見出し画像

武蔵野東学園を守る会ー署名活動趣意書(5)寄附行為の改訂・教育現場の裁量を認めない措置

第3節 当学園の「混合教育」という建学の精神が打ち砕かれるおそれがあること
3.寄附行為の改訂により、松村氏が理事会を思いのままに操れる態勢を整えたこと

(1)  寄附行為の改訂
 松村氏は、令和5年5月末に副理事長に就任し、その後の同年12月25日には、当学園の寄附行為(いわゆる定款)が改訂され(以下「本件改訂」)、理事及び評議員の資格及び構成の要件が大きく変わった。
 理事に係る要件(7条)をみると、各所属校の校長の枠は「4名」とされていたのが「1名以上」へと変更されている。また、学識経験者又は功労者の枠は「4名」あったものが削除され、さらに、「理事長又は副理事長が推薦する者。理事として相応しい者」の枠が新設され、人数の上限なく「1名以上」とされた。
  本件改訂は、少なくとも、次の2つのことを意味する。すなわち、
①    副理事長ないし理事長である松村氏が、理事会を思いのままに操れる態勢を整えたこと
②    「学識経験者又は功労者」の意見を聞く態勢を放棄したこと
である。
 以下、個別に述べる。

(2)  松村氏が理事長として、理事会を思いのままに操れる態勢を整えたこと
 本件改訂により、理事の資格及び構成として、「理事長又は副理事長が推薦する者」を理事に加入できることとされ(7条1項3号)、しかも、その人数も、最大人数7名(6条1項1号)から、7条1項1、2号により選任される理事の最低人数の合計2名を差し引くと、5名まで増やすことができることを意味する。
 これは、松村氏の副理事長就任の時期からすれば、松村氏が、副理事長時代から、また、理事長になった後も、自身の意のままに動かすことができる者を理事に加入させ、もって理事会の多数を掌握し、自らの思いのままに学園の経営を操る態勢を自ら整えようとし、現にこれを整えたものとしか考えられない。
 このことは、今後の学園の経営がすべて松村氏の一存により決められることを意味する。
 すなわち、理事会によるガバナンスが全く効かず、今後仮に松村氏が専横な行動をとった場合、それを食い止める手段がないことを意味する。

(3)  「学識経験者又は功労者」の枠を削除したこと
 本件改訂により、理事の資格及び構成として、「学識経験者又は功労者」の枠が削除された(旧7条1項4号参照)。
これにより、理事会の場で、学識経験者の専門的な知見に基づく意見を反映す る余地がなくなった。
 当学園は、全国で唯一、自閉症児を対象とした混合教育を実施してきたパイオニアであり、当学園の自閉症児は40年以上にわたって、文部省傘下の国立特殊教育総合研究所、その閉室後は、東京大学や東京学芸大学を中心とした研究者による共同研究プロジェクトにより研究を受け、その研究成果のフィードバックを受けてきた経緯がある。
 したがって、当学園の経営事項としては、当然に、自閉症児のより良い教育の仕方というものを専門的な見地から検討した上で、それを反映させる必要があるところ、本件改訂は、その検討に必要な学識経験者等の意見を反映させる余地をなくすものであって、建学の精神に照らしても、また専門的な見地を伴う教育的指導を期待して入学させている保護者の期待に反するという意味でも、著しく不当なものである。

(4) 小括
 本件改訂は、理事の構成を松村氏の自由にさせ、その専横な経営を放任し、理事会によるガバナンスが効く余地をなくすものであり、著しく不当である。
 松村氏は、後述もするとおり、当学園の理事としての資質を欠いており、かかる者の専横を許せば、当学園の建学の精神は瞬く間に崩壊することになりかねない。
 また、本件改訂は、学識経験者等の意見を理事に組み入れる態勢を放棄し、当学園が自閉症児に対する「混合教育」をより良く進める素地をなくすものであり、建学の精神に照らし著しく不当なものである。

4.教育現場の裁量を認めない措置が、教育理念の実現を阻むこと  
(1)  当学園では、教育現場の裁量が尊重されてきたこと
 武蔵野東学園の人事については、寺田理事長が『物語』243〜245頁によれば、優れた先生であるか見抜くことができるのは現場の所属長であるから、理事長には人事権はなく、職員の採用や異動は、各所属長に任されていた。
これは、学園の理事会としては、各自閉症児の特徴等にも配慮が必要な現場の教育者の教育を信頼し、自身らの行う経営とは切り分け、その教育に係る裁量を付与し、もって各教職員の能力を十分に発揮させようとする趣旨によるものと解される。
 しかしながら、以下述べるとおり、今般、松村氏の行った各措置は、本来、理事長に存しないはずの人事権を、形を変えて、辞職させるという強硬的な手段で発動するものにほかならず、現場の教育が萎縮し、その教育効果が十分に発揮しがたい状況に陥らせた。

(2)  東中学校D校長の辞任は、不当な退職勧奨によるものである疑いが強いこと
 松村氏が、B先生たちを辞職させたことについては、既に触れたが、教職員の退職勧奨はそれだけにとどまらない。
① 松村氏の説明に基づく事実関係
 東小学校の保護者説明会における松村氏の説明によれば、東中学校のD校 長は、今後変更が予定されている制服の新しいデザインにつき、在校生に意見を聞かず、自身の周りの一部の教師などに対してだけ、確認を求めたにすぎなかったものの、寺田理事長等に対し、デザインを「みんなで決めた」などと報告した。
 松村氏によれば、その決定方法について、D校長に対し、「じゃあ、あなたは、『みんなに聞いた』っていうことは嘘だな」「あなた、理事長や統括校長に虚偽を報告したんだな 」「そういうのを独裁者って言うんだぞ」「校長先生、そんな人ダメだろうね」などと言い、所属長会議の場でも、その趣旨を寺田理事長に報告したところ、石橋校長等、会議のメンバーは、皆呆れていた。
 D校長は、同会議の場で、かかる責任追及を受け、「責任を取って、ここまで、校長を辞めさせてください」と、校長の職を辞めると申し出た。
 なお、D校長は、上記申出の1週間後、松村氏などに対し、校長は辞めるけど学園には残りたいなどと申し出た。この申し出につき、松村氏は、東小学校の保護者説明会の場で、「こいつはずるいやつ…です。あれだけ啖呵切った、『私はやめます、校長やめます』って言ったら、学校やめるの当たり前じゃないか」などと言った。

② D校長に辞任を勧奨したと考えられること
 松村氏は、所属長会議の場で、D校長に対し、寺田理事長らに虚偽の報告をした件につき、「理事長や統括校長に虚偽を報告したんだな」などと言うとともに、「校長先生、そんな人ダメだろうね」などと糾弾した。
 この「ダメだろうね」発言は、その後にD校長が辞職の申出をしたことに照らしても、辞任の勧奨であったと考えるのが合理的である。
 松村氏も、D校長の辞任の申出の趣旨につき、事後的に、「『校長やめます』って言ったら、学校やめるの当たり前じゃないか」などと発言しており、辞任の勧奨の意図を当初から有していたと考えるのが素直である。

③ 辞任勧奨は著しく不当であること
 松村氏の行った上記辞任勧奨は、D校長の虚偽報告を理由とするものであるところ、その報告というのは、制服のデザインを「みんなで決めた」という漠然とした発言であり、明確な意図の下に虚偽を報告したものと考えるのは早計に過ぎる上、仮に誤りを含む発言であったとしても、それだけで、解職するほどの事由になりえない。
 松村氏が、D校長に対し、上記の虚偽報告を殊更に強調して辞職に追い込んだのは、辞任勧奨として著しく不当であり、不当労働行為に当たり違法である余地もある。
 加藤園長がその会議の場で、D校長に対し、辞めることはないと諫めたというのも、その趣旨と考えられる。
 なお、松村氏自身も、校則緩和の手続に当たって、ダンス部の34名の生徒の意見のみを聞いて、生徒の意見を十分に聞いたなどと主張しているが、その発言の当否にも疑義があり、D校長が「みんなに聞いた」というのと、いかほどの違いがあるのか疑問がある。 

(3) 小括
 以上のとおり、松村氏が、B先生たちだけでなく、D校長についても、(違法な退職勧奨に当たるか否かは措くとしても)辞職させる理由に該当する事実もないのに、あるいは、辞職させるほどの理由もないのに、著しく不当な時期に辞職させたものであって、著しく不当である。
 そして、このように著しく不当な理由及び時期に辞職させたことは、各教育現場の教職員の裁量を認めないものであり、もって、今後の現場の教育者を過度に萎縮させ、思い切った判断に基づく教育を躊躇させ、その教育効果を十分に発揮しがたい事態に陥らせるものである。

(4) その他の措置
① 携帯電話の持ち込みの即時解禁を強行したこと
 松村氏は、東小学校の保護者説明会での説明によれば、東中学校で従来持ち込みを禁止していた携帯電話の持ち込みにつき、登下校時の保護者の不安を理由に、これを即時に解禁する措置を取った。
 この措置は、D校長がその即時解禁に難色を示したものの、石橋統括校長をして指示を出させて、D校長に実施させたものである。
 携帯電話の解禁は、生徒会に当たる友愛会などの場での生徒自身による議論を経たものでもなく、また、多数の保護者に対して意見を聴取した結果決定されたものでもない。携帯電話の学校への持ち込みによる弊害については、一般的にも多く報告されており、「友愛の心」の根底にある「心の教育」の実現を阻害するおそれもある。したがって、単なる保護者の不安のみを理由に直ちに正当化されるものであるのか疑問がある。
 統括校長から指示させる方法でその即時解禁を強行する進め方は、普段から生徒を見ている現場の所属長が自由な意見を言う機会を十分に設けないうちに行うものであって、現場の教職員を信頼してその裁量を認める態度に欠けるものである。

② 東高等専修学校におけるパワハラ防止に向けた措置は、教育裁量を否定するものであること
 松村氏は、東小学校の保護者説明会における説明では、東高等専修学校のA先生が、生徒についての相談に来た保護者に対し怒鳴っていたことなど「傍若無人な振る舞い」を理由に、A先生のことを辞職させた。かかる措置の妥当性は措くとしても、その措置により、東高等専修学校の教育現場では、先生が生徒に対し必要な注意をするのを躊躇している。そのせいで、最近では、例えば、登校時に、指定色以外の真っ白の色をしたコートを着てくる生徒や、ものを口に入れて食べながら歩いて登校する生徒が出てきている。
 さらに、松村氏は、東小学校の保護者説明会において、A先生たちのパワハラについて述べた後、東高等専修学校の「教室全部ローカルの防犯カメラをつける」予定であるなどと述べた。
 かかる措置は、現場の教育者を全く信用せず、その教育裁量を否定するものであり、実際に防犯カメラが設置されてしまえば、現場の教員はますます萎縮し、自身の判断に基づいた教育を施すことができなくなることは明らかである。

(5) 小括
 以上のとおり、松村氏は、違法な退職勧奨をも一部利用しつつ、教職員計4名 を辞任させ、あるいは、教職員の監視等のために防犯カメラを設置する予定を述べるなど、各教育現場の教職員の裁量を否定するものである。
これは、健常児と自閉症児を混合教育によって健全に育成する担い手である現場の教職員等を信頼せず、過度に萎縮させるものであり、今後の混合教育による十分な効果の実現を期待しがたい事態に陥らせるものである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?