今年度、なにを読みましょうか
毎年この時期は本当に忙しいですし、今年度はもはや訳が分からないレベルの忙しさなのですが、同時にこの時期はとても楽しく、心躍ります。
それは、修士向けと学部生向けの文献購読ゼミでの購読候補図書を私のほうであれこれと選び、学生さんに提案する時期だからです。大体いつも前年度末から次年度の本の選定をはじめていますが、授業開始直前のこの時期になると、気づくといつも「今年度はみんなでなにを読もうか…」と考え込んでいます。
今年は私が3月にオーストラリアから引き揚げてきたのもあり、日本に持ち帰る蔵書をチェックしながら、4月以降の文献購読ゼミの構想を練っていました。
学部生のゼミは基本的に、2年生の時に私が担当する「ヨーロッパの国際関係」と「ヨーロッパ政治」の両方を履修した人を対象としているため、基礎知識があることを前提に文献を選びます。
しかし大学院修士向けの文献購読授業「ヨーロッパ国際関係論」の場合は、国際政治学を学部からじっくりやりこんで、大変しっかりした知識と自らの研究計画をもっている人と、学部時代には全く別の分野を研究していたので国際政治学にはなじみがない…という人が同時に文献購読ゼミを履修してくれるのが通常です。
このため、どんなバックグラウンドの人にも履修してもらえるよう、文献の選定には注意を払っています。
最終的には、初回の授業で履修者と話し合って決めています。
とりわけ院の文献購読ゼミはほぼ1年間あるので、相当の冊数を選びます。毎年、文献決めを終わった履修者の皆さんの顔を見ると、「こんなに読むのか・・・」と心なしかげっそりしているのが気になるのですが(⁉)、年度が終われば読書→報告→議論をしっかり1年間繰り返した達成感を味わってもらえている…と(勝手に)思っています。
今年度の購読候補の一部(あくまで一部)を、ゼミで使う演習室のデスクに並べてみました。
本数冊毎に微妙に隙間が空いているのは、一応ジャンル毎に分けていることを意味します。向かって右からざっくりと
・「国際政治理論の書籍としては押しも押されもしない古典だが、学生さんが一人で読破するのはハードルが高いので、この際授業で皆一緒に頑張って読みましょう」というもの
(それじゃなぜスティーブン・ウォルトの『同盟の起源 国際政治における脅威への均衡』ミネルヴァ書房、2021年がないのだ!と思われるかも知れませんが、ウォルトは昨年度から履修してくれている学生さんが他のゼミで相当しっかり読み込んだらしく・・・)
・第一次世界大戦関連(第二次世界大戦関連はまだ検討中)
・冷戦史関連
・昨年度からの継続履修の学生さんの関心にあいそうなもの
・話題の書、研究を進める上で新しい視点を提供してくれそうなもの
でグループ分けしていまして、この各グループからバランス良く読んでいきたいと思っています。
しかし、最近ある先生から
「今年のゼミは、赤木 完爾・国際安全保障学会編著『国際安全保障がわかるブックガイド』(慶應義塾大学出版会、2024年)のなかから各自好きな本を選んで発表させる」というアイディアを伺いました。
それもとても面白そうで、マネしたい誘惑に駆られています。
また、写真に映り切らなかったけれども(自宅に置いてきてしまったものや、新年度になってすぐ発注したけれど写真撮影当時はまだ届いていなかったもの)、今年度扱いたい重要候補文献は以下の通りです。
E・H・カー『歴史とは何か 新版』岩波書店、2022年
多湖淳『国際関係論』勁草書房、2024年
筒井 清輝 『人権と国家 : 理念の力と国際政治の現実』岩波書店、2022年
ティム・ワイナー『米露諜報秘録1945-2020 冷戦からプーチンの謀略まで』白水社、2022年
クライブ・ハミルトン『目に見えぬ侵略 : 中国のオーストラリア支配計画』、飛鳥新社、2020年(←「ヨーロッパ国際関係論のゼミで?」と思われるかも知れませんし、同書出版当初以降変化した部分もあるのですが、今読んでも示唆に富んでいます)
小林義久『国連安保理とウクライナ侵攻』 筑摩書房、2022年
増田肇『人びとのなかの冷戦世界』岩波書店、2021年
・・・候補はまだまだあるのですがこの辺りで。
もちろん、すべて購入して頂くと学生さんが破産してしまいかねませんので、彼らの意欲と研究分野、そして懐具合とよくよく相談しながら決めて行きたいと思います。
こうやって学生さんと読む本を選んでいく時間はなかなか幸せなものでして、ちびまる子ちゃんの野口さんよろしく「クックック・・・」と笑いながら選定しております・・・
(余談ですが、私はちびまる子ちゃんの登場キャラでは野口さんが一番好きなのですが、「クックックッ」にちなんでお誕生日まで9月9日に設定されているとは知りませんでした。芸の細かさに感動しています)
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