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ビギナーズラック

大学生の時、悪友に連れられ初めて場外馬券売り場に行った。
渋谷駅から明治通りを歩き、角にある渋谷警察署を通り過ぎた少し奥まったところにあった。

これ見てなんでもいいから買ってみろ、とスポーツ新聞を渡された。
見てみたが、なんのことやらさっぱりわからない。
どう見るんだ?と聞いて教えてもらっても、やっぱりわからない。

周りには、ベテラン勢のおじさん達が、赤鉛筆を握りしめ、真剣な眼差しで専門の予想紙を睨みつけていた。
なんのこっちゃと思いながら、しばらく考え、マークシートの2か所の数字を黒く塗り潰した。

レースがスタートした。
はじめのうちはそれでも静かだった場内が、4コーナを回ると、おじさん達の怒号と怒声と歓声とが混じった、猛烈に殺伐とした雰囲気に変わった。
よっしゃっ!イケっ!ウリャっ!オラオラっ!まくれっ!

そしてゴール。馬券の紙吹雪が舞い上がる。
初めての私には何がどうなったのか、さっぱりわからないままレースが終わった。

以来、母親には感謝している。
その日はちょうど母の日。
なんでもいいやと選んだ2つの数字が8-8。
それが当たった。確か千円が10万弱ぐらいになった覚えがある。

悪友に晩飯をおごり、あとは何に使ったかは覚えていない。
しかし、以来こんなまぐれは二度と来ることはなかった。

今日は母の日。皆さんはいかがお過ごしなものだろうか。


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