なぜ長時間労働を風土病扱いしてはいけないか

 端的に言います、経営者が現場に責任を押し付けて、責任逃れをする口実になるからです。

 世の中には、長時間労働する奴は生活費稼ぎが目的だとおっしゃる経営者の方がいらっしゃいます。また、ある経営者の方は、管理職たちが部下を労働時間で評価するからみんな長時間働くんだとおっしゃいます。

どちらも根拠がないことです。

 日本労働組合総連合会(「連合」)による2015年の調査によれば、残業を命じられた人が考える残業が多い理由(複数選択)のトップ2は、「仕事を分担できるメンバーが少ないこと」「残業をしなければ業務を処理しきれないほど、業務量が多いこと」で、ともに50%を超えていました。

 それに対して、「職場に長時間労働を評価する風潮があること」を挙げる声は10%、「残業代を稼ぎたいと思っていること」はわずか8%でした。

労働時間に関する調査

 ブラック企業被害対策弁護団代表の佐々木亮氏の記事にある通り、他の調査でも「業務量の過多」が一番に挙げられています。

【Q&A式】1から分かる「定額¥働かせ放題(残業代ゼロ)」法案の問題点

 残業が評価されるのは、そもそも人員に対して業務が多く、それをなんとかしのぐ責任が現場に課せられているからですし、生活残業をこっそりできるのはそれを隠すぐらいの業務量が職場にあるからです。また、上司が残っていると帰りづらいのは、単純に上司が残っているからではなくて、上司が残らないといけないぐらい業務量があるからです。

 にも関わらず、業務量がなぜ多いのかという問題はあまり扱われず、ひたすら現場の風土ばかりが問題視されてきました。


効果の疑わしい風土改革・さらなる風土改革としての「定額働かせ放題」

 私の知り合いが勤めている会社では、風土改革のコンサルタントを呼んで、風土改革に取り組んだそうです。しかし、数ヶ月で元に戻ったと言います。

 あるコンサルタントの方は、ワークライフバランスを重視する風土に会社を変えれば、利益が上がるようになるとおっしゃっていますが、私は明らかな生存者バイアスもしくは、因果を取り違えていると思います。

 利益がある程度なければ、社内の風土改革にかけるお金を捻出できません。従業員が風土改革の社内グループに関わっている時は利益を生みませんが、彼らの給料は払わないといけないからです。だから、それぐらい体力のある会社しかチャレンジできず、そりゃ利益を出せるわなと思います。

 上に挙げたコンサルタントの方は否定しますが、世の中には、風土改革を進めるために残業代をなくしてしまえという研究者や経営者もいます。

 平の従業員からすれば上司は会社側の人間かもしれませんが、経営者から見れば現場の従業員の一人に過ぎません。現場の奴らの都合で長時間労働しているのだから、残業代をなくせば、風土が変わって早く帰るだろうということを言う人は一人や二人ではありません。

 真っ当な神経をしていれば、日本のたいていの従業員には裁量を与えられておらず、残業代を削られても早く帰ることはできないことはわかると思います。そもそも、日本では多くの場合、様々な手を使って残業代の不払いが行われていますし。

こうやって現場や個人の責任していく風潮は慎まなけれなければなりません。


何を解決すべきなのか

 何を解決すべきなのでしょうか。やはり、先に挙げた「一人当たりの業務量の過多」を見直しましょう。これについて現場でできることはほとんどありません。

 人を雇い人員不足を解消する、システムに予算を投入しルーチンワークをなくす、こう言ったことでしか、タスクの過多は無くなりません。もし、内部留保で使えるお金があるならば、こういうことに投入しましょう。

 そういう使えるお金がない場合は、ビジネスモデルを見直し、もっと利益が入ってくるようにしましょう。社会から必要とされていない事業を見直し、必要とされている事業に人手を回しましょう。

 これ以上は素人なので書きませんが、これらのことは全て経営マターです。人手不足に陥っているのは、過去に適切な利益を上げてこれなかったからです。経営者の経営能力の不足を現場ん従業員に転嫁していいでしょうか?マーケティング理論の受け入れを拒絶してセリング(売り込み)に固執し、目先の利益の為に設備投資(IT含む)や研究開発費を増減させてきたツケが今回ってきているように思います。

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