阪南大ダービーを見ながら「ポスト須佐」の阪南大サッカーについてちょっとだけ考えてみた、というお話

神戸に住んでいると、近鉄のしかも南大阪線なんて乗る機会ほとんどないんですよ。でもね、変人の域に達する遠征芸人となると、年1は最低でも近鉄南大阪線に乗るんですよ、しかも松原市という実にマイナーな自治体に存在する布忍という、これまた令和の世に昭和にタイムスリップしたかのような古い駅に用事があるのです(笑)

自前の画像がなかったので急遽、Wikipediaからの引用です。
2020年9月のもののようですが、今もほぼ変わってません。

5/28@阪南大高見の里グラウンド 神戸FC1970 4-2 A.S.Laranja KYOTO、阪南大Revolution 1-0 阪南大クラブ

関西リーグに阪南大クラブがいる限り、おそらく関西リーグの何試合かはここでやるんだろうな〜という、阪南大高見の里グラウンドでの試合。今年、大阪府リーグから関西リーグDivision2に昇格した阪南大Revolutionと長年関西リーグに在籍、地域決勝大会にも出場経験のある阪南大クラブとの「阪南大ダービー」がこの日行われるので、それを見に来たというわけです。

過去の画像ですが、阪南大高見の里グラウンドはこんな感じ
写真は2021年5月8日の関西学生リーグの時のものです。
こちらは超ゲリラ豪雨に見舞われた2019年6月30日のもの。
阪南大クラブvsSt.Andrew's FCとの試合中の写真です。

と言いつつ、実はその試合の前に行われる試合も実は目が外せない面白い一戦。ちょうど1週間前に行われた天皇杯、松本のサンプロアルウィンでJ3首位だった長野相手にいい試合をしたラランジャが、関西に戻ってきてどこまでやれるんだ?という点にも注目が集まった試合でした。
開幕から3連勝、さらには先週の出来からもラランジャが圧倒するのではないかと思われたが、蓋を開けてみると、神戸FCのいつもの老獪なサッカーに大苦戦。先週の疲れもあるのか、ラランジャはなかなか波に乗れない苦しい試合となりしました。
フワッとした入りをしてしまったラランジャに対し、開始わずか3分に神戸FCの福冨に先制ゴールを決められると、その後もラランジャDFが先週の天皇杯ではありえなかったようなミスを連発。35分、パスをカットした神戸FCは9番の井上からのパスをまたしても福冨が決めて2-0。

開始3分、相手の隙を突いて神戸FC福冨がゴールを決める。
首位相手に最高の入りが出来た神戸FCは大喜び!
2点目は相手のパスミスから。
9番井上のラストパスを福冨がこの日2点目のゴール。
神戸FCの老獪なサッカーが際立った前半でした。

しかしラランジャも負けてはいません。前半終了間際に山中のゴールで1点返すと「さあ、ここから!」といった前半のATもほぼラストプレー。神戸FCの10番小林に痛恨のゴールを決められて嫌な流れで前半を終える。

44分、ラランジャ14番山中のゴール。
反撃の狼煙となる、はずのゴールでした…

後半もラランジャはやはり流れをなかなか掴めないながらも、50分に11番の青島のゴールで1点差に詰め寄る。

50分、青島のシュートはキーパーの手をかすめ、
さらにポストに跳ね返ってゴールイン。
まだ40分あるのだが、慌ててボールを拾い、
センターサークルに置きに行くラランジャ。
今から思えば気持ちが焦っている証拠だったのかも…

その後はラランジャペースで試合は進んだが、神戸FCの守備の集中が途切れることなく、しつこく粘り強く守り抜く。後半も半分を過ぎた75分、浅いDFラインの裏を抜けた神戸FC10番小林がキーパーとの1対1を冷静にコースを見極めながらゴールに流し込み、ダメ押しの4点目。ラランジャの反撃の芽を完全に止めるゴールとなった。、

裏を抜けた神戸FC10番小林のゴール。
彼のこの展開はいつでもどこでも無双です!(笑)

なんとか1点でも返そうと必死にプレーするが、この日のラランジャはどうも歯車がうまく噛み合わない。そのまま老獪な神戸FCの術中にまんまと嵌ったラランジャは、今シーズンリーグ初黒星を喫した。一方の神戸FCは今シーズンの初勝利を首位相手に勝ち取った。

この日のラランジャは何かリズムが悪く、さらに立ち上がりの失点で完全に試合の流れに乗り遅れた感がありました。さらにDFにおいても、そんなにプレスのきついとは思えない神戸FCの緩い網に不用意なパスが引っかかり、これがきっかけとしての失点。これがかなりメンタル的にキツかったと思われます。ラランジャもここまで無敗とはいえ、開幕の阪南大Revolutionとの試合でも前半4-0から後半は完全にRevoにペースを握られ一気に3失点。試合があと10分長かったらひっくり返されていたというくらいの出来だったらしく、確かに地力的には頭一つ抜けている感はありますが、それでも盤石ではないというのが今年のDivision2。1年でのDivision1復帰を目指すラランジャにとっては、中盤から後半に向けて、そこらじゅうに魔物が棲んでいる予兆を感じさせる試合でした。

一方、勝った神戸FC1970。この日の神戸FCはまあ、完璧な試合運びと言えるでしょう。
この日の神戸FCはまあ強かったです。いつものシーズンから、試合ごとにメンバーが大幅に入れ替わったりすることがあり、試合ごとのレベルの差が激しかったりするのですが、今年は比較的主力が固定できてるので結果はともかく、内容は安定しているようです。
今年初めて見ましたが、県リーグ時代からずっと見ている小幡や福冨はこの日もいつもの安定感あるプレーを見せてましたし、今年FC EASY02明石から移籍してきた小林も完全にチームにフィットしている様子。この日のゴールも、昔から幾度も見たシュートシーンでした(笑)。さらに後ろも、やはりFC EASY02明石にいて去年は飛鳥FCのサブチームのポルベニルカシハラNEXTで府県決勝にも出た池田と、FC TIAMOから移籍してたぶん4年は経つだろう岡山とのCBコンビも強固ですし、もっと特筆すべきはキーパーの岡田。去年までエリース東京にいた、おそらくは「転勤組」の選手。調べてみたらどうやら多嶋田と高校が同じで同期らしく、しかも國學院久我山で選手権準優勝した年のメンバーだったようです。その時のメンバーというのが、去年まで武蔵野にいた上加世田や、卒業後すぐに琉球に入った名倉、今年から東京ユナイテッドに入った上田は1年ながら1番を背負ったキーパーなど、ざっと攫っただけでもそこそこの経歴を持った選手たちとプレーした選手。2失点もキーパーはほぼノーチャンスなシュートだったので仕方ないにしても、それ以外は実に安定感あるプレーを見せでいました。今年の神戸FC1970はなかなか厄介や存在になるのではないかという印象でした、

本来のサイドではなくボランチでプレーした小幡。
どこにいようとプレーの質にブレがないです。
神戸FCのゴールを守る岡田。
高校時代は選手権準優勝メンバーと経歴はピカイチ。
前所属が関東リーグ、さらにプレーも安定感があるので、
神戸FC的には願ってもない補強となりました。

続いての第2試合。今年、大阪府リーグから昇格した阪南大Revolutionと長年関西リーグに君臨し続けている阪南大クラブの「阪南大ダービー」です。この日、試合のない部員たちが試合前からワラワラと集まって、それぞれがどっちかの応援をするという、日頃の阪南大の試合ではありえないような控え部員による応援が見られた、かなり珍しい雰囲気の試合となりました。とはいっても、関大とかみたいにみんなでまとまっての応援ではなかったですね。まあ、そこは阪南らしいなと…(笑)
阪南大サッカー部的な位置付けとして、阪南大クラブ(以下、大クラ)はトップから見て3軍といったところ。そして、今年昇格した阪南大Revolution(Revo)はさらにその下の5軍という位置付けらしいです、今がどうかは知りませんが…。ここまで大クラは3連勝と負けなし、一方のRevoは3連敗の勝ちなしという全く対照的な成績。そろそろ勝星、いやせめて勝ち点が欲しいRevoと、ここ3年Division1昇格を逃しており、昇格には一つでも負けられない大クラ。単なるライバル関係もさることながら、どちらも負けられない熱い試合となりました。
立ち上がりからペースを握るのは大クラではなく、Revoの方でした。前線からガンガンとプレスをかけるRevoに対して、大クラはそれを早いパス回しで回避しながら前へ運ぼうとするもうまくつながらない。Revoも攻めてはいるが大クラのDFがうまく立ち回ってチャンスを作らせない。お互いのプレースタイルを把握しているからこそ、なかなかチャンスが作れない前半でした。
そんな停滞した流れを打開すべく、後半開始から大クラは一気に3枚替えを敢行。流れを引き戻そうとする。そのおかげか、やや大クラ優位な展開にはなったものの、大クラだけには絶対負けたくないRevoは必死のディフェンスで守り切る。チャンスを作り出す回数は増えたものの、決定的なシーンは少ないまま残りわずかとなった87分、左からのボールに反応したRevo8番中山の決勝ゴールが決まり、Revoが関西リーグ初勝利をリーグのライバルでもあり、同じサッカー部のライバル同士でもある大クラからもぎ取った。

途中出場の17番中野のバスを8番中山がゴールを決める。
ベンチに向かって走り出す中山を迎える控えメンバー。
優勝でもしたかのような喜び方でした。

まずはチーム内ライバルに悔しい敗戦を喫した阪南大クラブ。一昨年の秋に長年阪南大のサッカー部を指導されていた須佐徹太郎監督が勇退し、体制が大きく変わってから3シーズン目。トップもさることながら、その下の大クラも今までとはかなり変化がありました。特に長年監督をされていた本田監督がトップのコーチ昇格に伴い、代わりに本田監督の元でコーチをされていた北條貴紀コーチが監督に昇格しました。さらに大きな変化としては、今までの須佐先生時代には大クラにいた子はシーズンが変わろうとメンバーはほぼ固定されていましたが、今の朴成基監督に変わってからは大クラの主力メンバーもどんどんトップに昇格するようになったことです。しかもシーズン途中でも関係なく、トップに招集されたりするようになりました。これによって、大クラの子たちも「頑張ればインカレや総理大臣杯にも出られる」という新たなモチベーションが生まれたことが一番大きな変化でしょう。
新しい朴成基監督体制のトップチームにおいては、インカレや総理大臣杯で勝てるサッカー、つまり全国で上位に勝ち上がるためのサッカーにシフトしつつあります。実際、少し前と比べても入ってくる選手のレベルは格段に違っていて上手い子や頭のいい、いわゆるサッカーIQの高い子がたくさん入るようになりました。そのおかげで関東の強豪のような質の高いサッカーも可能になってきました。大クラにトップチームへの選手の供給という使命が求められるようになったおかげで、大クラのサッカーも今までの阪南大のサッカーではなく、トップでフィットするような質の高いサッカーを展開しないといけなくなったとも言えるのです。そのため、昔の大クラのようにガツガツ行くような荒削りなサッカーがなりを潜めてしまったかな?というのが、この日感じた1番の印象でした。
個人的な見解として、今までの阪南大って全国に通用しているようで、実はあまり通用していなかったと感じていましたし、それが阪南大の1番の課題なのではないかと思います。それを改善するためには今までの野生味溢れるサッカーではなく、組織だった守備と攻撃をメインとした「全国で勝つためのサッカー」にシフトチェンジせざるを得なく、そのタイミングが新監督に変わった今だったと言えるのでしょう。
そんな転換期にある大クラ。たしかにみんな上手いんですが、やはり昔の大クラのような前線からガツガツ行くようなパワフルな選手があまりいなく、この日も特に後半、Revoに押された時間帯にそれを跳ね返して点を取りに行くというパワーは感じられなかったです。どちらかというと、ラスト10分は「なんとか凌いでドローで逃げ切ろう」みたいな雰囲気がチーム全体に蔓延していたように見えました。それで想定通りドローで終われれば良かったんでしょうが、結局その時間帯に失点して負けてしまったところを見ると、新しいサッカーへのシフトチェンジはまだまだ道半ばなのかな?と言ったところではないでしょうか。
対して「格上」の大クラに勝利したRevo。彼らを見ていると昔の大クラのような雰囲気をより感じされるチームでした。以前の阪南大と言えば、後半のスタミナやチーム全体のポジションやバランスなんか一切考えてないだろう、と思うくらいの無謀なハイプレスをガンガン仕掛けるスタイルでしたが、そのスタイルまんまのサッカーを展開するRevoの方がより「大クラ」っぽいと言ってもいいのではないかと思うくらいでした。
ただ、前線からハイプレスを掛けるが大クラDFに上手いように交わされている様子を見ると、つい「インカレとかで関東と当たるといつもこうやって交わされて、体力を奪われて、徐々に隙をつかれてやられるんだよね〜」などと思いながら見てしまいました。そうなんです、先ほども書きましたが阪南のスタイルって関東の強豪相手に通用しそうで、実はあまり通用していないことが多いというのが最大のネックで、しかもそのことが皮肉にもニュースタイルとなった大クラ相手で証明されてしまいました。それでも最終的には決勝ゴールを決めて勝ったということは、ニュースタイルの阪南大が苦にする相手は逆に以前の阪南大のような前線からガンガン行くスタイルのサッカーなんだ、と言うことも同時に証明されてしまったのです。う〜ん、これこそまさに諸刃の剣とでも言うのでしょうか、それとも永遠のジレンマとで言いましょうか、実に根が深い問題ですね…

この試合、同じ阪南大ということで大クラとRevoとのミラーゲームのような展開になるのかな?と思ったのですが、ここまでトップチームのモデルチェンジの影響を大クラが受けているとは思わず、さらにお互いにお互いのスタイルが実は苦手という衝撃の事実も判明してしまいました。大クラ単体だけだとそこまで影響を受けていることにもしかしたら気づかなかったかもしれませんし、これが同じ阪南大のRevoが相手だったからこそ、より際立って見えたのかもしれません。
今年、この時期にトップチームからはすでにJ内定者が出ています。トップは確実にレベルアップしていますが関東の強豪チーム、例えば明治とか流経大とか今年好調の筑波などと戦って果たして勝てるのか?と言われるとちょっと回答に苦慮してしまいます。トップチームがさらなるレベルアップを図るためには、大クラやRevoの子たちがトップの選手を脅かすくらいにならないと厳しいのではないでしょうか。大クラの子にはもっとガツガツ行く激しいプレーを、Revoの子には緩急をつけた、もっと頭をフルに使ったスマートなプレーをそれぞれちょっとだけでも身につけてもらって、秋口には1人でも多く「ここ」ではなくトップに籍を置く選手が現れることを期待しております。そして、主力選手が抜けて新たな選手と入れ替わったとしても、変わらず勝ち続けられるようになれば自ずと大クラもDivision1に復帰、再びDivision1に定着できるでしょうし、またRevoも関西リーグに定着し続けることができるようになるのではないかと思うのでした。

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