【書籍紹介】〈役割語〉小辞典
漫画のキャラクターが自身のことを わたし/わたくし/うち/あっち と呼ぶ時、そのキャラクターにどんなイメージを抱くでしょうか?
その言葉を使用する話者に特定の人物像を想起させるような言葉、役割語に関する本です。
役割語が持つ歴史的変遷と漫画を主にしたフィクションでの表象から120語を辞書の形式で編纂した役割語辞典、読み物として面白く読めます。
それは忍者なの? 武士なの?
忍者の自己名乗りといえば、「拙者○○でござる」が多くの人の頭に浮かぶのではないでしょうか?
しかし拙者、ござるは武士の役割語でもあります。なぜ私達はこれを忍者の言葉遣いだと思うのでしょうか? そもそも隠密に活動していたであろう忍者の話した言葉は歴史的資料に残っているんでしょうか?
本書では対象の役割語を歴史的背景と漫画を中心とした表象を混ぜつつ解説されます。その中には歴史的には正しくなくとも、我々のイメージとしては強く共通性があるものもあり、言葉が使われながら変化していくものであることを感じ取ることができます。
漫画での表象
やや斜めな角度ですが、本書の素晴らしさの一つは役割語の表象として例として挙げられているのが漫画などフィクションに絞られていることだと思います。
方言や訛りを過剰に強調することは、ともするとステレオタイプの押し付けにつながりかねませんが、本書を言葉の面白さとして純粋に楽しめるのは、漫画を中心としたことによりフィクションの中での表現として紹介されているからではないでしょうか。
誰もがいつの間にか身につけている言葉の多様性
本書を読む楽しさは選ばれた120語がでどれも「たしかにこの言葉は○○というキャラクターが使うよね!」というあるあるの感覚を与えてくれ、その背景が示されることで理解が深まっていく体験にあります。
役割語は学校などで習ったものではなく、本やドラマの中など様々な場面の中で多くの人が身につけてきたものだと思います。身近な言葉が持つ多様性を楽しめるオススメの一冊です。
こちらの書籍はハイパインブックスにて取り扱っております。神保町のPASSAGE by ALL REVIEWS、または以下のリンクからオンラインからも購入いただけます。
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