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【皮膚科医】飲む日焼け止めがオススメできない理由を解説。塗る日焼け止めとは効果が桁違い!

 美容皮膚科では「飲む日焼け止め」が広く宣伝されています。しかし、「飲む日焼け止め」は「塗る日焼け止め」よりも効果が桁違いに少なく、代用にはなりません。また、両者を併用することの効果も証明されていません。なぜ「飲む日焼け止め」が現時点では推奨できないのか、簡単に理由をまとめてみました。

① 飲む日焼け止めのSPFはチョコにも負ける!
 まず、「塗る日焼け止め」については、様々な効果が実証されています。たとえば、SPF(紫外線防御指数)が15以上の日焼け止めを使うと、メラノーマというガンの一種にかかりにくくなるとされます[1]。他にも、塗る日焼け止めの使用により、有棘細胞がん、日光角化症のリスクも減少します[2]。特に、毎日日焼け止めを塗ることで皮膚の老化が24%抑制できるという研究結果は女性にとって魅力的でしょう[3]。これらの豊富なデータを踏まえ、米国皮膚科学会は「SPF30以上の日焼け止めを使用することが望ましい」としています

 では、「飲む日焼け止め」の効果はどうでしょう?日本の美容皮膚科でよく売られている「U・Vlock」や「ヘリオケア」のSPFの強さは、主要成分に関する論文から計算すると、

U・Vlock ;SPF 1.56(250mgを3ヶ月内服した場合)[4]
ヘリオケア;SPF 1.20(1000mgを1ヶ月内服した場合)[5]

 しかありません。ちなみに、高フラバノールチョコレート20g(フラバノール600mg以上含有)を12週間摂取した場合のSPFは2.05と報告されています[6]。これらを踏まえてSPFの高さを分かりやすくまとめると、

塗る日焼け止め;30以上のもの多数
ーー米国皮膚科学会推奨の壁ーーー
カカオチョコレート;2.05
飲む日焼け止め;1.20-1.56

という結果です。「飲む日焼け止め」がまるで役に立たないこと、それなら「飲む日焼け止め」よりも安くて美味しいカカオチョコレートを食べるほうがマシなことが一目瞭然ですね。

② 飲む日焼け止めと塗る日焼け止め併用のメリットは不明
 「塗る日焼け止め単独で意味はなくても、塗る日焼け止めと併用すれば相乗効果があるのでは?」と考える方がいるかもしれません。実際、そのような実験が行われたことがあります。シミ治療の標準療法である「外用ハイドロキノン+塗る日焼け止め」に「飲む日焼け止め」を加えたグループについて、プラセボを追加したグループよりもシミの程度が改善するかという臨床試験です。

 結論としては、アジア人を対象とした研究[7]でもヒスパニックを対象とした研究[8]でも、「飲む日焼け止め」を追加したことによる効果は確認できませんでした。主要評価項目として設定された「治療前後でのシミの改善度合い」に関して、「飲む日焼け止め」の有無による有意差が出なかったのです。

 もちろん、「これまでの研究で効果が確認されていない」ことは「絶対に意味がない」ことを示すわけでは有りません。しかし、「“飲む日焼け止め”を“塗る日焼け止め”に追加すると効果が上がりますよ!」として高い薬を売りつけている美容皮膚科医のセールストークには現時点では何の根拠も無いのです。もし“飲む日焼け止め”を販売するのなら「今のところ効くという根拠は全く無いし、“塗る日焼け止め”よりもずっと値段が高いですけど、それでも使いますか?」と正直に宣言すべきです。事実を伝えた上で選ぶのであれば個人の自由ですからね。ただ、わざわざSPFが1ちょっとしかない“飲む日焼け止め”を使うよりも、はるかに安価で効果の高い“塗る日焼け止め”を塗り直す頻度を少しでも多くするほうが、キレイになりたいのならよっぽど合理的でしょうね。


 美白を目指したい方々は、帽子やサングラスなどで日差しを避けつつ、“塗る日焼け止め”をしっかり使うというシンプルな方法を守りましょう!


[1]J Clin Oncol. 2016;34:3976-83.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27621396
[2]Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2014;30:55-61.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24417448
[3]Ann Intern Med. 2013;158:781-90.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23732711
[4]J Photochem Photobiol B. 2014;136:12-8.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24815058
[5]Surg Cosmet Dermatol. 2014;6:344–8.
https://www.semanticscholar.org/paper/The-benefits-of-using-a-compound-contai%C2%AD-ning-for-Schalka-Vitale-Villarejo/84e2a73833382cbfd63e33bba0bbb66b229a1530
[6]J Cosmet Dermatol. 2009;8:169-73
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19735513
[7]J Clin Aesthet Dermatol. 2018;11:14-19.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29606995
[8]JAMA Dermatol. 2013;149:981-3.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23740292

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