「これだから○○は～」の話

右翼のクソみたいな意見とか、左翼のクソみたいな意見とか、フェミのクソみたいな意見とか、痴漢擁護のクソ意見とか、いや最後のは本当にクソなんだけど、アンチがＲＴしてるのしか見たことないごく少数派のクソ意見ってのが、その界隈の一般論として批判されてるっていうの多くないですか。

すごく単純化すると「これだから○○は～」と言っちゃう現象。

右翼の一人の不勉強なツイート、左翼の一人の突拍子もない提案、フェミニストの差別的な意見、セクハラ野郎のセクハラツイート、そういうクソを引用して、「右翼は馬鹿ばっかり」「左翼は何も考えてないんだな」「フェミこそ差別してるんじゃないですか？」「これだから男ってホント無理」的なやつ。その意見がその界隈で多数派かどうかなんて測定していないくせに「これだら○○は～」と言ってしまう現象がある。

別に政治・思想的な話じゃなくて、普通にオタク界隈でもある。「これだから○○勢は～」とか「これだから○○推しは～」みたいな。民度が低いとかいう表現もあったりする。いや、民度とか言う言葉をそういう意味で普通に使うのはちょっとヤバいと思うんだけど。

僕はよくこれをやるし、やられる。でも、これ良くないと思うから、やってる時の自分の気持ちとやられるときの自分の気持ちを整理する。

「これだから○○は～」をやってる時の僕

ちょっと嫌いな界隈がある。言う（という行為が伴うリスクを考えてもなお表明した方がいいという）ほどの嫌悪感はないけど、ちょっと嫌いな界隈。例えば嫌いな人がそのジャンルにはまってるとか、あるいは好きだった人がジャンル移行でそっちにいってしまって寂しいとか。政治的には左翼だか右翼だかフェミだかアンチフェミだかのそういう界隈。ぼんやりとした嫌悪感、言語化したら「それは嫌ってる方の責任ですよ」みたいになるやつ。

そんな嫌いな界隈の中のクソみたいな意見が、自分と同じように不快感を感じている人（その界隈のアンチ）によって引用RTされて「これってどうなの？」的な意見が添えられてるツイート。そんなのがフォロワーからRTされてくる。アンチのツイートにはいいねがたくさんついて、リプツリーでは「ほんとですよね」「○○最低ですね」的な意見が多くくっついている。何より、そのツイートが僕のとこにたどり着くのは信用できるフォロワーから回ってきたからなのだ。同じように自分の嫌いな界隈を嫌いな人がいる！！

僕は仲間がいたことの安心感を普段は使っていない正義感に着せ替えて、満を持して公式RTしながら「これはちょっとないよね…」みたいな若干のdis表現をする。（引用RTとかだと相手に通知がいってしまうので公式RTした後のツイート。チキンだから反論されたら怖い。）あるいは、公式RTしてそれで終わる。（RTしたのが誰かなんてちっちゃく表示されるだけだし、改めて意見言うよりリスク低い）

完璧だ…！やる側としては完璧なストレス解消だ。

まず、非があるのは明らかにクソ意見の主である！
次に、そのクソ意見をその界隈の問題だとすり替えたのは一人のアンチだ！
僕は出そろった答えに対して「いいですね」「悪いですね」の感想をいうだけ。なんなら言わなくたっていい。

誰かの悪事に便乗するほどリスクが低いストレス解消はない。悪事を働いたのはクソ意見の主であり、それを恣意的に解釈して注目を浴びているのはアンチの人なのだ。僕じゃない。特にSNSのRT的な共有機能は、悪びれもなくこういったことができる。

「これだから○○は～」をやられてる時の僕

でもこれされるとすごい腹立つ。知らん人の特殊意見でこっちの界隈すべてを悪く言われても知らんし！？！？！？それで勝ったの顔されるの腹立つ～～～自分たちの界隈はそんなに頭よくて平和なんですか～～～！？！？！？

自分たちが匿名の顔のない人かのようにこちらを批判してるのが腹立つ。自分たちのジャンルは大丈夫？自分たちの界隈の人たちは？そういうの全く見てないだろ。探したら出てくるぞそんなもん。当たり前だよ変な人ってのはどのジャンル、どこの界隈にもいるんだからな！！それなのになんで僕の界隈だけが責められる？標的になってあら捜しされたからだよね？ぶっちゃけただのイジメじゃね？

批判されている界隈に名前はあるが、批判している界隈に名前はない。

あってもアンチ○○とつくくらいだが、実際はいろいろなジャンルのいろいろな人が「こいつぁしめた！」とストレス解消に乗っかってくるので、不特定多数過ぎる。

あと、クソ意見はクソなのでどうやったって擁護できないし、かといってそもそもクソ意見を引っ張ってきて界隈全体を批判するやつらが気に食わんから「これはクソですね」とかいってそいつらと同じ論調にもなりたくないというか、奴らを強化したくない絶対に…って思ってしまい下手に動けない。

加えて、「その意見は確かにクソですが、このジャンルの皆さんがそう思ってるわけではありませんよ」的な正論の全く響いてない感がすごいのであまりできない。絶対聞いてないでしょ。わかるよ。逆の立場だと僕は「まあ確かにそうかもしれないけど、実際に目についたし」って感覚だ。想像上のジャンル内の多数の善良な人々よりも目の前に現れたクソ意見に目を奪われてしまう。これが人間なのだ。

僕の場合こういう時は席を外す。もうツイッターを見ない。もうあんたなんか知らない！！！馬鹿！！！！それと、RTしてきたフォロワーもちゃんと確認する。お前だな、お前……。覚えたぞ…！！

こういう時のうまい切り返しがあったら教えてほしい。正論を教えてくれと言ってるんではなくて（だって正論はあんまり響かないし）、理不尽なこの仕打ちをなくすような有効な言論武器がほしい。

「これだから○○は～」は結局何なのか？

嫌悪感を解消するためだけの、何も考えていない時の意見。少なくとも僕の場合はそうだ。

何かをよくしようと考えているわけではない。何かを解決するために言ってるんではない。ほかの界隈への評判をよくするための躾でもない。

ちゃんと考えようとしたら、考える前にその意見が界隈を語るに妥当なものかどうかをちゃんと検討する。例えばそもそもその意見の人は界隈の人か？とかその意見は多数派なのか？とかね。何かを解決するためならば、現実的にどういう対応が可能かどうか検討できるから、界隈への批判にならない。界隈への躾だ？自浄効果だ？そういうのはちゃんと目的をもった組織（会社とか）ではできるだろうけど、同じ趣味や思想をもったってだけの人たちの集まりである界隈に、そんなことできるわけなくない？

とはいえ…「これからは絶対に『これだから○○は～』を言わない！RTもしない！」とは言いきれない。だって自分の理不尽な嫌悪感をケアできる割にはリスク超低いしこのやり口は本当に便利なんだ…。でも、言ったら相手が苦しい思いをすることと、その中身が空っぽだということは知ってないといけない。