「チームのプロトサイクルは3年です。ここ、テストに出ます!!」

この原稿を書いている時(初稿)、ちょうど天皇杯をやっていた。「前半終了、Hondaがリード」と聞いても何ら驚かない。ごくごく普通の出来事でしかない。そろそろ日本のサッカー界も「同一チームのアップセットは2回(2年)まで」とした方がいいと思う(笑)

さて、本題に。いつものように(笑)関西リーグを見に行く。レイジェンド滋賀vsアルテリーヴォ和歌山の1戦。この試合、久しぶりに両チームともサポが太鼓を叩いて応援するのではないか?と思いワクワクしながら現地に行くと、予想通り両陣営とも太鼓を準備して臨戦態勢の様子だった。
レイジェンドの太鼓は「1年半ぶりくらいやから、ちゃんと叩けるかな〜?」とか弱気なことを言ってましたが、試合が始まれば何てことない、しっかりと軽快なリズムを刻んでましたよ。
一方のアルテリーヴォは太鼓だけでなく、スネア(これがまためちゃくちゃ上手いんだな〜)にタンバリン、さらに今季の秘密兵器(?)である木琴と多彩な鳴り物たちが選手を後押し。いや〜、ホント和歌山サポさんたちは芸達者です。機会があれば是非見てもらいたいと思うわけで…。

和歌山ユニを着たきいちゃん。和歌山国体のキャラクター。ちゃんとマスクも着用してます(笑)

レイジェンド滋賀サイドにいた、知ったかぶりかいつぶり。びわこ放送のキャラクターらしいです。右側のマスクしてない方は、野洲のおっさんというらしいです(笑)

試合はレイジェンドの動きが良く、アルテリーヴォは後手に回る展開。前半にあった決定機に点が入っていれば、結果は大きく変わったかと思います。後半の飲水タイム直前、アルテリーヴォの高橋からの折り返しを中にいた宇都木がここしかないというコースを綺麗に突いて決勝ゴール。アルテリーヴォとしては悪いなりにも勝てた試合、レイジェンドとしては勝てた試合を落としてしまった、そんな明暗を分けた試合でした。

和歌山、宇都木の決勝ゴール。厳しい試合を勝利に導いたビューティフルゴール。

レイジェンドの決定機。裏を抜けるもキーパーの好判断でセーブされる。

この決定機もアルテリーヴォのキーパーとDFに阻まれてゴールならず。どちらかでも決まっていれば…

…ちゃんちゃん、とは今回のお話はこれで終わりではありません。ここからがむしろ本編。
レイジェンド滋賀とアルテリーヴォ和歌山。共に将来のJリーグ入りを標榜しつつも、関西リーグ在籍10年以上の「大ベテラン」。両者はやや立ち位置は違えど「Jリーグ行く行く詐欺」と言われても反論できないレベルにまで達しつつあるのではないかと思います。

アルテリーヴォ和歌山は過去2回地域決勝出場があるが、その2年がチームのピークだったことは否めない。Jリーグもさることながら、和歌山国体の強化チームという側面もあったので比較的資金面に恵まれた時期もありました。出来ればその間にJFL昇格を達成できれば良かったのですが、その機を逸して今に至るといったところです。ここ2、3年は資金的に相当厳しいという見方もあったのですが、現実に即した運営規模に切り替えたのか、今年は久々に地域CLも狙える位置に付けています。
レイジェンド滋賀は県内のトップチームであるアルテリーヴォとは違い、Jリーグ入りとは言っているものの県内での地位は2番目。さらに近年は1部の上位はおろか、1部と2部とを行ったり来たりしていてなかなかチームの強化まで進んでいない厳しい現状。運営資金もアルテリーヴォ以上に厳しい。同じ県内のトップチームであるMIOびわこ滋賀でさえ資金繰りに苦慮しているのだから、2番手となると無理もない。
どちらも周囲の期待とは裏腹になかなか結果が出ない、もどかしいシーズンを積み重ねているように思えます。チームの強化って、資金があっても成功するとは限らないし、たとえ強化が出来たとしても結果が伴うとは限らない。言葉で書くと実に簡単ですがなかなか難しいですよね…

チームの強化を戦力面から見ると、昔からの持論としておおよそ3年周期の大きな波がくるように感じています。
なぜそう捉えるのか?ある選手が学校を卒業後「いつまでサッカーに打ち込めるか?」という観点から見ると、そのピークがだいたい3年周期で来るように思うわけです。大卒なら25歳と28歳、高卒なら21歳と24歳と27か28歳。選手が「辞める」タイミングがおおよそこの年齢のことが多い。サッカーだけに打ち込むという環境は、裏を返せば「サッカーを辞めた後の生業」を半ば犠牲にする形で成り立っている、というケースがほとんどである。まだ若いうちはそれでもいいかもしれないが、徐々に周囲の状況が変わっていく。同級生が結婚する、子供が生まれる、給料が上がる、出世をする…。そんな中、社会に出たにも関わらず「サッカーしか知らない」自分自身の将来に不安を感じるようになってくる。肝心のサッカーにおいても「誰にも負けない!」と思っていたものの実はそんなこともなく、自分より上手な奴がゴロゴロいる。だんだん自信を失っていく…。そういう周期がだいたい3年くらいでやってくる。「プロではないが”プロみたい”な存在」である、両チームのような地域リーグやJFLのチームに身を置く選手たちは、側から見る以上にもの凄く厳しいものです。
どのカテゴリーにも共通しますが、プレイヤーの寿命に大きく左右される「チームのプロトサイクル」はやはり3年周期でそのチームのピークを迎えるように思います。なので、個人的によく言う話ですが「一倍強いセットの3年間」でどれだけランク(リーグ)を上げられるかがそのチームのその後に大きく影響する。そう思うのです。
いい例を一つ挙げると、JFLにいるFC大阪。FC大阪は実は関西リーグに昇格してちょうど3年で「卒業」、つまりJFL昇格を果たしたのです。まさに「一番強いセット」を維持したまま、さらにワンランク上に行ったわけです。JFLからJというのはチームの実力ではどうすることもできないロビー活動、つまりチームの法人化や地元自治体との連携、スタジアム問題などがあるので「すぐに次のステップへ」とはなかなかいかないことを鑑みると、少なくともJFLまでどのタイミングで上がれるか?にそほチームの将来がかかっているとも思えます。

では、両チームにとっての「一番最強のセット」はいつだったのか?
アルテリーヴォ和歌山においては、間違いなく関西連覇を果たした2015、16年を挟んだ3〜4年間でしょう。和歌山国体があったのもちょうどその間(2015年)です。アルテリーヴォが一番全国に近づいた期間とも言えます。それから数えると今は2セット目の真ん中の年です。去年がちょっとチームがうまく噛み合わずにシーズンを終えてしまったことを考えると、今年が今のセットでの地盤づくりと捉えられるのではないかと。そう考えると今の成績は上出来だし、次の「一番最強のセット」に仕上げることも十分に可能ではないかと思います。
一方のレイジェンド滋賀。こちらはチーム最高位だった2013年からの3年間ではないかと。2015年には岩手全社にも出場し、さらなる高みを…と言いたいところだったが、その後チームは下降線を辿る一方。2部降格に昨年の入替戦での残留など、なかなか浮上できそうな雰囲気とは言いがたい。とはいえ、一昨年から新監督を迎えてその年に大幅に選手を入れ替えたことを踏まえると、去年からのこの3年を「強いセット」に出来るかどうかが、チームの将来を大きく左右するのではないかと、そう思うのです。

最強のチームが最高の結果を残すとは限らない。しかし、チームの強化と成長という点では何回も「最強のセット」を作ることができれば、自ずと最高の結果に近づくことができるのではないか。そして、その「最強のセット」のタイムリミットは3年であるということをちょっとだけ頭の片隅に置いておくと、また違った見方が出来るのではないかと、そう思うのです。

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