて額が変わるのか否かといった細かいところが明確にならないと、学校もクラブもなかなか動きづらいでしょう。街クラブの財源の多くはスクール生の月謝によるのが現状です。最近ではクラブでスポンサーを募るケースもありますが、やはり収入に占める月謝の割合は高いと思われます。部活動の民間委託で通う人数が増えたとしても、そう簡単に月謝を安くするわけにもいかないと思われます。実に悩ましいところではないでしょうか。
とはいえ、今のYONAGO GENKI SCの活動を見ていると、トップチームのスポンサーの件数もそこそこありますし、その社会人のトップチームが地域の最高レベルのリーグである中国リーグにいるのいうことは、かなりプラスになっていると思います。現実的にJFLはまだ厳しいでしょうが、クラブの目標として掲げるのであればそれだけでも大きなアピールポイントとなります。この日の試合にも大勢のジュニアユースやジュニアの子たちが見にきていました。さらに数は少ないですがサポーターもいました。このクラブだけで、高いレベルを実感できるだけの環境が十分整っています。そういう点では、一地方の街クラブとしてはかなり魅力的なチームと思います。
YONAGO GENKI SCの新たな試みは始まったばかりです。U-15の卒業生が大きくなってどのように育っていくか、それが分かるのは5年先、10年先かと思います。彼らのその後の成長が、このクラブの将来が掛かっていると言ってもいいのかもしれません。U-15やそれより下のチームで活動している彼らにとってはやや荷が重いかもしれません。でも彼らがすくすくと成長し、やがては地元にまた戻ってこのクラブでプレーする日が来ることを楽しみにしておきたいです。

部活動と街クラブ。特にサッカーにおいてはこれまでは何かと比較されますが、これからますます少子化していく中で「どちらが優れている」などと言っている時代ではもはやありません。部活動の民間委託は、そんな部活と街クラブを融合する一つのきっかけになるのかもしれませんね。

さて、バレイン下関との試合も終わり、応援に来ていたスクールの子たちも一緒に選手と勝利のラインダンスを踊り終わって、さあ自転車でみんな家に帰るのかな?と思ったら、多くの子たちがすぐ隣の陸上競技場に向かってました。そうでした、隣の陸上競技場では1時間遅れでプレミアリーグの米子北vs東福岡の試合が行われていたのでした。まだ帰るのにはちょっと早いので、私もちょっとだけ見ることにしました。

プレミアリーグウエスト@どらドラパーク米子陸上競技場 米子北 3-2 東福岡

会場に着く頃にはすでに後半が始まっており、東福岡が1-0でリードしていました。さらに到着して程なく東福岡が2点目のゴールを決めます。「今年の東福岡はプレミアでも上位にいるので、やはり実力の差はややあるのかな?」と思いながらなんとなく見ていました。
しかし70分を過ぎると、疲れからか東福岡のプレー強度にやや陰りが見えてきました。米子北はそれを見逃さずに、77分にCKからのこぼれ球を押し込んで1点差に詰め寄ると、その2分後には中盤から得意の縦への速い展開から、遠目の位置からのシュート。そのこぼれ球を決めて米子北が一気に同点に追いつきます。そしてこのままドローで終わるかと思われた89分、相手から奪ったボールをそのまま持ち込んで逆転ゴールを奪います。わずか10数分での大逆転劇で、米子北が勝った試合でした。

2点を負う米子北は77分のCKのチャンス。
こぼれたボールを拾った20番の佐野がシュート!
DFとキーパーが必死に止めようとしますが…
間に合わずゴールイン。ここから米子北の逆襲が始まります。
その2分後、9番鈴木の放ったシュートはDFの足に掛かるも…
流れたところに詰めていた16番山下がシュート!
これが決まって米子北がたった2分で同点に追いつきます。
喜ぶ米子北の鈴木と頭を抱える東福岡26番塩崎。
さらに続く猛攻は89分、同点ゴールの山下がまたも決めます!
思い切りのいいシュートがネットに突き刺さり、逆転!
喜びに湧き返る米子北。
呆然と立ち尽くす東福岡。
たかがリーグ戦の1つ。でもあまりに残酷な1戦でした。

まあ、米子北の執念というか、粘り腰というか…。なかなか恐ろしいものでした。東福岡も昨年から監督が変わり、さらに長年チームに携わっていた志和監督も完全にチームから離れてしまいました。そういう意味でも今年の東福岡は今後、5年先10年先にどのようなチームになっているのかを決めるかもしれない、そんな大きなターニングポイントになりうる年ではないかと思います。たかがリーグの1試合ですが、もしかするとこの試合が今後の東福岡のサッカーを大きく変化させるかもしれない、そんなことがちょっとだけ頭を過ったのでした。
米子北もよく諦めずに戦った結果の大逆転勝利。会場にいた地元の小中学生や、さっきまで隣の球技場で見ていたYONAGO GENKI SCの子たちも、最後まで諦めなかったら何かが起こる、ということをしっかり伝えられたのではないでしょうか。
今、米子北には県外から多くの中学生が進学していています。そして、まだ数は少ないものの地元米子や鳥取県内から進学している子もいます。地元の子たちがトップでも出られるようになればいいのですが、それを実現するにはやはり学校の部活動だけではなく、FCアミーゴやYONAGO GENKI SCのような街クラブも同時に強くならないといけません。部活動だほ街クラブだのといって互いに牽制し合っていてはいけませんし、むしろ手を取り合って融合していく必要があるでしょう。その一つの手段として、部活動の民間委託は十分にありではないでしょうか。そして近い将来、いや早ければ2年後、3年後に米子北のトップチームにYONAGO GENKI SC出身の選手が名を連ねることを楽しみにしています。

最後に、米子や山陰地方に来るたびに気になっていた建物があるので、実際に近くに行って確認してみた、というネタです。
鳥取方面から米子駅に向かう車内の右側の窓から米子駅到着直前に見えて来る、大きなガラス張りの建物。何かの工場なのか、はたまたショールームなのかよく分からない、でもよく見ると壁面には「国土交通省方式認定・特殊小型自動車製造工場」という、謎な文言がが書かれている(笑)。そんな建物に、線路を挟んだ反対側から踏切を渡りつつ、じっくりと観察してみました。

米子駅のすぐ東の線路沿いにあるガラス張りのデカい建物。
何かの製造工場なのは分かるのだが、謎な文言が…(笑)

建物の正面に回ってみると「河島農具製作所」という会社名が書かれていました。

河島農具製作所と河島重工業という社名が書かれてます。
よく見たら、答えが書いてましたね…(笑)

調べてみると農機具、それも収穫した作物を運搬したり、あるいはキャベツなどの野菜を収穫するのに使ったりするクローラーという、いわゆるキャタピラーで走るタイプの車両を主に製造しているメーカーのようです。

大正7年創業という老舗ながら、全く聞いたことのない会社。でも実は、そういう会社こそ日本の産業を陰で支えていると言えるでしょう。そういう名もしれない「その他大勢」な会社が日本経済をしっかりと支えているわけです。それはサッカー界も同じこと。世間的には名もしれないクラブこそ、日本サッカー界を陰で支えて続けているのだ、ということを思いながら帰路についたのでした…。

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