年末年始のサッカーについてちょっとだけ語ってみた、というお話

2024年がスタートしたのですが、年明けに行われた府県決勝の決勝戦、ACミドルレンジvsOKFCの大阪対決、そして阪南大Revolutionと大阪1位のOKFCとの試合のいずれも見に行っていないので、この時期としては珍しく未観戦です。まあ、そういう年もあっていいのかな?と思います。

年始1本目ですが、年末年始のサッカーイベントについてかいつまんでお話ししながら、まずは2024年のウォーミングアップをしたいと思います(笑)

いろいろあった明治の優勝で終わったインカレ

日程の順序は前後しますが、まずはインカレから。現行の方式で行われる最後のインカレとなった第72回全日本大学サッカー選手権大会。優勝したのは3大会ぶり4回目の優勝となった明治大学でした。明治が強くなったのってここ10年か15年くらいだよねと思いつつ歴史を遡ってみたら、初優勝はなんと1958年の第7回大会だったのですね。次の優勝が2009年の第58回なので、50年も間が開くのですね…。

今年、いや去年の明治大学はシーズン当初からいろいろありました。学生審判員の登録違反(規定された人数の有審判資格者を2年連続で満たしていない)で、開幕4節までの勝ち点6を剥奪されるというペナルティを課されてしまいます。その影響なのか、アミノバイタルカップでは初戦で城西大学に敗れ、総理大臣杯出場を逃してしまいました。さらに、シーズンも最終順位は東京国際大学に次ぐ3位(しかし勝点剥奪前の成績なら2位でした)に終わります。そして迎えたインカレでは、初戦を関西学院大学との打ち合いを制すると、関東3位となったために準決勝で対戦することとなった絶対王者の筑波大学を接戦の末、わずかシュート1本ながらも1-0で勝利します。迎えた決勝戦は関西王者の京都産業大学。関西王者の京産大にも地力の差を見せつけて、文句なしの優勝。まあなんだかんだ言っても、やっぱり明治は強かったという印象のインカレでした。
準優勝の京都産業大学。ここ7、8年くらいだと記憶していますが、Jユース出身者を積極的に入れて強化を図っていました。当初はなかなか成績が安定せずに苦しんでいましたが、ここ3年くらいはようやく上位に安定し、一昨年には関西2位となり30大会ぶりのインカレでも出場を果たします。しかしその年は関東6位の筑波大学に完敗、悔しい結果となりました。今年は関西優勝を提げてのインカレでしたが、その看板に偽りのない結果を残せたのではないでしょうか。東京ヴェルディ内定の食野、相模原内定の福井など主力メンバーには4年生が多く、来年はやや小粒なメンバーになりそうですが、それでも来年の関西をリードする存在になることでしょう。

それ以下については、やはりメインの東海や九州についてちょっと触れておきたいと思います。

まずは東海勢。後期の上位リーグで一気の巻き返しを図り優勝した中京大学、後半息切れして優勝を逃した常葉大学、最終戦の直接対決で勝利し大逆転で3位となった東海学園大学の3チームが出場しました。
まずは優勝の中京大学。シードとはいえ入ったブロックが悪すぎました。今年はJ内定者6人という、史上最強メンバーで臨んだインカレでしたが、今年最強の声も高かった筑波大学とベスト8で当たったのは不運でした。それでもかなりやれた方だとは思いましたが、もし別のブロックだったらベスト4もあったかと思うと、ちょっと残念でした。4年生抜けますが、来年も柏内定の桒田、大分内定の有働に加えて、押富、荒井の神戸U-18コンビ、DFの深澤、折出、キーパーも福本と山口の2枚看板と来年も人材は豊富なので、来年も期待大です。
2位の常葉大学ですが、やはりトーナメントの弱さを露呈した感じでした。特に先制されると、自分たちの本来の力が発揮できないという勝負弱さが、このインカレにも見られました。実際に見た鹿屋体育大学との試合。前半に先制を許したあとの後半、常葉が攻勢をかけていたのですが、しっかり守りを固める鹿屋にでも足も出ずにあえなく初戦敗退。そろそろトーナメントを勝ち切るだけの戦い方も身につける必要があるように思いました。総理大臣杯では得点源の金賢祐を欠いて苦戦しました。このインカレでは彼が不発に終わってしまいました。現状では来年のゴールハンターがまだ定まっていないような印象です。さらに中盤も全体的にやや落ちるかもしれません。しかし、近年はレベルの高い下級生がどんどん入っていますので、新入生や新2年生などの彼らの成長に期待したいです。
滑り込みでインカレ出場を決めた東海学園大学。いい時の東海学園が戻ってきつつあるように思えましたが、初戦の東洋大学との試合では実力の差が出たのか、あっけなく敗れて初戦敗退となりました。ここ数年、いろいろと試行錯誤していたように感じた東海学園でしたが、やはり元々の強みを活かしたサッカーに落ち着いたようです。ただ、そのサッカーで全国で通用しようと思うと、今の倍くらいは質を高める必要があるというのが個人的な見解です。2年ながら早々と横浜FCの内定をもらっている佐藤のいるうちに少しでもそのレベルに近づけることが出来れば、近い将来全国でも戦えるチームになれるのではないかと思います。
東海学生の上位は長年、この3つに静岡産業大学を加えた4強時代が続いています。そのマンネリ感が東海学生時代がなかなか全国、いや関東の壁を破れない要因でもあります。しかし昨年のデンチャレではそんな関東の壁を破って東海選抜として準優勝を果たしました。今年はその上、つまり優勝を狙う意気込みで3月のデンチャレに臨んで勢いをつけて、総理大臣杯やインカレでベスト4以上の成績を残してもらいたいですね。

続いては九州勢。コロナ後、九州の大学はほぼ見に行くことが出来ていないのですがチェックはちゃんとしています。一昨年、昨年と九州勢があまり振るわなかったのが気掛かりでしたが、インカレでは多少盛り返したかな?といった印象でした。
まずはリーグをぶっちぎりで優勝して福岡大学。特に2回戦の関西大学戦は圧巻でした。フィジカルの強さを活かして、セットプレーなどで効果的に加点しての勝利。強い時の福大が戻ってきたかな?という試合だったでしょう。その福岡大学に勝った京産大は関西1位の貫禄とでも言いましょうか。関大もかなりやれると思ってましたが、それ以上に京産大が上回ったのは至極当然でしょうか。
札幌内定の岡田、福岡内定で絶対的ボランチの重見と同じく福岡内定でインカレは出場機会のなかったキーパー菅沼が抜ける来年。DFでは磯谷や橋本、攻撃ではサイドの松尾やFW中山などがチームを牽引することになると思います。昨年以上の成績を残せるかどうかは、それ以外の下級生の成長が必要となるでしょう。
2位の鹿屋体育大学。常葉大との1回戦は少ないチャンスをしっかりとモノにしての勝利。いかにも鹿屋らしいサッカーでした。湘南にいる根本のような絶対的ストライカーがいない中、それでも中盤登録の片山がクロスにピンポイントで合わせるという離れ技を決めたあたりは、やはり鹿屋だなと思わされました。
とはいえ、選手の質は年々落ちつつあるのではないかと思われます。元々、絶対的に部員数の少ない鹿屋体育大学。それに加えて、やはり国立大学ということで進路としてのハードルは必然的に高くなります。推薦枠も多少はあるでしょうが、10年以上前にサッカー推薦枠のなくなった高知大学のように、いつ推薦枠が無くなるかも分かりません。まあ高知大学と違い、体育学部のみの単科大学なのでそう簡単に推薦枠の撤廃は行われないでしょうが、それでも今後どうなるかは不透明です。チームとしては、毎年安定した高い成績を残すことが必須となります。来年も総理大臣杯、インカレである程度の成績を残せるように一層の精進を期待したいです。
3位の九州産業大学ですが正直なところ、全国との力の差があり過ぎたという印象でした。関西4位の大阪学院大学に対し、熊本内定のぺ・ジョンミンが放ったシュート1本のみでの敗戦がそれを物語っています。ボランチの飯星、サイドアタッカーの横畑などいい選手はいるものの、全国ではまだ通用しないのかな?ということでしょうか?
九州3位と東海3位。いずれも初戦で関東、関西の中位チームに完敗しました。トップレベルのチームは全国で通用しつつありますが、それ以下のチームとなるとまだまだレベル差があるようです。年が明けて大学サッカー界では、デンソーチャレンジカップに向けて各大学リーグで選抜チームが結成されます。今年は関西、東海、東北の選抜チームがシードで決勝ラウンドから、九州はプレーオフからの出場となります。しかも今年は関東B選抜が本戦ではなく、プレーオフの1枠を九州選抜などの予選組と争うこととなります。九州選抜はその関東Bに勝たないと決勝ラウンドに進めなくなります。福大鹿屋連合を組んだとしても、戦力的にどこまで太刀打ちできるか…。裏を返せば、デンチャレプレーオフで結果が残せれば、「今年の九州勢は侮れない」と言えるかもしれません。シード権を持つどの地区もプレーオフには回りたくないはずですし、今回のようにシードされていないといけない地区が予選ラウンドに回ることもあります。デンチャレは是非ともプレーオフから注目していただきたいです。

いろいろと思うことのあったプレミアプレーオフ

毎年、様々なドラマを生むプレミアプレーオフ。私個人としては札幌U-18の初戦敗退は残念ではありますが、あまりにも組み分けが悪過ぎたと思ってます。初戦の岡山U-18は今年のクラ選準優勝の強豪で、チーム創設以来最強との呼び声もあったチーム。前半に先制した時は「もしかしてアップセット?」と期待したのですが、そう簡単なものではなかったですね…。勝ったとしても京都U-18が相手と考えると、やはり厳しかったでしょうね。今年は北海道の2位なのでまあ、そういうことなんでしょう…。
同じ北海道から出場した北海ですが、選手権準優勝の近江に対して延長まで持ち込むも敗戦。でも、シュート2本、先制ゴールも6分と立ち上がりの得点ということを踏まえると、こちらもプレミアリーグの敷居は高かったと言えるでしょう。来年の北海道はおそらく1チームに減るはずなので、札幌U-18についてはプリンスリーグをぶっちぎって優勝くらいの実力をつけて、今年のプレーオフに臨んでもらうことにしましょう(笑)
そんな北海に勝った近江ですが、2日後に行われた2回戦では鹿児島城西の前に0-1で負け。同じく関西から出場した京都U-18も岡山U-18の前に0-1。どちらも相手の倍、もしくはそれ以上のシュートを放ちながら(鹿児島城西7、近江12。岡山6、京都22)いずれも無得点での敗戦。いくらチャンスを作っても、シュートを打っても得点を取れなければ勝てないという現実を思い知らされたことでしょう。今年はこの2チームに加えて降格する履正社も同じリーグとなります。また、降格1昇格0を受けて8位のC大阪U-18が来年は2部に降格します。C大阪U-18はこの2年で2段階降格となってしまいました、恐るべし関西…。近江の選手権準優勝で、もしかすると今年のプレーオフ枠が2から3になるかもしれません。それでも昇格はそう簡単なものではありません。
これで、プレミア在籍の関西勢はとうとう神戸U-18だけになってしまいました。10年前には想像もできなかった事態です。さらに今年は2部にBチームも上がってきますし、トップはJ1優勝で獲得したACL出場とリーグ戦との2編成体制となるでしょう。神戸のユースっ子たちが各カテゴリーに引く手数多となるでしょう。神戸のユースヤクザ、いやユースガチサポの知人も忙しくなるでしょう(笑)また、フラッと会場に現れますのでその際はよろしくお願いします。

今年一番壮絶だった試合といえば、なんといっても1回戦の関東2位の浦和ユースvs四国の徳島ユースとの試合でしょう。前半1-1、後半2-2、延長前半1-1、延長後半1-1、PK4-2で浦和ユースが勝った試合。徳島が先制、その後2度勝ち越したものの浦和が度々追いつき、延長は逆に浦和が勝ち越し、徳島が追いつくという展開。しかも壮絶なのは後半ATから。追いついた浦和に対し、直後に徳島が勝ち越し。それで決まったと思われたが、またすぐに浦和が追いつきます。延長も後半7分(10分ハーフ)に浦和が勝ち越すもATの110+5分に徳島が追い付いてのPK戦。徳島が2人目まで連続で外し、浦和は4人全員決めて勝利。浦和が2回戦進出を決めた試合でした。そんな浦和ユースは2日後の2回戦で帝京長岡の前に1-2で敗れ、プレミア復帰はなりませんでした。
昨年のプレーオフの1回戦で延長までもつれたのは、先ほどの近江vs北海とこの試合の2つです。そしてどちらも13:30からの2試合目でした。しかも、2回戦の相手はというと、どちらも金曜日の11:00からの1試合目で勝利した鹿児島城西と帝京長岡でした。2回戦で勝った4チームのうち、鹿島ユース以外は11:00開始の試合の勝者という結果で終わりました。
この結果についてですが、個人的にはこの「試合時間の差」が勝敗を分けた可能性があるのかなと感じました。というのも、延長に入った2試合が共に2試合目で、しかもその勝者はどちらも先に試合の終わったチームに負けているというのが、単なる偶然のようには思えないのです。1試合目と2試合目、その差は2時間半。「たかが2時間半」とはいっても、90分で終わるのと120分、さらにPK戦までとなると3時間はタイムラグが生じます。日程は中1日という過密日程ですから、一刻も早く体のケアをしないといけないのに、13時過ぎにはリフレッシュできるチームと、16時過ぎてもできないチームとが発生するのです。しかも真冬の夕方となると気温も一気に下がるので、体はどんどん体温を失っていき、いくら若い選手たちとはいえ疲労も取れにくくなります。この数時間の差はその後のコンディションへの影響も大きいと考えられます。特に似たようなレベルのチーム同士だと、その差が如実に現れるのではないでしょうか。

これはこの大会だけに限ったことではなく、選手権や総体でも同じようなことを常々思うのです。短期決戦のトーナメントでは同じ条件で試合が出来るというのが理想ではありますが、限られた日程と会場が故に現実はなかなかそうもいかないものです。チーム数の多い選手権や総体では、勝ち上がれば上がるほど日程調整は難しくなります。しかし、プレミアプレーオフのようにチーム数と試合数が少ないならば、せめて同じグループは同時刻キックオフにしてあげてもいいのではないかな?とふと思ったのです。
でも、そんなことお構いなしに13:30開始だった鹿島ユースは、初戦の瀬戸内戦はシュート19本放って5-1、2回戦に至っては仙台ユース相手にシュート24本を浴びせての7-0の圧勝。圧倒的に力の差があるとそんなことも全く関係ないんですよね…笑

物議を醸したプレミアファイナルとその後の対応について

毎年プレミアプレーオフの裏で行われる、プレミアリーグファイナル。今年はイースト優勝の青森山田とウエスト優勝の広島ユースとの対戦となりました。
結果はご存知の方も多いとは思いますが、前半0-0で折り返した後半の立ち上がり、49分に先制した広島ユースがそのまま逃げ切るかと思われた90分に青森山田が同点に追いつき、さらにATに勝ち越しての劇的な勝利で4年ぶり3度目の優勝を果たしました。

タイトルに「物議」と書いたのは、実は90分の同点ゴールのシーンに起こった出来事のことを指しています。青森山田の近年の得意技の一つでもあります超ロングスロー。それをキャッチしようと飛び出した広島のキーパーと青森山田の選手とが接触。バランスを崩したキーパーは、ボールをキャッチ出来ずそのままゴールイン。公式記録では「オウンゴール」となってますが、ちょっと待てよ!スローインが直接ゴールに入ってもノーゴールじゃね?たしかに、リアルタイムですでにネット上では「ロングスローが直接ゴールインしてもノーゴール」という指摘はされていました。さらに「いや、そもそも山田の選手のチャージはファールでしょう」「あれはキーパーチャージだ!(キーパーチャージという販促はすでに死語です(笑))」とミスジャッジを指摘する書き込みや、なかには「この審判はクソだ!4級からやり直せ!」「青森山田はこんなことしか教えてないのか!」「酷いチームだな!これだから高体連のチームは…」みたいな誹謗中傷まがいの書き込みも少なからず見かけました。
実際に映像を見たのですが、確かにキャッチする前に(というか、そもそもキャッチ出来ていないのですが…)チャージしてるように見えたので、フォワード側のファールで当然ながらノーゴールというのが妥当なのかな?とは思いました。もし仮に、そのチャージがノーファールだったとして、キーパーがボールに触れていなければこれもノーゴールです。逆に触れていたとすれば、他の青森山田の選手が誰も触れていないのでロングスローを投じた選手の得点、と言いたいところですが、先ほどもお話ししましたがスローインのボールが直接ゴールインしても、それはノーゴールです。いずれにしても、このシーンについてはノーゴールというのが妥当ではないかと思います。なので、このシーンでゴールと判定しようと思うと、キーパーが僅かに触ったために角度と方向が変わって入ったのでオウンゴール、という解釈にするしかなかったのではないか、というのが私の見解です。

これ、もしJで同じようなシーンがあったとしたらもっと大問題になってた案件かと思うのです。逆にJ1だったらおそらくベンチやピッチの選手(ゲームキャプテン)からVAR判定を求める声が上がり、その場でVAR判定がなされたかと思います。
実はこのシーン。ついては後日、JFAで審議されたようでその結果は「この判定は誤審で、フォワード側のファールと認められる」との見解が出されました。しかし同点ゴールは取り消されることなく、試合の結果も当然ながら変わることはありませんでした。それは至極真っ当なことなのですが、それよりもJFAとして誤審を認めたことは非常に重要なことではないでしょうか。
実は、JFAの審判委員会で審議されることとなったきっかけは、サンフレッチェ広島から判定に関する異議申し立てがあったからでした。その異議申し立てに対して適切に対応し、公平に委員会で審議して判定の誤りを認めたというのが、大まかな流れです。
広島のユースはプリンスリーグが始まった頃からよく見ていました。昔から何試合も見てきましたが、広島の子たちが審判の判定に対して文句を言う場面を見たことがほぼ記憶にないです。長年指導されていた森山監督の指導なのかもしれませんが、審判の判定に一喜一憂してプレーが乱れるよりも、常に平常心を保ってプレーすることを徹底しているように思えます。
そして、この試合の広島のキーパーを務めた3年生の山田くん。実は私、彼のことは中学の時から知っているのです、なぜかというと、彼は中学の頃は佐川滋賀のジュニアユースにいて、3年生の最後の試合をたまたま見にいく機会があり、当時指導をされていた元佐川大阪の岡村政幸監督(現湘南ベルマーレU-15EASTコーチ)から「彼、来年から広島ユースなんですよ」と教えてもらった、その彼というのが山田くんでした。その後、恵まれた環境の中でしっかりとスキルアップして、今年は広島ユースの正キーパーとして活躍するまでになりました。
佐川滋賀のジュニアユース以下の育成方針もやはり、審判の判定に過敏に反応せずに自分たちのプレーを確実にこなすことを実践する指導法を取っています。もっと言えばトップチームも「審判の判定に文句言う暇があったら、もっと走れ!ちゃんとサッカーやれ!」というのが当たり前のチームだったのです。その伝統は、今でもちゃんと育成チームに落とし込まれているのです。だからこのシーンの後も彼は、多少凹んだ様子は見せたもののすぐに気を取り直して、しっかりとプレーしていました。少なくとも私にはそう見えました。そして、他の選手も同様だったように見えたので、そうした伝統は脈々と受け継がれているのでしょう。そして、試合の結果は覆らないにしても試合後、フロントは正式な形で異議申し立てを行い、プレーに対する正当性をしっかりと認めさせたサンフレッチェ広島のフロントの実力を改めて感じました。試合中にセルフジャッジして失点したり、大声で文句を言ってプレーに集中できなかったり、そんな幼稚な姿を見せる必要はない。何かあっても、ちゃんとフロントがしっかりと「それ」に応えてくれる。そうした信頼関係のある、素晴らしいクラブだなと改めて思わされたプレミアファイナルでした。

個人的にはテンションの全く上がらなかった府県決勝

今年の関西府県決勝は大阪のACミドルレンジの優勝、準優勝は同じく大阪のOKFCという、大阪のワンツーフィニッシュとなりました。予選を勝ち上がった4つはこの2チームと滋賀のルネス学園、兵庫の猛獣王でした。猛獣王は優勝したミドルレンジと同じ組で、予選では1-1のドローでした。しかし決勝では3-0と地力の差を見せつけた形となりました。予選の試合を見ていましたが、ややミドルレンジの方が強いかな?程度の印象だったので、正直このスコアには驚きました。もし猛獣王が勝ってたら、年明けからバンバン見に行ってたところですが、よりによって大阪同士なので年末からテンションダダ落ちで、正直見に行く気すら覚えなかったです…
ちなみに入替戦は関西リーグDivision2で7位だった阪南RevolutionとOKFCの対戦。1-0でOKFCが勝利して、久しぶりの関西リーグ復帰となりました。

というのが、ザッと府県決勝の振り返りです。で、ここからが本題。実は昨年度と一昨年、たまたまですが京都府代表vs和歌山県代表との試合を2年連続して見たのです。普段から関西リーグや府県リーグを見ている人でなくても、そんなに関西のサッカーを見る機会のない他地区の人でも、京都と和歌山と比べてどっちの方が強いでしょうか?と聞かれたなら、おそらくほぼ全ての人が京都と答えると思うのです。しかし実際は、2試合とも和歌山のチームが勝利しました。しかもそのどちらの試合も、京都1位と和歌山2位との対戦でした。今まででは到底考えられないような衝撃的な出来事でした。

長年、京都から関西リーグに昇格するチームはありませんでした。しかし2019年の府県決勝で京都市消防局が2位になり、入替戦の末久しぶりに京都から関西リーグ2部に昇格チームが生まれました。そんな京都市消防局のリーグ初参戦となった2020年はコロナ禍の初年度。リーグは半期となり、最下位となっても降格はなし。コロナ禍の緊急事態宣言や、さまざまな対応に追われたためにコンディションの悪いまま、夏以降からリーグ戦に臨むも1勝はおろか、勝点すら上げること出来ずに最下位で1年目を終えます。翌年は「みなし試合」と称した不戦敗もありましたがやはりなかなか勝ち試合に恵まれず、2勝12敗2分の勝点8で最下位。そして残留を賭けた入替戦も、兵庫2位のディオス1995に敗れて、わずか2年で京都府リーグに降格してしまいました。京都のチームはもう20年近く、京都紫光クラブ、A.S.Laranja KYOTO、そしてかつての京都BAMB1993、アミティエSCであるおこしやす京都ACの3チーム固定体制がデフォルトとなっています。

実はヤバい、京都のサッカー界

そんな京都府リーグのレベル低下もそうですが、もっと大変なのは昨年Division1でおこしやす京都が最下位となり今年はDivision2でリーグを戦うこととなり、これで関西リーグに所属する京都のチームは全てDivision2となった、ということなのです。実は京都のチームが関西リーグ1部にいなかったシーズンは、過去58回のリーグ戦において1度もありませんでした。つまり、昨年のおこしやす京都のD2降格は関西リーグにとってはものすごい衝撃度のある出来事だったのです。

京都のチームといえば、かつては長年リーグを牽引した電電近畿、のちのNTT関西がいました。初年度から参戦した名門チームで、日本リーグ2部に所属していた時期もありましたが、徐々にチームは低迷していき、ついに2002年にリーグ最下位となり京都府リーグに降格。チームはその後自然消滅したようです。
同じく初年度から関西リーグにいるのは、こちらも名門の京都紫光クラブです。京都紫光クラブも一時期は日本リーグに所属していました。この京都紫光クラブは1993年に発足したJリーグ入りを目指すべく、チーム名を教育研究社FC京都パープルサンガと変更、これが今の京都サンガになります。そして、京都パープルサンガに入らなかった京都紫光クラブの選手たちは、教育研究社FCと新しく出来た京都紫光サッカークラブにそれぞれ分かれました。
共に京都府リーグ4部から新たにスタートしますが、教育研究社FCは1997年より、京都紫光サッカークラブは1998年より関西リーグに所属。教育研究社FCは2000年から4年間、チーム名をFC KYOKEN京都と変更してJFLに所属。関西リーグに降格後はチーム名をFC BAMB京都→FC京都1993→FC京都とチーム名を変更しながら、関西リーグの1部と2部を行ったり来たりしました。2度目の関西リーグ1部最下位となった2009年、当時京都府リーグ1部にいたアミティエSCとチームを統合、チーム名をアミティエSCとしました。そうして、現在のおこしやす京都ACへとつながるのです。
残る一つのA.S.Laranja KYOTOは2003年に関西リーグに昇格。1部優勝1回、2位2回という成績を残しながらも、近年は1部と2部を行ったり来たりする年が続きます。その他にも、JFLに昇格した佐川印刷やチーム廃部後、滋賀に移って同じくJFLに昇格したM-ioびわこKusatsu(今のレイラック滋賀)となった佐川急便京都、かつての古豪で共に今は京都府リーグに所属する三菱自工京都と京都府警、1年しかいなかったものの久御山FCや日本写真印刷も関西リーグにいました。そして、そのいずれかのチームは必ず関西リーグ1部にいました。しかし今では、前述のおこしやす京都、京都紫光クラブ、そしてA.S.Laranja KYOTOの3つとなり、そのいずれも関西リーグDivision2となり、長い長い関西リーグの歴史で初めて京都のチームが1部から姿を消してしまったのです。

この現実を京都のサッカー界は重く受け止めていることと思います。とはいえ、実は必ずしも京都のサッカー全体が沈んでいるということでもないのです。
例えば高校年代。一時期、選手権や総体でも初戦敗退やよくても2回戦止まりだった京都府代表でしたが、近年では東山と京都橘のどちらかがベスト8やベスト4に入るなど、全国でも十分通用するレベルにまで戻ってきました。山城や洛北が全国制覇をした、かつての「強い京都」に戻るのもそう遠くないかもしれません。
その上の大学年代でも同様の流れが見られます。以前から関西学生1部にいる立命館大学は上位に入るでもなく、また2部に降格するでもない、実に中途半端な位置ではありますが、ずっと1部に止まり続けています。その立命館とは何かと常にライバル視される同志社大学は、しばらくの間1部と2部とを毎年行ったり来たりしていました。しかしここ数年は同志社もようやく1部に定着、立命館とともに中位から上位まて狙えるチームとなりました。
京都産業大学も立命館同様、なかなか成績が上向かず、中位や下位に低迷することが多かったですが、この3年は上位をキープ。昨年はとうとう1部で初優勝、インカレでも準優勝という晴々しい成績を残しました。そして今年、2部から京都橘大学が1部に昇格。京都の学校が1部に4チームと、おそらく過去最高のチーム数になるのではないかと思います。
このように高校、大学年代では着実にレベルが向上している京都のサッカー界。その一方で、京都の社会人サッカー界はどんどん地盤沈下しているように思えてなりません。まあ、京都の高校生や大学生がそのまま京都のチームに行くとは限らないので、仕方ない側面はあるとは思いますが、府リーグのチームのレベルはともかく、せめて関西リーグ所属のチームにはもう少し頑張ってもらわないと、本当に京都のサッカーがどんどん停滞していくでしょう。

今、関西リーグに所属するチームを各府県別に見ると、Division1は滋賀が2(レイジェンド滋賀、守山侍2000)、兵庫は一番多く3(Cento Cuore HARIMA、FC BASARA HYOGO、FC AWJ)、大阪は意外にも1だけ(阪南大クラブ)、そして奈良と和歌山もそれぞれ1づつ(飛鳥FC、アルテリーヴォ和歌山)の合計8チーム、Division2はというと大阪が一番おおき4(関大FC2008、St.Andrew's FC、ACミドルレンジ、OKFC)、D1では最大勢力だった兵庫は1(神戸FC1970)、そして京都は3(おこしやす京都AC、A.S.Laranja KYOTO、京都紫光クラブ)の計8チーム、全部で16チームです。数の上では大阪の5チーム、兵庫の4チームに次ぐ3番目の勢力ではありますが、所属チームが2つともD1という滋賀と比べると見劣りしますし、1チームだけの奈良や和歌山と比べてもやはりそう見えてしまいます。
さらにもっとマクロの視点で京都のサッカー界を見てみると、ピラミッドの一番上にいる京都サンガの次のチームはというと、関西リーグDivision2のおこしやす京都となり、その差はなんと4階級になるのです(京都のいるJ1からJ2、J3、JFL、関西リーグD1、そしておこしやす京都などのいる関西リーグD2まで)。この4階級差というのは、47都道府県で見ても山梨のそれと同じで(ヴァンフォーレ甲府のいるJ2から、J3、JFL、関東リーグ1部、関東リーグ2部、山梨県リーグ1部の4階級)、全都道府県中最大の差となります。それくらい、実は京都のサッカーの地盤沈下は激しいのです。この事実を京都サッカー界は真剣に受け止め、なんらかの対策を講じる必要があるのではないでしょうか。そんなことを昨年の関西リーグからこの年末の府県決勝の結果を踏まえて、改めてそう思ったのでした。

以上、この年末年始のサッカーについてあれこれお話ししました。こうしているうちにも、23日にはJの全日程が発表されます。それが終わると続いてJFLの一部カードの詳細が26日に、そして来月の9日にはJFLの全日程も発表され、次々と新年度の日程が出てきます。さらに大学でもデンチャレの選抜メンバー発表や日程も来月に入ると明らかになるでしょう。のんびりと休んでる暇はないのです。ということなので、今年も1年よろしくお願い申し上げます。

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