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coffee and...

僕の座席は、うしろにウォーターサーバー、横に自販機と、実に飲料に困らないところにあります。
そんな場所だけに、砂漠のオアシスみたいに、いろんなオフィスの顔ぶれが訪れるのをながめることができて、ちょっとした名物猫駅長みたいな気分を味わえます。

先日、いつもブラックコーヒーしか飲まないMくんが、珍しく緑茶を選んでいました。

「いや、ゴトウさん。あたたかいのが入ると緑茶が飲みたくなるんですよ」
「それはわかるねぇ。そういえば、いつのまにかあたたかいのがあるね」

宮崎は、いつ間にか夏から冬になっているような、ちょっと極端なところのある気候だからか、こんな自販機表示から、冬の足音を感じることは珍しくありません。
ただ、今日のMくんはやっぱりブラックコーヒーを買っていました。

「ゴトウさん、今日はね、眠いんですよ」

ブラックコーヒーが飲みたい時、お茶が飲みたい時、それぞれそんな気分があるし、それはどれも実にいいものだと思います。

コーヒーと会話、というと、Jim Jarmuschの「Coffee and Cigarettes」をふと思い出します。
彼の作品は、「はじまりもないし終わりも特にないのが現実でしょ」という哲学が色濃くて、本当にただの日常を切り取ったような印象が強いけど、思えばこの作品ぐらいから、特に強くなった気がします。
実になんてことない会話が、ただコーヒーをはさんで流れているだけで、何も得るものも残るものもない、ただの日常、そんな内容。
コーヒーって、そこにあるだけで会話が弾むときもあるし、別に沈黙でもいいんじゃない?
いくつもの短編が、そんな風に問いかけてくるのだけれど、なるほど、僕にとって、それは焼鳥と焼酎だったり、日本酒と肴だったりするのだろう、と思うとしっくりくる気もします。
別に会話の媒介になる、なんて身構えていうようなほどじゃないけれど、付箋だらけの会議より、コーヒー飲みながらの会話がいいなぁ。そんな風に思う昼下がりでした。

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