保守派政治家の先の大戦について問われた時の「正しい」答え方

先月、横浜市長選挙がありまして、市内外から多くの注目を集めた選挙でした。カジノの誘致の是非や中学校給食実現が大きな争点となりました。

私は、選挙以前に伊藤ひろたか候補と何回かお会いしたことがあって、良くも悪くも特徴的な政治家だと思ってましたし、選挙を終えてその認識は間違いなかったと感じます。

以前、伊藤氏が市議時代に海外視察の報告会がありました。その時に政治の役割は「課題解決」だと彼は言っていました。その通りだと思われる方も多いと思いますが、それは結局騒がれていることに対処するということだけではないか。大切なのは何が課題かという価値・倫理観・思想ではないのか、と。神奈川ネットワーク運動のキャッチフレーズ「それって政治だよ」ではないですが、まだ政治の話題になっていない大切なことを政治の俎上にあげていけるかというのは、社会への視座によるのではないでしょうか。彼は政策通なのですが、そこを軽視し、政策というアウトプットのみに注力する政治家は多くいますが頂けないなあと思います。

そんな、伊藤氏の政治家としていけてない面が現れたと思うエピソードが私が知っているだけでも二つぐらいあるので考えて見ましょう。

保守系の政治家が先の大戦のことを問われたらどう答えるべきなのか

伊藤氏が立候補表明をした直後、野党共闘系市民団体に呼ばれて話をすることがありました。質疑応答があったのですが、ある方から安倍政権による戦争のできる国づくり・先の大戦の歴史認識問題についての評価を問われました(質問内容は忘れましたがそんな内容でした)。私は、市長選挙で国政の話をするのはあまり適切だとは思っていません。しかし、国家のことを問われれば一政治家として誠実に答える責務があると私は思います。

伊藤氏は「市長選挙とは関係ない話で一般論でお答えする」と前置きを入れ、自分の聞いた戦争体験者の話をした上で、過去の歴史の問題については色々な立場があるので誰が悪いということは後世の歴史家の評価に任せたいという答え方をしました。彼もこんなことを聞かれるとは思っていなかったでしょうが、僕はこの答え方は不誠実だと思います。

まず、伊藤氏は民進党員であり、安保法案・共謀罪についての党の姿勢を支持する立場のはずです。それ以前に政治に関心のある一市民であって、意見・考えを持っていて当然。もちろん、個人として感じることと政治家としていうべきことは違うのは理解していますが、何らかのメッセージがあっても良かったのではないでしょうか。

次に、先の大戦の話で、すぐ歴史認識問題の話題になり、「中立的」な立場での、どっちもどっち的なもの言いになるのはいかがなものか、と。後世の歴史家云々言いますが、歴史家と呼べる人達の中でも「国策の誤り」だというのはおおよそ一致していて、後世の評価を待つものではないです。ある政治的判断によって、多くの命が戦場でも銃後でも失われたということは消えない事実であり、戦争は天災ではなく人災であり、だからこそ政治的な立場を超えて、繰り返してはならないことだと言い伝えてきているのではないでしょうか。

ということで、正しい答え方を考えてみました。

歴史認識問題や安倍政権への評価を避けた上で、観客の好感度を向上できる回答を。伊藤さんは「左翼」や「市民運動」はお嫌いだと思うのですが、どこで誰と話してんだという話です。

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質問ありがとうございます。安倍政権による安保法制・共謀罪の審議は私も時間がある時にテレビで見て、江田先生や真山先生とよく話をしてきました。与党には与党の意見もあるでしょう。そこまで安保法制・共謀罪が必要だとおっしゃるならば、もう少し丁寧な議論の進め方があっても良かったのではないかと私も議会人の一人として思います。彼らにとって大切な議案なんですから。私も市長となったならば、各会派の議員の皆さん・議場の外の市民の皆さんと誠実に議論をしていきたいです。

先の大戦のお話もありました。先の大戦への評価というのは色々あり、歴史のプロではない私が何か言うのは過不足あるでしょう。とはいえ、一人の政治家として思うことがあります。その時、生きていた政治家にとっては合理的な判断だったかもしれないが、その結果によって多くの命が失われたということはとても重いということです。私達が学んだ教科書によれば、多くの若い人が戦場に生き、撃たれて死んだのではなく飢えや病で死んでいきました。横浜の街は何度も空襲にあい多くの人が家屋を失い、家族を失った人の話も聞きます。

当時の人たちにも崇高な目的があったことでしょう。けれども、政治は結果責任です。戦争に敗れただけでなく多くの命を失ったことに対して、正しい判断だったと誰がいうでしょうか。今日は冒頭にカジノの話・中学校給食の話・人口減少の話をしました。横浜市でも大きな政治的な判断を求められています。「命を大切にする政治」への一歩一歩を市民の皆さんと歩みたいと思います。

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