映画『オッペンハイマー』
を観てきました。
画面に釘付けになっているうちに気づけば3時間経過してしまいましたが、とてもこの映画を自分が消化できたとは思えず、おそらく上映期間中にまた何度か映画館に足を運ぶことになるだろうと思います。
そのような未消化の状態でなにかを語らないほうがいいのかもしれない、という気持ちもありつつ、それでも今日の印象をなにかしら書き残しておきたい、と思ってnoteを開いてしまいました。
これからご覧になる方は、ネタバレになってしまうといけませんので、以下はお読みにならない方がいいかもしれません。
今回強い印象を残したのは、作品の中盤でオッペンハイマーの妻キティ・オッペンハイマーが「罪を犯しておいて、その結果に同情しろとでも?」と夫に言い放つシーンでした。
このときオッペンハイマーは原爆とは全く「別」の問題で苦しんでいたのですが、キティのこの言葉はその後、オッペンハイマーが原爆開発者として苦悩する映画後半でも再び突きつけられます。この映画全体を貫く重要な台詞ではないかと考えました。なお、劇中ではあまり強調されませんが、キティも夫同様に科学者(生物学者・植物学者)です。
この映画を観る前に読んだこの記事では、この映画における女性の描き方を「一方的」とした評者の方もおいでだったのですが、私自身はむしろキティの放った言葉はこの映画の核心部分に近いのではないかと思っています。
ところで、私はもうすっかり2回目を観に行くつもりなのですが、やはりこの映画は予習をすればするほど深く理解でき、鑑賞後の思索も深まるように思います。
私は残念ながら、今回は予習なしで観に行ってしまいましたが、これからご覧になる方は例えば以下の本などを読んでいかれるとよさそうです。
私は劇場を出てすぐ買いました。
カイ・バード、マーティン J シャーウィン 『オッペンハイマー(上)異才』 早川書房、2024年
『オッペンハイマー(中)原爆』
『オッペンハイマー(下)贖罪』
この三冊、今はセールで少しお安く買えるようです。
ただ、この三冊を読んでから劇場へ・・・となるとなかなかハードルが高そうですので、まずは一度映画を観てしまってもいいかもしれません。
一方こちらは、私は買いそびれてしまって持っていないのですが、古書がとんでもない値段になっています…復刊していただけたら需要は高そうです。
本など読んでいる時間はないのでとにかく観たい、という方は、事前にパンフレットを購入し、上映前に年表と「『オッペンハイマー』の時代背景と用語解説」(解説執筆者はなんと上智大学の前嶋和宏先生)だけでも読んでおかれると、置いてけぼりになりにくいと思います。パンフレットの写真を見出し画像に置いておきました。
…といいますか、英語版で良ければ、すでにアマゾンでブルーレイを買えるのでした。何度も観るならこちらを買うのも一案かも知れません。
原爆開発とその帰結という極めて重いテーマの映画であり、そう気軽にお勧めできるものではありませんし、映画公開にあたっては日本でも厳しい意見があったことは承知しておりますが(原爆の悲惨な被害を正面から取り上げていない、あるいは「戦争終結」という面が過度に強調され、米国人の核兵器に関する考え方を覆すものでは全くない、等の批判については私も同意します)、それでもやはり観て、考えて、語る価値は十分にある映画だと考えました。