(G)I-DLE 「I MADE」、「Uh-Oh」感想。
この先は特に注釈がない場合は、全てソヨン作である。
セカンドミニアルバム「I MADE」がリリースされたのは、2019年2月である。
「Senorita」
この曲はミニアルバムのタイトル曲である。
僕はかなりな意欲作だと思っている。
Senoritaとは、スペイン語では「お嬢さん」という意味であって、タイトル通りスペイン風味が強い。艶っぽいトランペットは、スペインの奏者に吹いてもらったそうだしブラスアレンジやカスタネットの「タラララッ」とかもそうだ。男声のSenoritaコーラスもかなり本格的だ。
でもそこでやりすぎてフラメンコになってしまわぬよう、フラメンコギターや高速裏打ち手拍子足踏みを入れなかった。
場合によっては何を足すかより、何を入れないかという判断が重要ではないかと思う。この曲はそのあたりの塩梅が絶妙である。
ラテンになり過ぎないように細心の注意を払っている。
あくまでもこの曲は「情熱的な若い女性の求愛や心情の歌」であって、スペイン色はその比喩表現にほかならず、決してその逆、つまり「フラメンコ的なアイドルソングを出そう、だから歌詞の内容もそれっぽくした」ではない。
「What's Your Name」
レゲトンっぽいEDMに感じるのだが、実に渋い。
「Put It Straight」
ダークで耽美的な作品。前述のミヨン、ミンニ、スジンの耽美トリオが劇的に歌い上げ、素晴らしいメロディは一度聞くと忘れられない。
この歌はおそらくどんなアレンジでも成立すると思う。
「Give Me Your」
少し割れたアップライトピアノの音の、印象的なイントロ。なぜかパリの街角が目に浮かぶ。
スイングする音と、息の多いヴォーカル、途中で入るトランジスタラジオ越しに聞こえる歌声。フランス映画っぽい。
「Blow Your Mind」
(G)I-DLEにおける、初めてのミンニ作詞作曲編曲。
彼女がピアノを弾くのを知ってるせいか、何となく器楽的に聴こえる。
あれだろうか、印象的なエフェクトのかかった「You You You You woo woo oh」の部分もミンニが作ったんだろうか。
途中で、のちにミヨンが歌うミンニ印となる夢美しいメロディが出てくるのが好き。
このミニアルバムを個性的にしめる曲。
「Senorita」が外国ではのiTunesチャートでは1位だったのに韓国では10位という結果であり、ミニアルバム「I MADE」もそれに類する順位だった。
その後日本デビューミニアルバム「LATATA」をはさんで出したのが、「Uh-Oh」であった。
この曲はHIPHOPの一ジャンル、ブーンバップとの事で、あまり詳しくないが、東海岸のウータン・クランとかそういう感じもある気がする。
本格HIPHOP曲だが、下降するメロディとコード、ストリングスが悲しみを溢れさせ、サビに現れるブルーノート(ミ♭、ソ♭、シ♭)がブラックミュージック的憂鬱感をたたえる。
大人っぽく構えた感じではなく、今、心のかさぶたが剥げたばかりのような、血のにじむ鮮烈な悲しさに満たされた曲。
この曲を聴いたら頭の中にぐるぐる回りだして止まらなくなってしまった。
だが、なぜかこの曲はチャート的に大コケにコケてしまう。
歌詞の内容は「売れたからと言って急に親しかった振りをしたり、売れることはわかっていたとのたまう嘘つき達を拒否する」あっちいけソングであり、これを怒りではなく悲しみで表現したところが上質なのだが。
ソヨンがバラエティ番組「知ってるお兄さん」で、「曲が売れなかった時は、気まずくて会社に行けなかった」と言ってたのは、多分この時ではないかと思う。
HIPHOP好きのソヨンが結構本気出して、HIPHOPマナーとしてその時の正直な気持ちをラップする(歌う)というやり方でこの結果は、かなり打ちのめされたのではないか。
しかも内容が「売れたら急にすり寄ってくるウザイ奴ら」という歌で、売れなかったから「調子乗ってたんじゃねーの」とみんなに言われた気がして、「ダサっ」「恥ずっ」とヘコんだのじゃないかと妄想する。
もっと妄想すると、会社から「あれだけ大口叩くからやらせてみればこの結果かよ。素人の小娘に任せるんじゃなかった」と白い目で見られてるように感じて、頭を抱えていたんじゃないかと、韓国ドラマ観すぎな事を考えしまう。
もちろん僕のイタイ白昼夢である。
そこで我らがソヨンは、思い切った方向に舵を切った。
〈つづく〉
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