たぬぽんの実在感が高まりすぎて見ようによっては心霊映像みたいにも見える箇所の話 #舞台けものフレンズ
チャット欄にアングル投稿機能を使ってピン留めしてあるので、興味のある向きは確認してみてほしい。08:44時点、11カメの映像がそれにあたる。
ネコ科のフレンズ達が直後に踊りだすにあたり、余分な椅子を2つ抱えて舞台裏の暗闇に消えていくたぬぽんの後ろ姿がとらえられている。
アーカイブの中でも、この数秒はやや不思議な印象を与える部分になっている。
まず、この映像がとらえている「領域」。
マルチアングル機能は、主にメインの舞台か、舞台裏の様子を眺めるために使われていると思うが、ここでたぬぽんが走っている領域は、照明が当たる舞台の中心でも、厳密な舞台裏でもない、曖昧な、境界領域である。
この曖昧さが、映像に独特の違和感をもたらしている。見ている視聴者は、このたぬぽんが、まだ芝居をしているのか、それとも椅子を片づける役割に徹しているのか、即座には判断できない。実際には、このたぬぽんは「まだたぬぽん」なのだと思うが、11カメのアングルだと顔が見えないのも相まって、たぬぽんの背中を見た一瞬、脳の処理が追いつかない時間ができる。
次に、踊り手たちとたぬぽんの属性を一時的に分かつ、舞台上の様々な演出。
この映像には「前衛の踊り手たち」と「後衛のたぬぽん」に対照的な印象をもたらす要素がいくつか含まれている。例えば、中腰のまま踊る踊り手たちと、まっすぐ立って姿勢を硬直させたたぬぽん。大きく手を振る踊り手たちと、足だけ小走りのたぬぽん。手前にこうこうと当たる照明に対し、ぽっかり口を開けた舞台裏への通用口の闇。これらの対照的な種々の要素が、「踊り手たち」と「たぬぽん」の属性を一時的に大きく分かつような印象を与えている。
次に、カメラの動き。
視聴者は、舞台の映像と言えば「明るい照明の当たっている演者をカメラで追うもの」だと思って視聴している。特にこの11カメは、舞台裏ではなく舞台そのものがほぼ常に映されている。実際に、たぬぽんが駆け出す直前まで、明るい照明の当たった踊り手たちをカメラが追っている。
ところが、たぬぽんが暗闇に向かって駆け出した途端、11カメはたぬぽんの背中を追い始める。この一瞬、カメラは「演者の向こうの暗闇にヤバい撮れ高の何かが映り込んだので慌ててカメラで追った報道素材」のような動きになる。たぬぽんが通用口の闇の中に消えていった途端、カメラは、まるで「11カメの役割を思い出した」かのように、手前の演者(明るい照明が当たっている、片手を高くかかげたマンモス)をとらえる位置に戻り、固定される。
結果として、ここの数秒間だけ、見ようによっては「舞台の映像を撮っていたらこの場にいないはずの本物のフレンズが偶然映り込んでしまい『あれっ!?』と思った撮影者が思わずそのフレンズをカメラで追ってしまった」衝撃映像のようにも解釈できる、なんともいえない不思議な雰囲気になっている。
時折「サッカーの試合会場に野良猫が飛び込んできて大騒ぎ」といったような映像がネット上で話題になるが、この「椅子を片づけるたぬぽんの背中」には、その種の衝撃映像のような、独特のおもむきがある。
その気になって見れば、ここの数秒間だけは、舞台のアーカイブ映像というより、ジャパリパークを取材したドキュメンタリー映画の一部を切り取ったようにも見えてくるのだ。
あの一瞬、たぬぽんは舞台の登場人物ではなく、本物になったのかもしれない。
※スパムコメント対策として有料記事にしていますが、有料部分に追記はありません。
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