20 中沢厚子 ☆ いつかある日

【MY FAVORITE SONGS 20(私は音楽でできている)】 
 
 軽登山愛好会という、いかにも気軽に山歩きを楽しむ中高年が好むようなサークルに、学生時代所属していました。(笑) しかし、その愛好会はかつて何らかの理由でワンゲル部から分離したらしく、日常的にハードな練習をしている部員もいました。昼休みや放課後に、キスリング(横長の黄土色のザック)に砂を20~30㎏詰めて階段の上り下りや砂浜を駆けているまじめな学生もいたのです。ぐうたらな私は1度も参加したことがありませんでした。つまり、全く怠け者のヘボ部員だったのです。

 そういう私が、なんで登山を始めようと思ったかというと、本屋で「山と渓谷」という雑誌が目に入り、その“単独行”という特集が気になって、買ってしまったからです。その頃、卒業してもあまり働きたくなくて、サラリーマンになるのはしょうがないとしても、どこかで1人でもできること、自分を保つ趣味や活動を持っておいた方がよさそうだと、ない頭で考えていました。もっとさかのぼると、すでに社会人になった同じ年の女の子から下に見られて、落ち込んだりしたことも影響していると思います。(苦笑)

 「いつかある日」は、いま聞くと、つくづく暗い曲だなと感じるのですが、当時はそんな受けとめ方はしませんでした。作詞は深田久彌という著名な登山家で小説家(『日本百名山』の著者)ですが、そういう文化というか時代だったのかもしれません。

 登山は、どうしても危険が伴いますから、多い少ないはあってもどこかで“死”は意識せざるをえません。実際高校時代の友人は、関東で本格的な山岳部で活動し、冬山で友人を失い、自身も足の指を失いました。

 そういう文化や時代の背景もあったからなのか、山に行ってもみんなで「いつかある日」を歌っていましたし、街で飲んでも、うちで風呂に入っていても、歌っていました。ときに涙を浮かべながら、歌っていました。昭和は、感情が過剰でメランコリックな時代だったのかもしれません。

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