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南国

 南国宮崎、とセットで呼ばれることが多いような気がしますが、事実上の南国である沖縄は別格として、南国高知、南国鹿児島と南国を名乗る県は割とある気がします。

 それは、観光戦略的ななにかなのかもしれませんが、ある種のパッケージビジュアルのようなものだと思っていて、この季節は雪こそ降らないものの個人的にはとても寒くて嫌ですし、冬生まれだからといって快適に過ごせるわけでもありません。どこが南国なんだ、と思うことのほうが多いものです。

 ステレオタイプなイメージのせいなのか、世間から温暖だと思われている宮崎には、この時期こぞって多数のプロ球団がキャンプインします。野球はもちろんですが、サッカーに海外の球団まで、2月後半まで入れ代わり立ち代わりやってきて、ちょっとした観光需要もあるようです。
 ただ、皮肉なことにキャンプインの時期は、宮崎でも特別寒くなる頃で、「ああ、また巨人がやってきたから寒くなる」とか地元民では言われるほど特段に冷え込みます。各球団が、温暖イメージで選んでいるのか、山ごもり的に俗世から隔離する意図があるのか、それとも皆がキャンプするから真似しているのか、それはわかりませんが。

 南国宮崎な話になるとほぼ返す刀で「雪はふらないのでしょう?」という質問が来ます。たしかに、寒い寒いと書いてきましたが、雪は数年見ていませんし、その数年前も粉雪がちらりと舞った程度です。
 日本最南端スキー場も、実際は人工降雪機でほとんどまかなっているという体たらくでもあります。ここで感じるのは、寒い=雪がふる、という強い観念みたいなものがあるのかもしれない、ということです。

 「寒い」「寒くない」、「北国」「南国」、このふたつを分かつものは雪だけなのでしょうか。たしかに「南国」という言葉に「雪も降りませんし」と続けると説得力が高まりそうです。
 ただ、南国宮崎に住む僕が思う「寒い」は、単にその人の基準との相対的な気温感覚の差、文字通りの肌感にすぎないんじゃないかと思うのです。

 そんな南国宮崎ですが、今年は霜柱を何回か見かけます。庭の木陰にひっそりと立つ、目立たないそれを見かけると、思わず踏みつけて感触を確かめます。南国宮崎はあくまでイメージなんだぞ、と。ほら霜柱もこうしてあるじゃないか、と。そう思いながら。冬は冬、南国宮崎も寒い日々が続きます。



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