ターンとリバーがなくなったらベットサイズはどうなる?の解説

先日、このようなクイズ的なものをツイートしました。たくさんの方がRTしてくださったおかげか予想以上にたくさんの回答が集まったこともありこれはある程度ちゃんとした解説を書かぬばなるまい、ということで記事を書いております。少し時間がたってしまい恐縮です。

クイズの文言に関して140字制限があって曖昧な部分もありますが、「平均的なベットサイズ」についてはお互いが最適な戦略をプレイする場合にベットするときのそのサイズの平均(チェックする場合は考えない)、という意図でした。サイズをポットに対する割合と考えるか、額で考えるか等で多少答えが左右される部分があるかもしれません。正解不正解というよりは答えを出すロジックが重要な話だと思うのでリーズナブルの仮定の下、正しい結論になってればそれでいいんではないかと思います。

実際のところこのクイズをツイートした際には、特に検証は行っておらず頭の中でおそらくこうだろう、という程度のことだけしか考えてませんでした。ので、少々自信がないのですが記事を書くにあたってちょっとした検証はしたのでたぶん正しいと思います。間違っていたらすいません。

解答&解説

想定解答は「大きくなる」です。

以下、その理由です。

一言でいうと、ポラライズしたベット戦略が支配的になるため、です。これだけではあんまりなので以下もう少し掘り下げていきます。

問題的には特にシチュエーションを限定していませんが、「平均」ということでとりあえず最も頻度の多いシチュエーションであるIP vs BB 2bet potのような場合を考えましょう。IP側がEQ的に優位で、ナッツ部分もたくさん持っていて、SPRがそれなりに大きい状況です。

通常、早いストリートでの一発目のベット(例: フロップCB)の際に小さいベットサイズを使うのはマージナルな部分をベットレンジに加えることが利益的な場合です。なぜ、マージナルなハンドで小さいベットをしたいかというと、相手がフォールドするであろう弱いハンドがそうしたマージナルなハンドに対して、それなりのエクイティを持っているためです。(例えばこちらのポケットペアーに対するツーオーバー)
ターン・リバーカードが出ないのであれば、もはやごみハンドに逆転されることは考える必要がなく、弱いハンドをおろすことで得られる利益が無くなるため、マージナルなハンドでベットする動機が小さくなります。結果的にベットレンジは狭く、ポラライズしたものになりサイズも大きくなるでしょう。

通常のゲームで、ターン・リバーでのセカンドバレル・サードバレルのベットサイズが小さくなるのは、オーバーカードが出る、3枚目のスーツがおちるのように、新しいカードによって前のストリートと大きく状況が変わった場合です。反対にいわゆるブランクが落ちた場合にはポラライズしたレンジで大きなベットが使われることが多くなります。つまり、ターン・リバーカードがないゲームではこうした二発目以降のベットサイズを小さくなるイベントも発生しないため、結果的に平均的に使われるベットサイズは大きくなるはずです。

ソルバーで考える

いい感じのトイゲームをソルバーに解かせることで検証してみましょう。

ふたつの設定を用意しました。いずれも、SPRが13でIP側が強いレンジを持ち、ベットサイズとして50,100,200%、レイズサイズとして50%を指定しています。

ひとつめは、通常のゲームを模したものです。

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もう一方は、フロップがAAAで双方ポケットペアがほとんどのレンジのためターン以降での逆転がほとんど起こらないという設定です。ターン・リバーがないゲームを模したものです。エクイティは222のケースと似たものになるよう調整しています。

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両者のIPフロップ戦略が以下のようになりました。(左:222, 右:AAA)

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222のケースでは、ポットベットを使うポラライズしたベットレンジとともに、TT-77のようなマージナルなハンドを含めて50%ベットするベットレンジが作られています。
一方でAAAでは、ナッツ級とゴミ部分だけを混ぜたポットベットだけが使われており、ナッツ部分はいわゆるマルチストリートのAKQゲームような状況持ち込み、残りのマージナルな部分はショーダウンに向かうというような戦略になっていることがわかります。

また、フロップでポットベットをしたターンについても確認しました。上が222, 下がAAAの各ターンカードが出た場合の戦略です。

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222のケースでは、2やハイカードが落ちた場合に小さいサイズが使われている一方で、状況の変わらないAAAでは一貫してジオメトリックサイズ=ポットベットだけが使われています。

こうした検証からも、ターンリバーの無いゲームではよりポラライズした戦略が採用されて、結果的にベットサイズが大きくなることが確認できたと思います。

ソルバーでの検証追記

AAAのケースでより小さいサイズが選択肢にある場合は選ばれるのでは?というコメントがいただいたので、その場合の計算結果も載せておきます。
同様にポラーな戦略だけが使われます。

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また、下は双方に近接したレンジを持たせた場合(ほぼ同じレンジでIP側が1コンボだけクアッズを多く持っている)です。単純にナッツとエアーだけのベットレンジになります。

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おわりに

ZooMagaのほうでもこういった理屈っぽい話は出していこうと思いますので、こういうごちゃごちゃした話が好きな人も是非ご購読の検討をよろしくお願いします。

ソルバーによる解析を軸にいろいろな動画の作成や記事の執筆をしたいと思います。