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パートタイム・有期雇用労働者に対する不合理な待遇差とは? その2


こんにちは。HiELCC相談員をしている弁護士の山崎です。
 先日、このコラムで、不合理な待遇差の禁止について定めたパートタイム・有期雇用労働法8条について説明しました。そこで今回は、平成30年と令和2年に相次いで出された最高裁判所の判例についてもポイント解説をしたいと思います。
 上記最高裁判所の判例で押さえておくべきポイントは次のとおりです。

■(現在のパートタイム・有期雇用労働法8条に相当する労働契約法上の条文は)私法的効力を有し、同条に違反する労働条件の違いを設ける部分は無効となる。ただし、だからといって非正規社員の労働条件が正社員の労働条件と同じになるわけではない。

■「不合理と認められるもの」とは、正社員と非正規社員との労働条件の違いが不合理であると評価できることをさす。そして、不合理であると主張する側(非正規社員)が不合理であることを根拠づける事実につき主張、立証すべきである。
■定年後再雇用者であることを正社員と非正規社員との労働条件の違いが不合理であることを判断する際の考慮要素とすることができる。つまり、定年後再雇用者であることは労働条件の違いが合理的であることを根拠づける事実となり得る。
■待遇の違いが不合理であるかは、
①個々の待遇ごとに、②問題となっている待遇の性質・目的に照らして判断すべきである。
■賃金以外の待遇についても同一労働同一賃金の趣旨が妥当する。

といったところです。
この点、「裁判所は非正規社員に退職金を支給しなかったからといって不合理ではないとした。」「裁判所は非正規社員に賞与を支給しなかったからといって不合理ではないとした。」といったかたちでこれらの判例が紹介されることがあります。ですが、これらの判例は、あくまで、「問題とされた事案における退職金」「問題とされた事案における賞与」を「問題とされた事案における非正規社員に支給しなかったからといって不合理ではないとした(あるいは不合理であるとした)」ものであることに注意してください。裁判所は非正規社員に対して賞与や退職金を支給しないことにお墨付きを与えたわけではありませんので、誤解のないようにしましょう。
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