見出し画像

OSJ KAMI 100メモ

かろうじて完走できたので偉そうなこと書きます。

兵庫県で開催されたkami100というレースに参加してきました。1周37キロの山岳コースを3周する周回レース。制限時間は25時間。いつもなら帰りの電車か宿で、その日のうちに振り返りのメモを書いているんだけど、今回は帰りの電車が混んでいて座れなくて、半分気を失いながら帰ってきたので今になって思い出しながら書いています。

レースを終えて3日が経ち、今率直に思うことは「もう一度行きたい」という気持ちです。kami100よかった。本当にいいレースでした。

kami100に出てきました

始めて参加するレース、しかも関西での開催ということで、なにからなにまで新鮮だった。まず運営とボランティア、参加者が、当たり前だけどみんな関西弁だったこと。

そんなのレースに関係ないだろう、と思うかもしれない。しかし、今回のレースは一人で参加したにもかかわらず、いつも以上にたくさんの人と話をした気がするのだ。エイドでも本部でも駐車場でも、とにかくみんなフレンドリーに会話している。

「どうです?次いけそう?」
「軽やかやなー、まだまだやね」
「これ食べて食べて」

参加ランナー300人強というそれほど大規模な大会ではないのに、レース中はほとんど一人になることがなかった。走っていると誰かが寄ってきて会話が始まるのだ。

「どっから来たんです?神奈川?まじで?」

それでいつのまにか2人、3人のパックができていて、しばらく引っ張ったり引っ張られたりしながら進んでいく。中には夜中に大声で歌を歌っている人もいた。山の中でそれを聴いて、妙におかしくて一緒にいた人とずっと笑っていた。

これが関西ノリなのか、今回の出場者がたまたま明るい人たちだったのかはわからないが、個人的にすごく好きな雰囲気だった。

大会前の練習について

今回はこのレースのために、日々の10キロ~15キロのだらだらしたランをやめ、短時間で負荷の高い練習を目指した。

このレースのためというか、なんとなく自分の体がそういう雰囲気だったんだと思う。春に出たUTMF以降、たまに腰痛が再発したりしてなんとなく疲労が蓄積されていたように思うし、いろいろあって自由にできる時間も少なかった。こういうときに気の抜けた練習を続けるとケガしそうだなと思った。

練習に取り入れたのは主に

・ビーチラン
・階段上り下り
・筋トレ

ビーチランによって体幹が鍛えられたのと、たぶんこのおかげで体重が3キロほど減った。あとは足を上げる走り方が身に付いたのではと思う。ビーチランは週に5日、5~15キロくらいを夏から続けた。

ロングのトレイルでは疲れてくると足が上がらなくなり、特に夜に石を踏み間違えたり木の根っこに引っかかったりして転ぶことが増える。何年か前の信越五岳ではまさにそれで転んで、足をひねってリタイヤした。ビーチランは短時間で高負荷の練習ができて、しかもケガをしにくい走り方が身に着くと思う。

階段の上り下りは会社から帰る途中に、公園に寄って筋トレと並行してやった。毎晩のように同じ階段を亡霊のように上り下りしていたので、「公園にお化けが出る」とでも噂されていたかもしれない。そうだとしたら悪いことをしたと思う。それ僕です。

筋トレは主にブルガリアンスクワットと懸垂をした。あと腹筋背筋と、家でのストレッチ。筋トレは慣れてくると同じ回数こなしても効き目が薄れていくので、徐々に回数を増やしていった。結果的にやりすぎて肩の周りに筋肉が付いてレザーのジャケットがきつくて着れなくなった。今年の冬に着る服がない。

レース当日

レース会場である香美町というのは兵庫県でも日本海側にあって、僕の住んでいる神奈川県からはとにかく行きにくい。じゃあなんでそんなレースに申し込んだかというと、何年か前に友だちがその近くに移住したからだ。友だちに会いに行くついでにレースにも出ようか、そのくらいの気持ちで申し込んだ。

レースの前日に友だちの家に泊めてもらい、銭湯に行って一緒にノンアルコールビールを飲んだ。飼ってる犬とも遊んだし幸せな気分でぐっすり寝かしてもらった。これだけでほぼ目的達成である。これから24時間くらい走るのかと思うと憂鬱にすらなる。

翌日は朝6時ごろ友人宅を出て7時ごろに会場着。まだ人もまだまばらで駐車場もいいところを確保できた。周回レースでは毎回着替えたり補給を取ったりを自分の車かテントで行うため、車を停めておく位置はわりと重要なのだ。

スタート直前まで本気で土砂降りだったのだけれど、スタート時点では小雨になっていた。気温は思った以上に低い。朝9時のスタート時で、たぶん10度くらいだったんじゃないか。体を動かしていないと足から冷えてくるので、ロングタイツとレインウェアを着た状態でスタートした。防水のグローブはワークマンで買ったやつ。

冷たい雨の中スタート。

コースは前半に1回、後半に1回、それぞれ山のピークを目指す。その二つの山を林道がつなぐレイアウト。koumiに似てるかもなと思っていたのだけれど、走ってみたらコースの雰囲気は信越五岳に近かった。信越五岳の走れるパートを凝縮した感じ。

今回よかったのがシューズの選択。ナイキのペガサストレイルとホカのスピードゴートを持って行ったのだけれど、スタート前からずっと雨で、レース中も雨予報だったのでゴアテックスでミッドカットのスピードゴートでスタートした。

結果的にこれがよかった。いくらゴアテックスでも深い沼みたいなところに入るともはや関係ないのだけれど、ミッドカットだとずいぶん違う。あまりレースでミッドカットのシューズを履いている人を見かけないのだけれど、僕はこれからも天気が悪いときには積極的に履くと思う。足首までしっかり締めることで、泥の入りを最小限に抑えてくれた。

今回は始めてのコースに試走ナシで来ているので、1周目で全体を把握する必要があった。途中で並んだ岡山の女性ランナーとしばらく一緒に走った。彼女は何度か試走しているとのことで「もうすぐ登りが終わりますよ」「下り滑りそうですね」とか教えてくれて、これが最後まで印象に残ってかなり助かった。

1つ目の山はゲレンデ直登と急峻な岩肌を含むシングルトラック、そのあと雨で泥沼と化した下りが続く。走れる場所と抜く場所とが明確で、走れる場所は気持ちよくスピードが出せる道が多かった。なんとなく鎌倉アルプスと雰囲気が似ている。

急峻な登りを経て最初のピークを目指す。

今回は努めてきつい登りが終わるたびに頭をリセットするようにした。きつかった記憶をいったん忘れて(たいしたことなかったな)という記憶で上書きするのだ。

ほんとかよと思うかもしれないが、周回コースだと特にこれは大切で、さっきたいしたことなかったんだから次も大丈夫だろう、と次の周回に恐れずに向かっていけるようになる。

こんな風に、ロングトレイルでは精神面が結果に大きく影響する。心拍の管理や栄養補給のペース、ウェアリングなんかももちろん大切だけれど、長くなればなるほど精神的な出来が割合を占めてくる。冷静に現状を把握できているか、集中できているか、悲観的になっていないか。諦めたくなったりネガティブに落ちたりしそうになったら、速めに糖分かカフェインを摂取するといいと思う。

途中の林道もかなり走れる。逆に言うと、このレースでは走れるところで走っておかないと、2周目終わりの関門突破が厳しくなる。実際そういう人が多かったようだ。

2周目の途中から土砂降りになり、日も暮れて気温がぐっと下がった。レインの下にモンベルの薄手の長袖を追加で着て、ストックを持ってとにかく派手に体を動かすことで体温を維持することに集中した。その分カロリーもいつもの1.5倍くらいを想像しながら補給していく。食べたものは主に柿の種と羊羹、クエン酸の飴、水分はポカリ。

後半の山はだらだらと続くつづら折りをひたすら登っていく。走ろうと思えば走れる、くらいの斜度なのでここもやっかい。判断してこまめにギアチェンジする必要がある。

3周目の瀞川山山頂。

2周目までは雨と霧とで視界は真っ白だったが、3周目で雨が止み、日が昇ってきたレース終盤で、実はすごく景色のいいコースだったことを知る。ちょうど紅葉シーズンでもあり晴れたら最高だと思う(第一回大会だった去年は晴れたらしい)。

晴れたら最高だと思います。

3周目の途中で眠さで2度ほど意識を失った。林道で歩きながら寝てしまい、浅い側溝に片足だけ落ちて起きた。よくケガしなかったなと思う。ぞっとしてすっかり目が覚め、それから先は眠さについてはとくにつらいことはなかった。

関門は2か所。2周目を終えたあとのスタート地点と、3周目の中間にあるエイド。最初の関門では2時間ほど余裕があったはずなのに、二つ目の関門では1時間しか余裕がなかった。自分なりに頑張って走るところは走ったつもりだったのだけれど、こんなに関門に追いかけられたレースは信越五岳以来である。もっとスピードを身につけないといけないのだろう。

最後の3キロくらいは最初に登ったゲレンデを直降下するのだけれど、ここで残りの足を全部使い切ると気持ちよくゴールに転がり込めると思う。前モモが崩壊するので、翌日から3日間くらい筋肉痛決定である。

レースを終えて

レースを終えて、むしろレースよりもきつかったのが家までの道のりだった。

ゴールしたあとテントで配られていた牛丼をもらい(美味しかったなこれ)、駐車場で2時間ほど寝た。1時間だったかも。実際寝られたかどうかもよくわからないのだが、座席を倒してダウンにくるまり、なんとなく朦朧としていた。

2周目を終えるとおでんがもらえる。
そして3周終えてゴールすると牛丼が。最高にうまい。

そのあと3時間半かけて京都までレンタカーを運転して、京都から新幹線に乗るのだけれど、紅葉シーズンの旅行割期間であることをすっかり忘れていた。ちょうど日曜の夕方である。この先2時間くらいどの車両も満席だった。奇跡を信じて自由席に乗ったのだが奇跡なんて起きるはずもなく、通路で立って新横浜まで耐えた。そこから先の記憶がほとんどない。

切符売り場の列を見た瞬間、これはダメだと思った。

タイムと内容を振り返ると、今回のレースは「かろうじて完走だけはした」くらいの評価である。特に自慢できる点も納得できる走りもなかった。

でもいまレースを終えて3日が経って、最初にも書いたが、またあの場所に帰りたいと思っている。時間が経って思い出が美化されているだけなのかもしれないけれど、そのくらい僕にとって印象的なレース体験だったのだ。

12月の伊豆のレースが抽選ではずれたので、今年のトレイルのレースはこれでおしまいである。

春のUTMF、秋のバーチャルレース、そして今回のkami100。どれもよかった。パンデミックを経て、レースにエントリーすることがちょっと億劫になっていた時期もあったけれど、やっぱり日常から離れて自分の力を全部出し切ることができるレースは貴重だなと思いました。また練習します。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?