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いまどきアナログで絵を描いている金田さんを応援しよう

 刃牙さんは、絵を描くとき、何を使って描いていますか。
 皆さんお気づきかと思いますが、私は基本的にアナログで、紙にシャーペンやボールペン、色鉛筆などで絵を描いています。
 00年代の一時期だけ、adobeの無料ソフトで着彩を試したこともあるのですが、もともと絵を仕事にしているわけではありませんし、趣味で何かを描く機会も少なくなりました。この10年ほどは、何かを描きたいときはアナログで描いています。別にアナログ作画に自信があるとか、アナルに語感が似ているから好きというわけではなく、単に、進化したデジタル技術に全くついていけていないのです。

 この記事では、誰に頼まれたわけでもありませんが、私がアナログでどれぐらいの工程を踏んで絵を完成させているのか、デジタルキッズたちにお教えしたいと思います。
 今回、説明するのは、「カネジュンの孤独のASMR ~第1回 耳かき音(ボイスなし)」のヘッダ画像です。

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 いまこのシンプルな絵を見て、キッズたちは「製作時間10分?」とか思ったでしょうが、実際は、そんなガキどもが恐ろしくて泣き出すほどの工程と時間がかかっています。しかも、これまでnoteで描いてきたヘッダ画像のうちでは、まだぜんぜん製作時間が短いほうです。我ながら「怖い」と思います。

 では、戦慄の作画工程をつまびらかに説明していきましょう。


工程① 構図を考えつつ下書きする

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画材:コクヨA4コピー用紙、シャープペンシル 0.5
 場合によってはここで3時間ぐらいかけてしまうことがありますが、この絵に限っては、まあ15分ぐらいで構図が決まりました。
 左側のPCは、「ゲーム実況」について2009年に金田淳子が書いた文章のヘッダ画像(の線画をコピーしたもの)から、PCの部分だけアナログで切り取って、置いてみています(アナログならではのK.U.F.U.その1)。折り目で長方形を作ってあるのは、絵がこれぐらいに収まるようにという目安です(アナログならではのK.U.F.U.その2)。

工程② 下書きを描きなおす

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 ①の構図をもう少しきれいに下書きします。この時、右側のねこのポーズについて、もっとリラックスしているべきだなと思ったので、描きなおしています。
 左側のPCの絵は、①で置いていた紙を下に入れて、透けて見える線をなぞっています(アナログならではのK.U.F.U.その3)。
 


工程③ 下書きをさらに描きなおす

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 ②でねこのポーズを変えましたが、数日後に見たら、最初のほうがいいと感じたので、消しゴムで消して、もとのポーズに描きなおしました。すでにお気づきかと思いますが、「アナログならではのK.U.F.U.」などと言いつつも、デジタルだったら一瞬で解決する工程がやたら多いです。

工程④ ペンで下書きをなぞる

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画材:ボールペン SARASA 0.5
 最難関の工程。いつも何箇所もミスしたり、線画で見て初めてバランスが悪いと分かったりして、ホワイトで修正して白黒コピーを取ります。ひどいときは10回以上、修正&コピーを繰り返します。(なぜわざわざコピーを取るかというと、ホワイトを塗った状態の下絵だと、着彩できないからです。)
 今回は、簡単めの絵だったこともあり、奇跡的にミスが0箇所でした。おそらく半年ぶりぐらいの快挙です。
 ちなみに、私はかつて長い間、ピグマのミリペンで線画を描いていましたが、ミリペンだとインクが薄味であるため、スキャンや印刷に線が反映されないことがありました。その後、最近のボールペンは機能がすさまじく進化しているという耳寄り情報を「お気に入りボールペン総選挙(OKB)」をきっかけに知りました。いろいろと試した結果、現在では、描き味がなめらかで、インクが濃く、すぐ乾くという理由でSARASAを愛用しています。


工程⑤ 線画を何枚かコピーする

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コピー機材:CANON複合機 PIXUS TS5030 (かつて貴族様が、「Amazon欲しいものリスト」から贈って下さったものです。ありがとうございます。)
 納得のいく線画ができたら、3枚ほど白黒コピーします。基本的には着彩をミスったときの予備用ですが、①で使っているPCの絵のように、後で再利用する機会があるかもしれないからです。

工程⑥ ためし着彩

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画材:トンボ色鉛筆(長年使っているので、トンボの製品ではない、謎の色鉛筆も混ざっています。)
 絵の上にもう一枚コピー紙を重ねて、線画を透かしながら、おおまかに色を塗ってみます。なぜこんな工程が必要なのかというと、私は色彩センスが0なので、いきなり色を塗ってしまうと、9割方、おかしな色合いになるからです(アナログならではのK.U.F.U.その4、なおデジタルなら略)。
 この時は幸い、ねこの色がもともとオレンジに決まっていたのもあり、一発で「これでいいや」と思う色彩設計ができました。いつもこんな感じならいいのですが、納得がいかず、5~6回、塗りなおすこともあります。

工程⑦ コピーした線画の細かい部分に絵を入れる

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画材:ボールペン HI-TEC-C 0.25
 ここで下絵のPC画面に、ねこの絵を描きます。なぜ最初から描かなかったのかというと、PCの絵だけをアナログで使いまわしたいときに、画面には別の絵を入れる必要があるかもしれないからです(アナログならではのK.U.F.U.その5、なおデジタルなら略)。
 PC画面の絵は細い線で描きたいので、ボールペン業界再細と思われる、みんな大好きHI-TEC-Cの0.25を使っています。

工程⑧ 線画を手直しする

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 題字の「孤独の」を白抜きにする予定なので、枠線は囲ったほうがいいかな?と浅知恵を働かせ、SARASAでなぞっています。



工程⑨ 色塗り

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 トンボ色鉛筆(※トンボじゃない製品も混ざっている)を使って、色彩設計したとおりに塗っていきます。ほとんど失敗がないのと、見た目がどんどん鮮やかになるので、この工程が一番好きです。
 アナログだと、普通は色の薄いところから塗っていくのかもしれませんが、この時は、右手(利き手)の指で汚してしまうのを避けるために、左側から塗っています(アナログならではのK.U.F.U.その6)。

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 着彩完成!

工程⑩ ミスを直す

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 工程⑧が裏目に出て、「孤独の」という題字が浮いてしまっていることにここで気づきます。工程⑤で作った線画コピーがさっそく活躍! 「孤独の」部分を切り抜いて貼り付けます。このままだとスキャンしたときに影ができてしまいますが、この絵では、背景が白いのでデジタルで簡単に修復可能です。(もし背景に色を塗ってしまっていたら、最悪の場合、最初から色塗りをやり直しです。)

工程⑪ 絵をスキャンする

スキャン機材:CANON複合機 PIXUS TS5030 (むちゃくちゃ使っております)
 私が描く絵は、「写真」モードだと解像度があがりすぎて雑なところが目立って汚く見えることが多いので、「文章」モードでスキャンしています。

工程⑫ スキャンした絵を調整

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 この工程だけがデジタルです。ちょうどいい大きさに絵をカットした後、「孤独の」の周りにできてしまった影を、ペイントツールの「白」で塗りつぶします。

工程⑬ 完成ッッ

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 この時点でやっと、「吹き出しの内側に塗ったスミレ色が、薄すぎて、スキャンに全く反映されていない」ことと、「『R』の右半分に塗った紫色が濃すぎる」ことに気づきましたが、もうゴールしていいよねと思いました。刃牙さん!! 完成です!!

 私のアナログ人生、いかがでしたか。ちなみに、全体で制作時間は2時間ぐらいかなと思います。これは私が描いてきたヘッダ類の中では最速の部類で、刃牙さんの絵など私にとって難しめの主題になると、最大で20時間ぐらいかかっていると思います。く、狂ってる…。
 アナログで絵を描くのはそれなりに楽しいのですが、たとえば「この絵をちょっと上に移動させたい」など、デジタルだと一瞬で終わることが、アナログだと描きなおしになってしまうのが、本当につらいです。今回の工程でも、刃牙さんやデジタルキッズから見ると、「うそ……」「ふぇぇ……」と心配で泣いてしまう箇所が、多々あったと思います。それは私もうすうす気づいてるのですが、初老の能力でもデジタルに移行できるのか?描き慣れるまでに寿命が尽きるのでは?という疑心暗鬼もあり、踏ん切りがつかない感じです。

 アナログ作画の道は険しく、デジタル作画への道はさらに険しい。刃牙さん、私のために泣かないでくれ。千の風になって、さりげなく「ほしいものリスト」を貼っておきます。

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(おわり)

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(刃牙の感想記事、その26を更新していますッッ) ※無料記事



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