無申告(確定申告をしない)だとどうなる?無申告のデメリットと税理士の選び方

用語の意義

「無申告」 :提出すべき税金の申告書を提出していないこと
「期限後申告」 :確定申告の期限より遅れて申告書を提出すること
「事前通知」 :税務署が行う“税務調査を行いますよ”という意思表示

1.無申告により受けるデメリットとは?

①追加で発生する罰則(金銭的負担1)

無申告により発生する金銭的負担には本来払うべき税金とは別に
・無申告加算税
・重加算税
・延滞税
という3つの“罰則”があります。
仮に「本来の所得税+無申告加算税+重加算税+延滞税」という内容で支払う場合、
本来の所得税が60万円であっても最終的に支払う合計は1.5倍の90万円を超える場合もありますので気を付けてください。

(イ)無申告加算税
・自主的な期限後申告
  事前通知前       : 5%
  事前通知後50万円まで :10%
  50万円を超える部分  :15%
※「事前通知前」と「事前通知後」とは、税務署から税務調査があるという連絡があった後の事を「事前通知後」といい、税務署から連絡がない状態のことを「事前通知前」といいます。

<具体的計算例>
自主的な期限後申告で通常の所得税が60万円だった場合の無申告加算税
a.事前通知前に申告した場合
  60万円×5%=3万円
b.事前通知後に申告した場合
  50万円×10%+(60万円-50万円)×15%=6.5万円
→本来の所得税が60万円であった場合、「事前通知前」と「事前通知後」では3.5万円の過少申告加算税に差がでます。

・自主的な期限後申告以外の場合
  50万円まで     :15%
  50万円を超える部分 :20%

<具体的計算例>
自主的な期限後申告以外で通常の所得税が60万円だった場合の無申告加算税
50万円×15%+(60万円-50万円)×20%=9.5万円
→事前通知後に自主的に期限後申告した場合に比べてさらに3万円の差がでます。

ただし、次の要件をすべて満たす場合には無申告加算税は課されません。

1 その期限後申告が、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること。 
2 期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。
 なお、一定の場合とは、次の(1)および(2)のいずれにも該当する場合をいいます。
 (1)その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること。
 (2)その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。

※国税庁HPより https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm

(ロ)重加算税
無申告加算税が発生する場合に、事実の全部または一部を仮装・隠蔽し、その仮装・隠蔽したところに基づいて申告期限内に提出しない又は期限後申告をしたとき
→本来の税額の40%
<具体的計算例>
通常の所得税が60万円だった場合の無申告重加算税
60万円×40%=24万円

(ハ)延滞税
本来の申告期限の翌日から、納めた日までの日数に応じて利息分として納めるべきものです。年率は次のaとbの期間でそれぞれ変わります。
a.納付期限の翌日から2か月を経過する日まで
→「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
b.納付期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以後
→「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
これだけだと分かりにくいのですが令和3年と4年はそれぞれ次の割合です。

※引用 国税庁「延滞税の割合」より https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm

※国税庁のホームページで延滞税の計算ができます。 https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm#keisan

②罰則以外の追加負担(金銭的負担2)

罰則以外の追加の金銭的負担としては次のものがあります。
・住民税
・個人事業税
・国民健康保険料
これらは全て所得を元にして計算されるものです。無申告で所得がない状態から申告して所得があることが判明した場合、期限後申告で提出された内容に応じて後から金額が知らされて支払うことになります。
「所得税とその罰則はギリギリ支払うことができたけど、貯金がゼロになってしまった」
となると後から知らされるこれらの支払いができなくなってしまいますので注意が必要です。
世帯の中に1人でも申告していない人がいると国民健康保険料についてはさらに、
・均等割・平等割の軽減が受けられない
・高額医療費の限度額が高くなる
という場合があります。

また、過去の売上金額によってはさらに消費税の負担が発生する場合もあります。

③税務署からの連絡におびえる日々(精神的不安)


無申告の状態が続くと、いつ税務署から連絡(手紙・電話)が来るかは分かりません。
申告をしないと常に「税務署から連絡があったらどうしよう」と不安になることになります。

④その他のデメリット(社会的制裁)


無申告で受けるのは精神的負担や金銭的負担だけではありません。それ以外でも次のようなデメリットを受ける場合があります。
・お金の借り入れができない(住宅ローンや自動車ローン等)
・クレジットカードを作ることができない
・家を借りることができない
・「無申告=無職」の扱いであるため、こどもを保育園に預けられない又は時間が短くなる

2.無申告はなぜバレるのか?


無申告は様々な要因でバレることがあります。
令和2事務年度(令和2年7月~令和3年6月)の税務署の無申告に対する調査の結果、1件当たりの追徴税額は292万円となっています。
→所得税・消費税だけでこの金額のため、住民税や事業税、国民健康保険料の負担を含めると、おそらく1件当たりの負担増は500万円を超えていると考えられます。
正しく申告している人との公平性を保つため、税務署は無申告に対する調査を強化しています。

令和2事務年度 所得税及び消費税調査等の状況
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf

ここでは、無申告がバレる主な要因を挙げていきます。

①「取引先が税務署へ提出する支払調書」からバレる


・税務署へ提出された支払調書にそれなりの金額の支払いが記載されている
・その支払い先の相手が確定申告していない
という状況の場合から無申告がバレるきっかけとなります。
「支払調書」とは事業者が
・どこの(住所)
・誰に(名称・氏名)
・どんな(内容)
・いくら(支払金額・源泉徴収税額)
といった内容を記載して税務署へ提出するものです。
全ての取引先のものを提出するのではありませんが
・原稿料
・デザイン料
・講師料
等を一定金額以上個人に支払っている場合は提出する義務があります。
注意しなければいけないのは、
「税務署へ提出する義務があるけど、支払った相手先に送付する義務はない」
ということです。
「デザイン料をもらってるけど、支払調書を取引先にもらったことがないから大丈夫」
と思っていても、実際は税務署へはしっかり提出しているというケースが多いはずです。
自分が支払調書をもらっていないから大丈夫と安易に考えないようにしましょう。

②「取引先が提出した一般取引資料せん」からバレる


税務署は、支払調書よりさらに詳細な情報の記載が必要な一般取引資料せん(以下「資料せん」)の提出を求めることもあります。この資料は税務署があくまで任意で提出を求める書類です。
しかし「資料せんを提出しないと税務署に目を付けられる」と思っている経営者や税理士がしっかりと内容を記載して提出することも多いのです。
ここに記載された中に確定申告をしていない人がいるということで無申告がバレるきっかけとなります。

一般取引資料せんの提出 国税庁
https://www.nta.go.jp/about/organization/osaka/shiryo/index.htm

③「取引先へ入った税務調査」からバレる


正しく確定申告をしている事業者へも税務調査が入ることはよくあります。
税務調査では、取引先から発行された
・請求書
・納品書
・領収証
などを調べます。
その中から、
「明らかにこの領収証はあやしい」
「たまたま調べてみた」
ということがきっかけで無申告がバレることがあります。

④「税務署・国税庁へのタレコミ」からバレる


自分の友人や知人等からのタレコミにより無申告がバレることも少なくありません。
「あいつは税金も払わないでズルしてる」という嫉妬や正義感から税務署へ電話や書面でタレコミすることが多いようです。
中には個人的な恨み等からありもしない事実を税務署へタレコミするということもあるようです。
税務署は、タレコミのあった情報を調べた上で「これは怪しい」と判断した情報について実際にお尋ねの書面送付や電話をしていきます。
また、国税庁は常に課税・徴収漏れに関する情報提供を募集しています。

3.税金に時効はある(税金を払わずに逃げ切れる)?


上記でも記載しましたが無申告に対する調査での1件当たりの追徴税額は292万円です。
これはあくまでも「平均」ですので、これよりもっと多い金額になることもあるでしょう。
無申告がバレて「とてもそんな金額払えない」という状態になった時、税金を支払わないまま逃げ切ることはできるのでしょうか?つまり税金に時効はあるのでしょうか?

税金に時効はあります。
基本は5年(悪質な場合は7年)です。
この「5年」の期間は「法定申告期限から5年」という意味です。

(具体例)令和3年分の確定申告:法定申告期限は令和4年3月15日
〔誤った時効〕
令和3年から5年経過した「令和8年12月31日」
〔正しい時効〕
法定申告期限から5年経過した「令和9年3月15日」

ここだけを見ると「なぁんだ。5年間逃げ切れば税金はなくなるのか」と思う人もいるかもしれません。しかし、「時効の中断」という制度があります。これは税務署が税金の督促状を発行した場合、法定申告期限から経過した期間はリセットされます。

(具体例)令和3年分の確定申告:法定申告期限は令和4年3月15日
〔①当初の時効〕
法定申告期限から5年経過した「令和9年3月15日」
〔②督促状の発行(令和8年8月10日)〕
督促状の発行から5年経過した「令和13年8月10日」

税務署が把握している税金について督促をしないことはありません。
それを考えると実質的に「税金には時効がない」と思っておいた方がいいでしょう。

4.無申告の場合に税理士に依頼するメリット


無申告の場合に税理士に依頼するのは可能性があるのは大きく分けて2パターンあります。
①無申告のまま何年も過ぎてしまったため、過去の分をまとめて申告したい場合
②無申告で問題ないと思ったら、税務署から税務調査の連絡があった場合
ここではそれぞれについて税理士に依頼するメリット・デメリットを挙げていきます。

①無申告のまま何年も過ぎてしまったため、過去の分をまとめて申告したい場合

〔メリット〕
・税務調査があった場合を想定した申告をしてもらえる
・どれが経費になって、どれが経費にならないといったことで悩む必要がない
・日常生活(業務)への支障が少ない
・税務署からの連絡を税理士に丸投げできる

〔デメリット〕
・税理士報酬が発生する
・全く根拠のない数字で申告することができない
→ごくまれにではありますが、全く根拠のない数字で申告書を提出してそのままバレないといったこともあります。(もちろんバレると悪質であると判断され大きなペナルティの対象になります)税理士が関わる以上、全く根拠のない数字で申告をすることができないため税額が大きくなってしまう(本来は正しい税額であっても、根拠のない数字で計算するより大きな税額になる)ことがあります。

②無申告で問題ないと思ったら、税務署から税務調査の連絡があった場合

〔メリット〕
・税務署の指摘に対して適切に反論することができる
→税務署は法的根拠がなくても「上司からそう教わった」ということで指摘することがあります。その場合は適切に反論しないと自分にとって不利な状態で税額が計算されてしまうことがあります。
・正しい資料を準備することができる
→税務署は必要最低限な資料しか教えてくれません。(税務署の職員は、税金を少しでも多くとることで自分の成績に反映されるため、税務署の職員にとって不利な情報は教えてもらえません)税理士が確認することで「これは経費にならないと思って出していなかった」というものが出てくる可能性が限りなく低くなります。

〔デメリット〕
・税理士報酬が発生する
・税理士に依頼しても税額が減らないことがある
→税理士は、「ないものもある」といえるわけではありません。元々経費になるものが少ないような状態の場合は税額が減らないこともあります。

5.無申告が何年も続いている場合の税理士の選び方

上記を踏まえて税理士に頼めばどんな税理士でも安心なのでしょうか?
いいえそれは違います。
税理士によっては
・無申告の場合は依頼を断る
・無申告の対応に慣れていない
ということはよくあることです。
無申告の対応に慣れている税理士でないと、
「逆に税額が大きくなってしまった」
ということすらあります。
また、申告までは対応してくれたものの、納付についてはアドバイスしてくれない税理士もいます。
上述のとおり、無申告の調査に対する追徴税額の平均は292万円と300万円近い金額になっています。
それだけの金額を全く問題なく支払えるということであればいいのですが、多くの方は一括で支払うことが困難です。
しかし、支払うことができないからといって納付しないままでいると、あらゆるものが税務署に差し押さえられてしまう可能性もでてきます。
そうならないためにも、しっかりと納付について相談できる税理士を選ぶことをおススメします。

「おまかせ税務調査」では、税理士の視点からおススメできる税理士を紹介できますので、何かお困りごとがありましたら是非お問い合わせください。

info@omakasetax.com

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