高倉健インタビュー2024
「高倉健って知ってる?」
「え、俳優の?」
「いや、バンドの・・・」
「高倉健っていうバンド名なの?あぁ!CHARLES BRONSONみたいなことか!」
ここ2,3年でこんなやり取りを見た・聞いた・行った人は多いのではないだろうか。
都内近郊を中心に活動するハードコアバンド「高倉健」。インパクトありまくりなバンド名で瞬く間に話題のバンドとなったが、その反面、バンドに関する情報は決して多く無く、それ故に「どうせ名前だけのバンドだろ?」「パワーバイオレンスをおもちゃにする若者だろ?」といった誤解も招きかねない。
最初に言っておく、彼らは決して名前だけのバンドではないし、パワーバイオレンスをおもちゃにはしていない。ついでにそこまで若くもない。
自分は運良く2022年に大阪・難波BEARSにて自身のソロワークPLONQUOSとして彼らと対バンし繋がりが持てたが、もしそのきっかけを持たないまま年月が経っていたら「あの高倉健とかいうバンドよー、バンド名だけで評価されて気に食わねぇよなぁ!」みたいな思いを抱いているかもしれない。人間は予想以上に知ろうとしないし、学ぼうとしない。そして勝手に敵意を抱く。そういう邪悪な面があるのだ。
というわけで、世に蔓延るそのような邪悪な人々の誤解を払拭すべく、そして一度ゆっくり飲んでみたかったこともあり、雷鳴轟く真夏の平日に「高倉健」四人へのインタビューを行った。
このインタビューによって彼らの実体が掴めるかと思ったが、話せば話すほどに迷子になり「分からないということが良く分かった」みたいな状態になった。
読めば分かると思うが、全ての質問に対して「特に意味はない」という回答が全く出て来ず、毎回過剰なまでの解説、脱線、罵倒、そして愛みたいな展開が行われている。それらの発言を整理整頓してなんらかの結論を指し示すことも出来るのだろうけど、極力そのまま提示したほうが「高倉健」の実像に近づける気がして、最低限の編集に留めた。
そのため話が行ったり来たりしたり、言いたい内容が伝わりづらい箇所もあるかと思う。そこはご勘弁を!
ではいきましょう!
盆潰しの三万文字超え!渾身の特盛インタビュー!
お先真っ暗!KEN TAKAKURA!
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2024年8月7日水曜日。池袋にて。
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自己紹介、うっすらと出方の探り合い
HP やりますか。
藤田 気軽な感じで。うん、適当な会話の流れで。
HP というわけでまず各自自己紹介を。名前、出身地、今住んでる街くらい。あと演奏しているパートもか。
藤田 ボーカルから行った方がいいか。ボーカル、ギター、ベース、ドラムの流れ。
HP やりやすい順で良いよ。
小島 ボーカルの小島です。出身は千葉の八千代市っていうとこ。
HP 落花生の。あれ?それ八街市か。
小島 八千代市も落花生が有名です。今住んでるのは埼玉県の志木市です。
藤田 ギターのフジタシュンです。出身地は埼玉県の蓮田市、あの辺りなんて音楽未開の地で・・・。今は東京の落合です。中井と下落合の間で、北新宿ハードコア辺りの。
HP あの辺りやたらと坂多くない?
藤田 あぁ、自宅は坂の下ですね、目白通り沿い、いや、新目白通りだ。 てかもう普通に住所特定出来るじゃないですか・・・。
近藤 ドラムの近藤です。横須賀市出身で、今現在も横須賀の実家にいます。今はpenisboys(以下ペニボ)の岩波さん(なみちゃん)の家に転がり込んだりとかして。
藤田 現住所は横須賀だけど、最近はなみちゃん家で、阿佐ヶ谷に居ることが多くて。
HP あ、高円寺じゃないんだ。
藤田 なみちゃん阿佐ヶ谷すね、阿佐ヶ谷と荻窪の間。
史人 ベースの史人です。千葉県の、千葉市が出身地。今住んでるところは田端、北区の。
HP はいはい、ありがとうございます。さて、ドリンク頼みますか。
藤田 バイスにしよ。
近藤 バイスね。
HP あー、じゃあ3つください。
小島 あと瓶を。
HP あと串盛りを。
スタッフ タレと塩どうしますか?
一同 ・・・。
HP あ、塩で・・・。
スタッフ 焼き鳥、焼きトン、どちらですか?
藤田 じゃあ焼き鳥、焼きトン両方で。
小島 赤ウインナー。
HP はい、以上で。
酒を飲みながら雑談は続く
藤田 ヒデジさん、こういうインタビューって、他のバンドにもやったことあるんですか?
HP ないよ、初めて。
藤田 でもなんかジン作ってましたもんね。
HP あれはインタビューじゃなくて対談って形だったから。
近藤 「ナニ喰うか?ZINE」ですよね。 あのZINE発GIGの日、高倉健メンバーみんなの分も貰って。酔っ払って、帰りに全部無くしたっていう・・・。
藤田 毎回無くしてるじゃん。あのもらったレコードは結局?
近藤 あれは・・・まだ探している。
藤田 無くし過ぎでしょ。
近藤 この前も物販無くしたかと思って、焦ったの。
藤田 絶対焦ると思ってLINE送っておいたのに、先読みして、もう大体わかるようになってるから。
近藤 会場戻ってずっと探してさ。
藤田 だからLINE送っといたのに。
史人 何?電源切れたわけ?携帯見てなかった?
近藤 いや、LINE入る前にずっと探して・・・。
藤田 まず、カジさん(badu erykahのギター)にも言っておいたんだけどね、カジさんがそもそも終わってたけど「物販おれが持っていくんで、近藤くんのことは絶対お願いしますね」って。
近藤 そのカジさんを置いて帰ったから・・・。
HP まぁなんとなく高倉健の雰囲気が分かった。大体こんな感じ?藤田くんが一人で喋ってる感じで。
近藤 正解です。
HP 一番気難しそうなやつが一番よく喋る。
藤田 他が喋んないから。
近藤 みんな内弁慶だから。
コミュニケーションの質について→緩やかにバンド論
藤田 でもペニボなんかと車に乗ってると、会話のキャッチボールがあるんだけど。高倉健は俺以外誰も入ってこない。
HP あぁ・・・。
藤田 レオッチ(ペニボのギター)も喋るじゃん。いや、意外とみんな喋るじゃん。山岸さん(ペニボのドラム)はなんか違うけど・・・。
近藤 違うよ。なんか喋るの「あれ」が・・・。
藤田 この前も言われたよ。「藤田が居ると、間が持つからいいね」って。
近藤 というか間が無い。
藤田 間が嫌いだから、昔はわざと間を潰すようにしてたんだけど、今はほんとにそういうつもりもない。
近藤 気を許してる相手にはそうなるんでしょ?
藤田 そうそう、仲良い人とかだと。でも別に自分が話したいことだけ話してるわけじゃなくて、会話してるつもりだから。でも高倉健の四人で居ると、どうしても一方通行になりがちだけど、ペニボとは会話にはなってる。俺から話し始めることは多いけどさ。環境に合わせて考えてやってるつもりだからね。
HP 頭の中で意外とハイレベルなことが起きていると・・・。
藤田 そんなことはないんですけど、でも今日はどんな感じでやるのがいいんですかね。超真剣に話すのと、そうじゃないのと、どっちが面白いのかなと思ってて。だから普通に適当な会話の、ペニボとかといるときみたいな感じで。
ペニボってさ、親しいと言っても一定の距離があるからさ。例えば音楽の話とかも、バンドメンバーじゃないから、別に深くする必要はないじゃん。だからそこまで言わなくていい部分ってあるじゃん、お互いに。今までもその一線を超えた時とかに、大きな問題になったりしたわけだけどさ。だから、なるだけ一線は超えないように会話するから。でもバンドとしてやるときは、自分がやりたいことみたいなのはある程度の深度で共有しないといけないから、そこは、話の仕方が違う。もう少し理解を求めるというか。
レーベルについて2,3
藤田 なみちゃん、西田さん(ペニボのギター)あとシューゴさん(DEBAUCH MOOD)とか、まじで音楽の話ずっとしてますよ。ほんとに好きなの。自分も音楽好きだし、近藤くんも好きだけど。俺らがわからない話をしてる。
ペニボとのスプリットがちゃんと完成したときにどこかに書こうと思ってることだけど、次の音源をリリースしてくれるレーベルのDEBAUCH MOODについて、おれはあまり知らないし、だから、そこから出したいと思っていたわけじゃなくて、友達のシューゴさんが言ってくれたから出すっていうだけでしかなくて。DEBAUCHが今まで出してきたバンドについても、正直あんまりよくわかってない。
HP ASIX BOOMERANGSとALP$BOYSのスプリット出してたレーベルだよね?
近藤 あれ意外なリリースだった。
藤田 ね。あれ変だよね。それ以外はもっと欧米圏の音楽を直輸入してるようなバンドが多い印象があった、要は英語詞が多い感じで。
小島 レーベルって一人でできるの?
藤田 出来る出来る。いや、俺が言えることじゃないけど。
小島 変な話、人のふんどしで相撲取ってるというか・・・?
一同 いやいやいや、それは違う!
藤田 昨日も話してて思ったけど、シューゴさんはバンド側がめんどくさいと思う部分を全部引き受けてくれようとしてくれてる。この規模感のレーベルって、ギャラが現金じゃなくて現物支給で渡したりするんだけど、制作面でも「予算10万渡すからこれで作って」ってやり方じゃなくて。でも、DEBAUCHが作ってたルートで卸しをやってくれるから2、30店舗にはもうすぐ卸先は決まってて、みたいな。
小島 金銭的なリスクは取ってくれているわけでしょ?
藤田 まぁね。ただレコーディング費用とかはこっちで払ってるけど。でもその現物支給でマイナスにはなんない。
近藤 ちゃんとシューゴさんの色があるし、すごくいいレーベル。
藤田 だからシューゴさんが高倉健にハマったのは意外なの。やたら80年代のバンドに例えられて。めっちゃバンド名を言われるんすよ。
近藤 「これっぽい、あと、これっぽい」とかって。
藤田 でも聴けば確かに、ってなって。近藤くんのドラムがドタバタしてるから、イタリアンハードコアとか、NEGAZIONEとか言われるとめっちゃわかるし、好きだし実際。でも別に直接的な引用ってあんまりは無くて。
自分が曲作ったときに、具体的なバンド名3つぐらいあげるときあるんすけど、でもその影響元をビタっと言い当てられることはあんまり無い、というか、俺たちの演奏力の問題で再現出来てないってだけなんだけど。
HP 曲のイメージをメンバーに伝えるときに、それこそ「これはBORN AGAINST」とか「ここはCHARLES BRONSON」とか「イントロはLOS CRUDOS」とか、そんな風に伝えるってことを言っている?
藤田 ブロンソンはもう、高倉健なんて名前でやってるから、引用する時あるんですけど。でもBORN AGAINSTの話をするなら、メンバーが後にやってるWRANGLER BRUTESってバンドの方が好きだから、あれはちょっと演奏が上手過ぎて俺らには無理で、今日もね、買ってきた。高田馬場のユニオンで取り寄せたの。俺、カセットテープ持ってるけど、それのレコード版のやつがね。
史人 まじか。取り寄せ?
藤田 通販で5000円いかないと送料かかるから。WRANGLER BRUTES、めっちゃかっこいい。
HP 「どうやったらこの音楽が出来るんだ?」みたいな、ルーツが見えない感じのバンドっているじゃん。まさに WRANGLER BRUTES とか。高倉健にはその匂いを感じる。
藤田 そうなってたらありがたいですけど。
METEO NIGHT 2024の話
藤田 でもこの間ジアクト(THE ACT WE ACT)のライブ見て、もう俺、ちょっと恥ずかしかった、超くらった、やばかった。初期がああいう、言えばハードコアっぽいこと、もっと直接的なことをやってたのに。突き詰めた先でさ。HIMOも、初期から確立したオリジナリティがあるけどさ、更に突き詰めてる感じあるじゃん。やっぱHIMO、ジアクト、スラスラ(SLIGHT SLAPPERS)は別格だと思う。もうハードコアの中でほんとに好きなバンド。なんかもうレベル違うなって思った。
近藤 ジアクトは極北な感じする。
藤田 現行で海外も含めてスラスラとジアクトとHIMOが、もうほんとに全世界規模でやばい。
近藤 いない感じする。ない。唯一無二な感じ。
藤田 てかジアクト、新曲をあんなに詰めて来るっていう、さらに攻めるっていう。
HP この前のMETEO NIGHTでの話?新作「フリッカー」の、さらに新曲ってこと?
藤田 METEO NIGHTで、1曲目に新曲を持ってくるんすよ。で、超長い曲なんですけど、 もうあれほんとにやばかった。 恥ずかしい話、高倉健を今年のメテオでベストライブって言ってくれる人もいたし、SNSで広まったりもしたけど、でも全然そんなレベルじゃない。てか俺たちは単純にゲタ履かせてもらってるだけ。
ウエスタンとは何か?→高倉健結成の話へ
藤田 でも、あれで良いとも思うんだよね、自分たちがやることって。あの環境をどう作るかっていうのと、自分たちの中での音楽を詰めていけばいい。あの環境作れることがまずはすごいと思う。それは、自分たちがウエスタンの時にやってたことを、ずっとやりたいことをやってるから。
HP はいキーワード出ました。「ウエスタン」ってなんなんですか?ライブで出囃子のあとに「ウエスタンの魂を見せてみろ」という曲をやっていますけども。
藤田 大学のサークルです。
HP ウエスタンミュージックのサークルなの?
近藤 いや、軽音サークル。
藤田 まず音楽研究会っていう母体があって・・・
近藤 その中でジャズとビッグバンドと軽音が合同で、でかいサークルだったんですよ。
藤田 だから、ビッグバンドをやってる人たちがいて、ジャズやってる人たちがいて、自分たちは何やってもいい場所っていうか、それぞれと交流があって。もちろんハードコア好きだったけど、ジャズというかインプロとか実験音楽みたいなのも好きだったから、ジャズ研の人たちとも仲良かったです。
HP ってことはウエスタンの中では浮いてたの?
藤田 いや、ウエスタンがみんな浮いてて、独特だった。みんな音楽ほんとに好きだから。
近藤 いろんな軽音サークルあったんですけど、その中で変な音楽好きな人たちが集まってるような。
藤田 この間METEO NIGHTでデラシネのカバーやったんですけど、自分たちが1年生の時の新歓ライブで先輩がやってたのがデラシネだったんですよ。デラシネとBOTCH やってて、あとチャットモンチーだ。この3つやってて。
HP カバーってこと?
藤田 そう、カバー。いや、もうコピー、完コピですね。
近藤 コピバンサークルなんですよ。
藤田 俺たちもコピバンやってて、3人がウエスタンで、史人くんは、小島の高校の同級生。
HP 史人くんは別の大学なの?
史人 はい、ウエスタンじゃない。
HP じゃあ「ウエスタンの魂を見せてみろ」って言っても、そこは一歩下がる的な・・・?
藤田 でももうウエスタンがそもそも無くなっちゃったから、サークル自体。後輩がだんだん、あんま面白くなくなってきちゃったっぽくて。
近藤 ウエスタンがなくなっちゃって、サークルの追悼集会をやろうつってイベントやったんすよ、コロナ禍に。その時に、この三人(小島、藤田、近藤)ともう一人別の、ウエスタンのベーシストがいて、その四人でCHARLES BRONSONのコピバンやったんすよ。
藤田 YOUTH ATTACK全曲コピーやって。その前にuxnxixcxexf(ユニセフ)ってバンドをやってて、それが終わった後に近藤くんと俺、仲悪くなっちゃってて。 でも追悼集会があるからもう一回一緒にやろうってなって、やったら面白かったし、こういう感じでハードコアバンドできないかなって言って。じゃあさ「高倉健」って名前でやってみようってなって。
HP それは何年前?
藤田 バンド組んだ時は2021年の春、4月にYOUTH ATTACKの全曲コピーライブをやって。
HP ちょっと待って。uxnxixcxexfは小島くん抜きの3人(藤田、史人、近藤)?
近藤 始めたのはその3人。
HP それは大学の時に組んだわけなの?
藤田 いや、2016?17?
HP 経緯は?
藤田 この辺り複雑だけど、まず近藤くんと小島が大学在学中くらいから一緒に暮らし始めてて、 大学卒業するタイミングで。俺はずっとみんなで店をやりたいって思いがあって。その頃ってシェアハウス文化が流行ってたんですね。「渋家」ってのがあって。そういうものの真似でまずは住処を作ろうとしたんですけど、それがあんまうまくいかなくて、立ち消えになった。でも2人はずっと暮らしてて「もしよかったら一緒に住まない?」って誘ってもらった。卒業してから1年後か2年後ぐらいに。
HP それはどこで?町田?
近藤 江田っていう、東急田園都市線の。
HP あぁ、たまプラーザのほうか。
藤田 で、話が前後しちゃうけど、そのウエスタンの部室ってのが、今思えば信じられないぐらいの環境で。
HP 良いほうで?
藤田 超広くて、フットサルできるぐらいでかかったんですよ、部室が。
近藤 レコーディングスタジオとかも・・・
藤田 レコーディングスタジオもあって!でもレコーディング機材は壊れてるし、アンプも変なアンプ、ヤマハとかしかなかった。もっと環境を整えればよかった今思えば。でも休みの日、それこそ自分が学生のときに始めた「箱入り気分」の時は、もう1日中ずっとスタジオ行って、みんなでただ叫んだりしてるだけとか、ずっとそういうことをやってて。
近藤 スタジオっていうか、部室、タダで使える。
藤田 そうそう。
過去にやっていたバンドの話
HP 箱入り気分ってバンドは知らなかったんだけど、この前秋葉原でスタジオ行くときにさ、道であたけさんに会って、あと他の友人も一緒にいて・・・
藤田 高橋さんかな?
HP その人が「高倉健のギターは箱入り気分だったから」とか言ってて、おれはそれで箱入り気分ってバンドの存在を知ったのだけど・・・
藤田 もう一部の人だけがずっと。高橋さんは「人生で1番好きなバンドだった」って言ってくれて。
HP 高橋さんって人かな。その、道で会ったときに「秋葉原のスタジオライブでHORSE&DEERのライブを見たけど、そのときに箱入り気分も出てた」とか言ってた気がするけど、そんなことはなかったよね?
藤田 グッドマンは出てましたね。その時にゲバ棒と対バンして、 でも全然そのとき一言も話してない、ゲバ棒とは。
HP 箱入り気分はハードコアではない?
藤田 もうポップな、相対性理論とキャプテンビーフハートを混ぜたやつみたいな。そのとき相対性理論がいたから、女の子で可愛いボーカルやったら全部相対性理論って言われてる時期で。
HP やっぱ良くない気持ちになっ・・・
藤田 いやでも好きだったし全然いいけども・・・
HP じゃあ音楽的にはちょっと緩めな?
藤田 そうですね、ポップで。今も好きなんですけど、そのときアニメとか萌え文化も好きだったから、それをどうやってバンドでやるかっていう。
HP この前の初台WALLでの高倉健企画の時のさ、転換BGM用にミックス作って後日サブスクにアップしてたじゃん、あれにも萌え文化ちょっと入ってた、確かに。
藤田 ああ、そうそうそうそう、そうっすね。今の東京っぽいっていうか、そういう感じのイメージでやったつもりだけど、でも基本的には自分がほんとに好きな音楽、あそこに入ってるアニソンはマジで好きな・・・てか、アニメ好きな人とかだったらミーハーすぎだろっていうぐらい有名なやつなんですけど。それとTikTokで今流行ってるやつで、ほんとにずっと聞いてたやつをミックスして。
HP 他のメンバーもアニメ文化を通っているの?
近藤 おれはちょいちょいつまみつまみ・・・。
藤田 俺たちの学生時代、めっちゃアニメ流行ってたんですよ。もう音楽よりもアニメの方が共通言語としてあって。らき☆すたとかハルヒがあった時期で。でも大学卒業した後からだんだんみんなアニメ見なくなって。その時に裏切られたみたいな。「みんな音楽とアニメあんなに好きだったのに!」って。
HP ラキスタってきしめんのやつ?きしめーんみたいなオープニング曲の・・・?
藤田 え?
近藤 ではないですね。
一同 ・・・。
バンド名の由来。というか四人とも今までどこに居たのか?
藤田 あぁ、じゃあアニメの話はアニメ好きな人に出会った時にまた・・・。
史人 今回のCDでも引用元になってたり。
HP これ最後に聞こうと思ってた質問だけどさ、バンド名の由来はやっぱ、映画が好きだから?
藤田 いや、違います違います。普通にふざけて。まず小島と近藤くんは一緒に暮らしてて、そこに自分を含めた3人で暮らして、それが2年で終わった後、近藤くんと赤羽に住んでて、赤羽に住んでる時、みんなは異論あるかもしんないけど、ほんとに3人とも外でバンドやるような人たちじゃなかった。俺から見たら。
史人 それはそう。
藤田 無理やり引きずり出した。で、コピーバンドやってたけど、 みんな大学の外でやらなかった、ウエスタンの人たちって。独特な空気があって、外でやったりすると、ちょっと引いてる感じがあって。
HP 「なに頑張っちゃって」みたいな?
藤田 悔しかったりしたのかな。
近藤 箱入り気分やってる時からライブに遊びに行ってはいたけど「なんでこんなことを続けられてるんだろう」ってずっと思ってて。
藤田 でもあとになって近藤くんが「もっと早くやっときゃよかったな」ってセリフとかもあって。当時は馬鹿にされてるというか・・・馬鹿にしてないかもしれないし、嫉妬とかだったんだろうけど、そういうのにムカついてたから、そういう人たちをもっと巻き込んでやりたいってのがあって誘ったってのがあった。
コピーやってた時に、みんな無敵感あったんですよ、ウエスタンのときって。
HP コピーだけでも?
藤田 コピーだけど普通にかっこいいなと思ってた。でもそれは普通に世界が狭かっただけなんだけど、外を知らないだけで。
史人くんとの出会い→uxnxixcxexf結成
近藤 自分は大学卒業したら、音楽じゃなくて、バイクとかいっぱいいじってたから、それでめっちゃ時間使ってました。原付触れればいいぐらいな感じで暮らしてて。
藤田 3人で一緒に暮らしてる時、2時間かけて溝の口のバイト先まで原付で通ってて。
HP 3人で住んでたってのはさっき言ってた江田の話?
小島 いや、埼玉、朝霞に住んでた。
藤田 江田で最初2人で住んでて、引越しのタイミングで誘ってもらった。俺は高円寺に住みたかったけど、小島の仕事都合で、 埼玉の方に住もうってなって、俺は埼玉県から埼玉県に移っただけだから、すっげえ嫌だったんだけど、近藤くんも朝霞は嫌だったんだよね。
近藤 仕事変えたくなかったから、埼玉から原付で、溝の口に通って。
藤田 遠い。めっちゃ遠い。でも、今の横須賀から東京ともあんま変わんない。
近藤 あんまっていうか、むしろ今はあの時の倍ぐらい。
藤田 時系列としては、 近藤くんと小島が江田に住んでて、それで江田から埼玉に移ったタイミングで俺が加わった。で、それは2年間くらい。小島が彼女と暮らすって言って出ていくってなったから、残った二人で他の家を探そうよって赤羽に引っ越して。
その三人で住んでた埼玉のマンションを出るときに、音楽を絡めた引っ越しイベントみたいなのをやったんすよ。そこで、史人くんが来て、菊地成孔が好きって言ってて、俺、菊地成孔の学校行ってたから、そこで話して・・・。いや、学校とか言うと、俺が音楽を勉強した人みたいになりそうだから嫌だけど。そんなことなくて。
史人 まぁ勉強してい・・・
藤田 一応、学校行ってて。その頃は周りにジャズの話できる人がいなかったからめっちゃ嬉しかった。もちろん音楽好きはいたけど、ヒップホップとかオルタナ系とかハードコア好きが多かったから、ジャズの話で「あっ!」て。でもその時は史人くん社会人として普通に働いてたから、箸休め程度な付き合いで。で、俺と近藤くん2人で赤羽に暮らし始めて、史人くんも日常が豊かじゃなかったから、しょっちゅう遊びに来るんですよ。「あ、ここが楽しいな」みたいな。だったらもうこのメンバーでバンドやってみようよって。
だけど、箱入り気分の時に普通のバンドのやり方ってもう嫌になっちゃって。ブッキングとか出て、お金を毎週払って、月何万払ってんだよみたいな。だからもうライブハウスとか音楽産業自体を否定するようなのをやりたくて。
uxnxixcxexf時代の四苦八苦
藤田 だからずっと荒川沿いで練習と、ライブじゃないですけど・・・
史人 誰か見てくれる人がその辺に・・・
藤田 そうそう、その辺にいればいいじゃんって言って練習も外でやって、ずっとやってたら、近藤くんもドラムセット買って、で、そっからドラム始めて。
近藤 最初はMINOR THREATのカバーとか・・・
藤田 DEEP WOUNDとか、THE FUTURESとか、DEAD KENNEDYSとか。
HP 川で・・・?
藤田 川で。川沿いで。でもそれが怒られるようになってきちゃって、だから夜中とかにやって、でも、初めてのお客さんは、夜中のね、真っ暗なところで・・・
史人 あれ怖かったね・・・
藤田 3人ぐらいが来たんだよね。で、俺たちがMINOR THREATとかさ、やってて、それをこうやって座りながら見てる女の子、親子みたいな。
近藤 めちゃくちゃ怖かった、顔見えないの。
藤田 誰にも見られないからやってたことなのにさ、見られるようになると。
近藤 あとあと調べたらあそこ心霊スポット。岩淵水門って。
藤田 で、俺は箱入り気分終わってからも並行して、なんかポツポツやったんすよ。なんかいろんなバンドっていうか、ただ、即興とか。「人体自然発火トリオ」って、これ全然誰も知らないやつですけど。
近藤 川でなんか昼から・・・
藤田 夜までずっと演奏し続けるみたいな。
HP 結構コンセプチュアルというか・・・
藤田 コンセプトというより、タージマハル旅行団とかそういうのが好きだったってだけですよね。その時はほんとになんも考えてなかった。
HP やることに意味がある的な?
史人 そういう感覚は・・・
藤田 一応はアートからの影響っていうか、アートって言われてるものから影響受けてて、uxnxixcxexfの時はそういうことばっかやってました。
HP どっかで音源の情報見たな、すごいたくさん曲が入ってるやつ。
藤田 1曲1秒で60曲、60バンド入ってて、そのバンド解説がぎっしり書いてある。あれ、今でも文章とか多分面白いけど、我ながらすごい熱量だったなぁと。
近藤 あの時は誰にも相手にされなかったから、どうやったら円盤の田口さんに驚いてもらえるかという・・・
藤田 円盤の田口さんだけが反応してくれて。あと今は連絡取んなくなっちゃったけど、美学研究者の金子智太郎さんって人がいて、その人に対して、自分たちはこんなことやってますって言って、文章めっちゃ書いて、それを送ったりとかして。宇川さんにも送ったけど、DOMMUNEの、相手にされなかった。金子さんは、メールで相手してくれてたんですよ、金子さんの講演に行って、サウンドアートについて文章を書いて、それを面白がってくれて。「作品とかできたらどんどん送ってください」って言われたから、実際送ったんだけど、その時に段ボールをスプレーで真っ黒にしたら、金子さんに届いた時にそのスプレーの塗料がボロボロになって落ちて「こういうことは勝手にやんないでください」って言われて、そっからもう連絡止めちゃったから。すみませんでした。
HP 向こうの方が正しいでしょ。
藤田 あの時はもう反応してくれたから嬉しくて。もうuxnxixcxexfで作ったものとかも全部送って。
HP 「何やっても喜んでくれるんじゃないか」みたいな・・・。
近藤 どうやって人びっくりさせるかで・・・。
藤田 ね。uxnxixcxexfでベストと言われるのが、AKBの不法投棄事件ってあったじゃないですか。
HP あったねぇ。握手券を買うための・・・
藤田 そうそう。あれが起きた時に「CDって文化が終わってる」って思ってたからAKBのCDを不法投棄された枚数分、485枚買って、その盤面を全部黒で塗って uxnxixcxexf の音源入れたQRコードをつけて秋葉原に不法投棄したんですよ。そしたら警察に持ってかれて、事情聴取受けて。
近藤 クリスマスイブに・・・
藤田 クリスマスイブにね!朝一に不法投棄してさ、夜に行ったらなくなっちゃったからさ。なんで無くなったんだ?って言って警察に遺失物届け出して。「これ持ってかれるの嫌だよね」ってなって、ただゴミとして扱われたら俺たちがやりたいことって違うから。そもそもゴミとして捨てられたものに再度価値を与えて「だったらCDいらないじゃん」ってテーマを提示するところまでをやるのが必要だと思ったから。
HP 遺失物じゃないと不法投棄扱いで犯罪になるってこと?
近藤 そうなったら嫌だと思って、先手打って遺失物届出して。
HP そうか。「どっかに落としちゃいました」って体で。
近藤 そしたら警察から連絡来て「万世橋警察署に来てください」って。
藤田 3人で行って、バラバラに事情聴取されて、監視カメラの映像とか、uxnxixcxexfのことも調べてくれて、若い警察官が俺を担当したの。これ録音残ってるんすけど自分の話をすっごい聞いてくれんすよね。あっち事情聴取だから、聞いてくれるのは当たり前なんすけど。
HP 「あの人、話聞いてくれて良い人だったなぁ」とか言って。
藤田 なんだかロキノンのインタビュー受けてるみたいで。 向こうもこっちが楽しく話してるから、聞いてくれるんですよ。
HP 思想犯として・・・。
藤田 そうそう。最後はちょっと怒られたんだけど「俺たち有名になったらこれ価値出ると思うから、持っといた方がいいですよ」みたいに言って。でも全然そんなこと起きずそのまま解散・・・。
uxnxixcxexfのその後
HP uxnxixcxexfは解散してんの?
藤田 してない、あ、でもやるつもりはないけど、去年のMETEO NIGHT出たかったのに誘われなかったから、だったらこの時にもう自分たちでイベントやるしかないってなって。本当は高倉健でやりたかったけど、小島が仕事でどうしても動けなくて。でも、やることに意味があると思ったから。じゃ、uxnxixcxexfの名前でやろうって言ってもう無理矢理。
HP METEO NIGHTの会場の近くのスタジオかなんかだっけ。
藤田 そうゲートウェイスタジオで。
近藤 METEO NIGHTのオープン5分前に5分間だけNETEO MIGHTってイベントやって・・・
藤田 谷口さん(less than TV/FUCKER)も来てくれて、意外と2、30人集まったんだよね。それで物販も全部売れて、売り上げも2万円ぐらいプラスになった。
史人 そうそうそう。
藤田 やってよかった~!みたいな。で、めっちゃ盛り上がった。谷口さんにMETEO NIGHTが終わった後に高倉健のCD渡しに行ったら「今日のベストアクトはuxnxixcxexfだったでしょ」って言ってくれて、もうめっちゃ嬉しかったの。 それぐらいほんとに盛り上がってくれたんだよね。まぁ全部METEO NIGHTのおかげだけど・・・。
やっと高倉健結成話に戻り、繋がって月曜の新企画の話
HP uxnxixcxexfの活動中は、小島くんはバンドをやってなかったの?
藤田 いや、仕事が、今よりもっと。
小島 バンドやろうなんて1ミリも思わなかっ・・・
藤田 ちょうどコロナで、小島の仕事が飲食だから、暇になって。
HP 高倉健はコロナ禍に現れたバンドみたいな印象あるけど、そういう背景があるのね。
藤田 重要な出来事で、コロナ禍に友達が自殺しちゃったんすよ。ウエスタンのめっちゃ仲良かった友達が。それでやっぱり遊び場を作ったり守り続けるのが大事だと思った。
今度やる企画も月曜日だけど、誰もやってないからやりたいってのはもちろんあるけど、でも、どうやったら周りの人が死なずに在り続けられるかみたいなことは考えてるつもり。だから、バンドを続けることの意味とか、ウエスタンをどう絡めるかとか、今日みたいにバンドを始めたことでできた関わりをどう大事にするかってのは考えてる。
で、月曜日って、ブルーマンデーって言われるぐらい嫌な物で。西田さんがこの前「ブルータルマンデー」ってつぶやいてたんだけど、これ面白いなと思って。そこで、じゃあ月曜日にブルータルマンデーって名前借りてやろうと思って。月曜に負けるな、ってのが裏テーマ。
最近は土日にイベントが被りすぎてて。で、被ってるのって別にいいことだと思うんですよ。だって、あちこちでどこ行っても面白いイベントやってるってすごいアツい状況だから。
HP 街がフェス状態というか・・・
藤田 それで街全体が豊かになるけど、でもそれが土日だけはつまんないから、1週間全部を面白くすればいいんじゃないか、って。
近藤 スピッツの平日チケット安い・・・
藤田 まあ、そういうことだね。だし、他の人がやってないことには絶対それだけで価値があるから、だから企画名にも「vol.1」はつけて、定期的にやりたいとは思ってるけど。
あと8月9月が小島の仕事の関係で、ライブ2本しかなかった。で、METEO NIGHTから1か月半以上空いちゃって、だからここに入れようみたいなので、月曜が1番都合良かったのもあったり、いろんな事情だけど、でもずっと考えてたな、平日にどうやってイベントやるかということは。
で、ライブハウスだと自分たちの規模感だとリスキーだから、ドムスタ(高円寺SOUND STUDIO DOM)だったら予約無しでもフラっと来て、で、なんていうか、月曜にライブ来れる人って何か抱えてる人もいるんじゃないかと思ったから。自分たちと似た環境やそれに共感してくれる人たちが来たいと思うもの、その受け皿みたいなものを定期的に作れればって。
HP 意外とね、有給とってる人とかいるだろうしね。
藤田 そうそう。そして、何よりもお願いしたいのは、働いてる人は次の日の午前半休はお願いしたい。 打ち上げを朝までやっても大丈夫なように。
HP 俺は告知見て、会社のカレンダーにすぐに有休って入力して・・・
藤田 次の日取った方がいいですよ。出演者は全員残るかわかんないけど、少なくとも高倉健は・・・。
過去にやってたコピバンの話、大阪でのHPとの確執
藤田 すいません、 バイスサワーを2つ?あ、3つ?
HP 黒ホッピーを。
近藤 じゃあお茶割りお願いします。
史人 お茶割り結構濃いよ。
小島 瓶ビール。
藤田 やっぱ話聞いてくれるってなると、何よりuxnxixcxexfの時の話がやっぱり。高倉の面白い話もあるつもりだけど、 uxnxixcxexfの頃めっちゃ面白いことやったのに誰にも相手されなかったから、もったいない。
HP ウエスタンの時はコピバンをやってたの?
藤田 全部コピバンです、あと即興。ハードコアはSIEGE、BLACK FLAG、あとスターリンとか、ニーハオ!!!!もやったし。
HP その頃は3人(小島、藤田、近藤)だけでやってたわけじゃなくて、いろんな人が・・・
藤田 ごちゃごちゃに、もっといっぱいいるけど、あとは、小島はじゃがたらとか、POP GROUPもやってたし、あと、俺がボーカルでオシリペンペンズとZUINOSINをやった。ZUINOSINって関西ゼロ世代のめっちゃやばいバンドが居て、大阪のMIDI-saiとか、BOGULTAのメンバーの、 ほんとにやばい。MIDI-saiも行って・・・。
HP 大阪まで行ったの?
藤田 いや、東京でやった時があって。
HP それ俺も行った。そこでニアミスしてたんだね。
藤田 だからMARUOSAさんを企画に誘ってるのも、それこそ死んだ友達とかもそうだけど、 めちゃくちゃウエスタンの中で流行ってたよね、ZUINOSIN、MARUOSAさん。
HP MARUOSA今もめっちゃかっこいいよね、もうブレイクコアですらないというか。
藤田 むしろ今のはもうバンドで再現出来そうというか 、音数も減った印象がありますよね。初期の情報量多くてめちゃくちゃな感じですごく好きだったな。今だと廃材さんに重なるところもあると思う。
HP HAIZAI AUDIOか、企画呼んでたよね?
藤田 要所要所の大事なイベントに毎回出てもらって、俺がもう、個人的に超ファンだから。
HP 小岩(BUSH BASH)で企画やった時も出てた?
藤田 いや、桜台POOLとドムスタですね。
そもそも高倉健企画って、ヒデジさんが初めて来てくれた時が1回目なんすけど・・・中野MOON STEPで。
HP 俺がペニボの1曲目で滑って転んだ日だ。
藤田 最前衛で盛り上がってて、朝まで一緒に。
HP あのときメンタル崩壊してたから・・・。
藤田 ヒデジさん朝までいて、帰りの後ろ姿見て「あの人結婚してるらしいよ」って聞いて、みんなびっくりして・・・。
一同 笑
藤田 「子供もいるらしいぞ!」つって。
近藤 いや、大阪でのPLONQUOSがやばくて。俺この人関わっちゃダメな人だ、って。
藤田 かましてましたよね。打ち上げのあのかまし方やばかった。
近藤 ライブめちゃめちゃよかったのに、打ち上げで、あの鍋の下り。壮絶なよくわかんない。
(HP注:当時自分がカレーではなく「カレー味」にハマっていた時期で、打ち上げのもつ鍋屋で「カレーもつ鍋無いの?」って話してたら、FAAFAAZのフナキ氏が気を遣って&先走って「すいません!こっちのテーブルの鍋はカレーで!」とスタッフに言ったら、案の定そんなメニューは無くて、店員が呆れ気味に「ない、ない」と返して一同失笑だったというウンコ話のことだと思います)
藤田 マジでわかんなかったね。高倉健全員CD-R買ってんのに塩対応でさ。
HP 一人でやるとね、お釣りが無いとかさ、そういう細かいことも全部自分でやるからさ、結構ドタバタでさ・・・。
初期の企画、penisboysとの出会い
藤田 で、その時が高倉健で初めて大阪行った時で。それまでがペニボと共同企画みたいな「健族」って名前で2回企画をやってて、その2回目にMARUOSAさんとかも誘ってて、1回目がHAIZAI AUDIOと黒パイプで。あとCHIBASTATION。チバさんって人がやってるやつなんですけど、もう、あの人マジで天才です。ほんとにすごい。おかしい。うん。曲がめちゃくちゃいいし、演奏もうまいし。 だからこの間「もう金払ってのライブは出演しない」みたいなことをXに書いてたけど「チバさんブッキングでやるんだ!?」みたいな、もうあんな、すごい人が。これは本人に言わないとあれだけど、 チバさんはほんとに天才。
HP 我々が大阪で一緒にやったのが2022年?ってことは割と高倉健の活動開始してすぐに出会ってるってことになるのか?
藤田 最初の1年はほぼもうペニボとわちゃわちゃやってて、あとラジオ、最初の1年ラジオだけしかやってなくて。
HP 大阪での打ち上げのときに「東京のどこで遊んでるの?」って聞いたら「高円寺で遊んでる」って言ってて、それが健族企画とかを高円寺でやってたって意味だったのかな?
藤田 あと、ペニポと高円寺でずっと北口で遊んでる時期あったから。
HP でも誰も高円寺住んではいないでしょ?
藤田 やっぱ1番でかかったのが、高倉健で初めて外でライブやるってなった時、それこそ活動開始して最初にUFO CLUBに出て、箱入り気分のときから関わりがあって、uxnxixcxexfでも出て、ブッキングで金払って、それで出たら客でペニボのなみちゃんとヤマジが来てくれて、あ、違うな、これ、話前後するけど、まず高倉健の最初のライブが、おれが3つ新しいバンド始めるって、自主企画を、誰も知り合いもいない段階でやったんですよ、ドムスタで。その3つの中で今残ってるのは高倉健だけで、自分がボーカルやるバンドがアパシーズ、 小島とやるハードコアバンドが高倉健、あともう1つ5人くらいでノイズっぽいことやったのがThe Omeco Trio。全部別に悪くなかったんだけど・・・
近藤 その時ペニボの・・・
藤田 ペニボのメンバーが全員来てくれて!
HP ペニボとはuxnxixcxexfのときから仲良かったの?
近藤 uxnxixcxexfでUFO CLUBの平日ブッキング出たときの対バンがペニボだったんですよ。そん時ライブ見て衝撃で。
藤田 近藤くん元々VOGOSが好きだから。
近藤 俺はPIT BARでVOGOS、HORSE&DEER、HISA☆TAKA、NAMASTE、NK6ってメンツ・・・
藤田 それを近藤くんが見に行ってて「VOGOSのメンバーが居るpenisboysだ」って言ってて。で、対バンした時にペニボが見てくれて、終わった後に連絡先聞かれて話しかけられて「anal cunt好きなの?」「お前何好きなの?」「futures好き」とかみたいな話して、そのときなみちゃんにいきなり「お前たちはシンセを入れたほうが良い」とか言われて、今だったらなみちゃんのそういうノリも分かるけど、その日はすげぇムカついて「あいつは何も分かってない、あのふとっちょが、デブ、デブ」とかずっと言ってて・・・。
HP そこはNO SYNTHESIZERでしょう。
ライブの尺の話
藤田 uxnxixcxexfのときは今よりもライブ短くて、5分、いや、3,4分で。
近藤 ブッキングで30分枠もらって5分で終わらすのが・・・
藤田 そう!で、なんでみんな30分ギリギリまでやるんだろうって思ってて。そしたら他のライブハウスでやったときに「5分間じゃ物足りないから、もっとちゃんとできるようにならなきゃダメだよ」ってブッキングの人に言われて、俺たちがやりたいことなんも分かってねぇ、みたいな。
史人 なんかその発言が、当時の・・・
藤田 その時もちゃんと言ったけど、5分間で自分たちが全力を出し切って、それで何も思わないなら、自分たちの演奏が至らないだけだから、このスタイルは変えない。あっちは30分やれっつったけど、 いや、自分たちが足りないだけだから、もっとこの形で良くしていきたいですみたいな話をして。
HP 自分の話だけど、最初にWALLにブッキングで出た時に曲が4曲ぐらいしかなくて「ちょっとまだ25分とか30分とかできないんですけど」って言ったら当時ブッキングしてくれたナオキさんに「短い分には全然いいよ!」って言われて。
藤田 絶対ライブって短い方がいいじゃないですか。つまんないバンドの30分聞けないから。
あと5曲って言われて「えっ・・・!?もう良くね?」みたいな。
HP 外のコンビニのこととか考え始めちゃってね。
藤田 聞く側の欲望にそこまで沿う必要はないけど、それぞれが自分に合った形を限界まで突き詰めてやりゃいいのになと思う。
藤田、METEO NIGHT一人反省会→唐突に歌詞の話へ
藤田 METEO NIGHTの日は、別にあんまいいライブが出来たわけじゃなくて、だけど、イベントがいいから盛り上がる。バンドの良さとイベントの良さって関係性はあるけど、違うものだとも思ってて。あの日はもう、METEO NIGHTっていうすごいイベントのおかげで自分たちも良いライブになった。というか単純に、あの日の高倉に関しては俺がマジで良くない、機材トラブルありすぎだから。あのアンプがまず良くない。
近藤 反省会始まった。
藤田 なんかね、ギターの音が弱くなったんだよ、まぁ、あの環境では精一杯やったと思うけど、でもセットリストもよくなかった。
HP ライブ中盤でやる「戦争反対」みたいな曲あるでしょ?
藤田 歌詞の内容を言うと「夜な夜な始まるバカ話」ってのは、高倉健を始めてから最初はライブをやらずにpodcastでラジオをやってたから、ずっと夜中にzoomで録音してたんですよ。没のもいっぱいあったし、喧嘩もしたりしてるんですけど、そのことを歌詞にしてて。それで「夜な夜な始まるバカ話、喋れども喋れどもオチは無し」って続くんだけど、もう喋っても喋ってもオチがないってことばかりで。「馬鹿な友達死んで悲しい、けどネタにしちゃえばちょっと楽しい」ってのが、その自殺しちゃった友達のことで。 戦争反対の歌っていっぱいあるけど、力強いものばかりで自分にピンとくるものがなかった。戦争反対は間違いないんだけども、それと同じように日常があるわけじゃないですか。戦争とは全く関係ないところで日々失う命もあるけど、それらは等しく大事で。そして「痛いの嫌い死ぬの怖い戦争反対逃げ出したい」って率直な思いを歌詞にして「戦争反対、酒が足りない」って続くんですけど、生活に根ざした上で戦争反対って言葉を使いたくて。戦争反対しながら酒飲むし、人が死んでても酒飲むし、友達が死んでも酒飲むし、楽しかったり笑ったりネタにしちゃったりするし、戦争反対という力強い言葉を軟弱な自分自身に沿ったものとして曲にしたかった。
あの歌詞はロシアのウクライナ侵攻の時に作ったけど、今にも当てはまると思う。 あの時に俺めちゃくちゃナイーブになっちゃって、ラジオとかもやめて「俺参加しない、今喋る気分じゃない」みたいな時期もあったけど。それでも人生は続くわけで、例えばおばあちゃんの葬儀の後にオナニーするようなことがあるわけじゃないですか。その重層性を盛り込みたいと思って、戦争反対っていうタイトルでああいうのやってる、戦争反対って言葉は重要だと思うんですよ、当たり前だし・・・
近藤 当たり前にあるけど、あんまり重たくなく、そう・・・
藤田 そうそう。だからああいう軽さでやってる。だから戦争反対ってテーマが重く扱われすぎてるのが嫌で。
近藤 無理ない感じでやりた・・・
藤田 そう!だから高倉健の「戦争反対」はめっちゃ軽い。でも生活に根差した強さもあると思うし、自分の中ではすごい気に入ってる。今やってる曲、 基本は気に入ってるんですけど。てか自分たちのスタイルはやっぱり気に入ってはいる。
またMETEO NIGHTの話に戻りズッコケ論について2,3
HP ちょっと1回整理。METEO NIGHTの時に、その曲をやってる時に何が起きたの?
藤田 小島が疲れて、歌を抜いた。そこ俺がカバーしたから音的には大丈夫だったんだけど
HP フレーズが飛んだみたいな?
小島 いや、息が続かなくて。そしたらシュン(藤田)がやってくれたから、まぁいいか、って。
藤田 ライブとしては小島よかったし、全体を見ると俺がよくない。別にあの日の高倉はよくない、いや、もっと良くなる。
近藤 いやMETEO NIGHT、めっちゃ楽しか・・・
藤田 めっちゃ楽しかったしライブとしても良かったけど、ライブの良さと演奏の良さは別で、演奏もよくしたいから切り分けて考えちゃう。
近藤 HIKOさんにもらったスティックが折れた。
史人 いや、その日近藤くんのドラムがめちゃくちゃ良くて・・・
藤田 みんなに愛されてるの超感じたし、あの空気を作れたのはよかったです。てか、ヒデジさん、来てくださいよ!
HP 見たいバンドばっかだったのだけどね・・・。
(HP注:METEO NIGHT当日、私は奥多摩でキャンプをしていたので不参加だったのです)
近藤 YUKARIさんに「次は高倉健!」って言われたのすげぇ嬉しかった。
藤田 それを俺も引用して「次はpenisboys!」ってやったら、ペニボが全然準備出来てなくて、そっから10分ぐらい音出しして、やっと一曲目やったと思ったら、八割終わったのにまたやり直すっていうグダグダなライブで・・・。
(HP注:当日のタイムテーブルを見るとO-NESTのステージとフロアで交互にライブが展開されてて、ニーハオ!!!!+doravideo!!!!、高倉健、ペニボの流れだった様子)
藤田 とはいえ俺も「賞味期限切れバラード」で最初の音ズラしちゃって。やっぱ硬くなってんだって、あの時に気付いて。音を外して初めて、でもそれでいいと思ってて、そのズッコケからもう1回始めてね。
HP この前のスラスラ企画のFEVERのときだって、藤田くんいきなりピック落としてさ、あんなイケてるピックの落とし方ないでしょ。
藤田 ちなみにだけど、練習の時とかレコーディングの時、一切ミスしないんですよ。
HP あぁ、練習してんだ。
近藤 メンバーにも「ミスするなっ!」って言ってて。
HP FEVERの規模であんなお客さん居てさ、トップバッター高倉健!つって出て来て、出囃子から大合唱で盛り上がって「ウエスタンの魂を見せてみろ!」ってやって、リフ入る瞬間にポロッ、あっ・・・とかいって。
史人 あの黄色のピックが・・・。
ディスクユニオンスタッフ時代の話からノイズ、ジャズ、そして超芸術まで
藤田 ユニオンで働いてた時も、朝礼とかで言うこと全部忘れて、それでみんなが笑顔になるような・・・。
HP あ、ユニオンで働いてたんだ。どこの店舗?
藤田 北浦和店でノイズ/アヴァンギャルドとか日本のロックとか担当してて。総合店なんだけど他の店舗でかけないようなのをやたらと流して、裸のラリーズとか・・・一生懸命かけて。「これを売る」って決めたら、絶対に他の人に譲らないで、自分が正しいって思いが揺るぎなかったから。
近藤 ポップとかも作ってたんでしょ。
藤田 めっちゃ作ってた。昼休みとかも・・・ワーカホリックでよくないですよね。
史人 ユニオンは勉強だったな・・・。
HP ん?史人くんもユニオンで働いてたの?
藤田 そう!ユニオンで働いてて!
史人 おれはジャズ館で・・・
藤田 これ大事なんですけど、史人くんは菊地成孔の私塾に行ってたけど、俺は美学校って場所に行きたくて、そこで菊地成孔に簡単な理論を習ってて。その美学校ってのが赤瀬川源平とかの・・・
HP 赤瀬川源平ってトマソンの人?
藤田 そうそうそう!uxnxixcxexfはめちゃくちゃ影響受けてます。ハイレッド・センターとか。俺はハプニングとかストリートアートとか好きだったから、当時は音楽よりそっちの方が刺激を感じたんだよね。
アンダーグラウンドシーンの繋がり
藤田 でも今は割と素直に音楽やるようになって、CDも出してるし、それは別に自分の中で矛盾してるわけじゃなくて、音楽やるっていうのが社会なんだってことがようやく分かって。人と関わるのが大事だし、だからと言って変に営業みたいなのはやらないけど・・・。ほんとに人との繋がりでこのシーンができてるってことはちゃんと理解したから。uxnxixcxexfの頃は他のバンドとか見なかったし。
近藤 そのきっかけがペニボだった。
藤田 ペニボと、やっほー(岡山のハマイシンタロウによる激速チップチューンハードコアプロジェクト)が教えてくれた。そういう社会があるってことを。
近藤 もっと斜に構えてたもん。
藤田 でも当時の対バンはつまんないバンドが多かったからね、俺たちが当たってたの。
史人 でもその頃にBBと対バンできたのはよかったよね。
HP BBって、BBBBBBBB?岡崎市の?
藤田 そうそう。
近藤 Bが一個多いす。
藤田 もう俺すげえ好きだから。けど今とは違う感じでバンド編成だった覚えがある。
HP 名古屋住んでるときに見たな。
これインタビューとして成立してんのか?
HP すいません。ホッピーの中ください。
史人 お茶割りください。
藤田 これ絶対文字起こし出来ないものになってる。
小島 さっき・・・
藤田 あ、確かにウインナー頼んだよ。すいません、さっき赤ウインナー頼んだんですけど。
HP 小島くんは、こんなに色々なメニューがあるのに、赤ウィンナーを・・・?
小島 赤ウィンナー、めちゃうまい。
一同 ・・・。
藤田 今日はこれボツにしてもいいんで、今日一回全て出しておけば、多分この熱量は無くなって、次はもっと冷静に話せるかと・・・。今日はもう「これ話したい!これ話したい!!」みたいになっちゃってる。
近藤 一個の質問に対して百個出て来る。
HP 質問三つで十分だったな。
(HP注:当日は20個の質問を用意して、人数分紙焼きして持参した)
uxnxixcxexf からの変化、曲作り、ボーカルについて2,3
藤田 もちろん仲悪かった時とかもあったけどuxnxixcxexfはマジでやった、いや、高倉健もマジでやってるけど。
史人 でもuxnxixcxexfは、わかんなかった。マジで何やってるのかほんとにわかんなかった。
藤田 わからないし、近藤くんのドラムも普通に良くなかった。
HP uxnxixcxexfは曲とかじゃないの?もっと即興とかの?
近藤 最初は曲をやろうとしたんですけど、もうドラムが全然出来なくて。
藤田 DNAとかが原体験だったんですよ。アート・リンゼイの。だからコード弾くのがダサいと思ってる時期もあったりして。
近藤 色々試行錯誤する中でまずは「既存の曲を超短くカバーしよう!」ってなって。
藤田 その時に埼玉のスタジオで働いてて、ケチなスタジオだからスタッフが利用するときも金を取るですよ。だから、夜中に忍び込んで、0時から朝までやるつもりが、二時間ぐらいやると近藤くんが寝ちゃって、それでみんな横になって話したりして。
近藤 それがもう全然うまくいかなくて。で、その頃に池袋で子供がものすごい勢いで駄々こねてるの見て、uxnxixcxexfでそれをやろうって。
藤田 その音源はまだ上がってる。駄々コアって名付けたんですけど、今聴いても面白いよね。
HP 高倉健の曲の歌詞は誰が書いてるの?
藤田 最近はもうほぼ九割は自分になってるけど「賞味期限切れバラード」は曲とタイトルを俺が作って近藤くんに歌詞を書いてもらった。今は、曲数で言えば俺が九割書いてる。
HP ライブで三曲目の。
藤田 あの曲名がなんで賞味期限切れバラードかって言うと、ガセネタの「雨上がりのバラード」って曲があって、ああいう直線的な感じなのをやりたかったのと、Sleaford Modsみたいなことをやりたかった、ああいう8小節のループを。だから曲も一つのリフでずっと進めるのがやりたいなって。で、タイトルだけ「賞味期限切れバラード」って決めて近藤くんに歌詞作ってもらって。
HP あの曲は歌詞カード見ながら聴くと、韻を踏みながらスラーしてたりとか、ラフに聴こえるけど、すげえ音に乗ってて、練られてるなー、って思ったんだよね。
近藤 あの歌詞はガセネタとかfuturesをめっちゃ意識して書いた。
HP 小島くんは歌詞は書かないの?
藤田 今は仕事に疲弊して書く余裕がない。もちろん本当は書いたほうが良いけど、でも現状無理だったら他に書ける人がバンドに居るわけだし。でももし今後、歌詞を書けるようになったら、もっと良くなるんだろうなって感じはするけど。でも別に現状無理ならしょうがない。書いたほうがいいってしつこくお願いした時期もあるけど、かなり苦しんでたし、練習を飛ばした時とかあって。だったらもう、そこまで追い詰めてしまうなら、全部自分でやろうって切り替えて。
HP でも変な話、ライブ見てても歌わされてる感は全くない。
藤田 そもそも大学のコピバンのときから、曲を自分のものとしてやれてたし、すごい悪い言い方かもしれないけど、カラオケがうまい。
小島 でもそう。てかその方が僕は楽です。
HP つまり、誰かが表現した言葉に、自分の感情を乗っけることが出来るというか。
小島 そのやり方が全然、気持ちが・・・
藤田 これメンバーによくする話だけど、松浦亜弥が「私、歌詞書きたいんですよね」って松任谷由実に相談したことがあるらしくて「 歌詞書きたい人は既に書いている。あなたが今、他人の歌詞をこうやって歌えてるのは一つの才能だから、無理に書く必要はなくて、その才能を大事にすればいいよ」って松任谷由実が返した、みたいな話があって。確かにそれはそうだなって思うから。
それと同時に、俺はハードコアに思想まで求めたくなっちゃう。それはバンドメンバーそれぞれに対しても。でもそれは傲慢なのかなと思うから、あんまりこういう話はメンバーにはしなくなったけど・・・。
歌詞論、徐々にヒートアップする藤田
近藤 俺が詞を書くときは内省的なことしか書けない。
藤田 高倉健の歌詞って基本的にネガティブなことしか書いてなくて。そのネガティブなものをポップにやるようにしてるっていうか、必死にやってるのが笑っちゃうというか。ネガティブなものをそのままネガティブに、怒りをそのまま怒りで出し過ぎてるものがあまり好みではなくて。
スラスラって、歌詞は社会に対する批判的なものだったりするのに、ポップに表現されてる。だから逆にポップな歌詞を暗くやったり、意味を重層的にしなきゃ、面白くないと思うんですよ。
さっきの話にも戻るけど、戦争反対がテーマだったら日々の生活の中にある人間臭い矛盾を込めないと面白く無い。重いものと軽いものを同時にやりたい。暗いものを暗いまま表現するかっこいいバンドも居るとは思うけど、俺が好きなものってのは・・・
一同 ・・・。
藤田 だからさ!やっぱその辺の一種の捻くれてる感じの影響はさ、やっぱり銀杏BOYZの「人間」がでかいんじゃない?「戦争反対って言えばいいんだろう」っていうさ、皮肉や全体に収斂してしまうことへの怒り。あの歌詞は今では危ういとも思うけど・・・
史人 当時は・・・
HP 時代を捉えた言葉だったと思う。
藤田 戦争反対って力強く言いながらも、そこにある生活感も含めてやるのが、面白いと思ってる。
近藤 生活に根差してたい。
藤田 その辺は共有してる思う。だし、高倉はネガティブな要素多いし、ポップでは無いと思ってたけど、やっほーとこの前話してたら「お前たち相当ポップだからね、演奏もしっかりしてるし」みたいに言われて。それだったらすげえいいなと思って。確かにキャッチーだし、演奏もFAAFAAZよりかはしっかりしている。
一同 笑
ミックスの話から突然「アツくなっちまったな」になる藤田
藤田 とはいえ、俺もギターを思い通りに弾けないのがストレスでやりたくないと思うこともよくある・・・。この前のCDの編集作業してたらさ、自分の思い通りになるからさ。ライブの良さはもちろんあるけどね。
史人 今回のCDのミックスとかマスタリングもそうなんですけど、シュンくんが全部やってくれて。で、音が基本的にポップっていうか、ハードコアって全部が纏まって圧力が来るっていうイメージが自分の中にあったけど、今回のCDはそれぞれの音の要素がバラバラに入ってくるっていうか。
HP 最初のCD-Rと今回のCDで結構ミックスが変わったと感じたのだけど、その辺については・・・
藤田 てかこれ大丈夫ですか?なんか突然すげえ恥ずかしくなったけど、なんか俺たち、何か成し遂げた人みたいになってないですか?uxnxixcxexfも高倉健も何も成し遂げてないのに。
近藤 話聞いてくれるってなると尻尾振っちゃうから。
藤田 もう勝手に高い木に登っちゃうみたいな。
HP でも「成し遂げる」ってのが何を指すかわかんないけどさ、作品一個完成させるとか、それこそ一曲作るだけでもさ、それって大変なことでさ。
藤田 わかる。めっちゃ大変。やればわかるから。どれだけ大変なことか。
HP それがね「まだできないです」とか「もうちょっと頑張ってから出します」っていう風に尻込みしちゃうけどさ「自分は現段階ではコレ!」っていうのをやるの、すげえいいことだと思うんだよね。
近藤 それで言ったら全く真逆のこと言っちゃうけど、今結構、高倉健、忙しい。
藤田 忙しいけど、そういう状態を求めてやってるから、充実してる。友達も一杯できたし。こんなインタビューも、ヒデジさんやってくれて、普通に幸せだよ。こういうものを求めてやってるのに、どんだけuxnxixcxexfの頃とかキツかったか。
茄子と厚揚げが来る
HP これ絶対うまいやつでしょ。
藤田 家で作れそうな・・・。
小島 友達の家で食べるタイプの・・・。
HP 土曜に朝まで飲んで友達ん家泊まって、昼過ぎに起きて二日酔いのまま仕方なくまたビール飲み始めたときに「冷蔵庫の中にあった物で適当に作ったツマミなんだけど」みたいな。
藤田 そういう人、友達のパジャマまで用意してそう。泊まることを前提に。
近藤 小島さん家泊まったら、漬物と焼き魚とみそ汁出て来て・・・。
藤田 それ泊まること前提に用意してるやつだ。俺も小島ん家行ったら、あさりの酒蒸し出て来て。あさりなんて常備しないでしょ。
HP 「今日は藤田来るから、あさり買っとこう」って。
藤田 普通にもてなしてくれてるのを感じるから。
近藤 小島さんちの朝飯はやばい。
藤田 アサリの酒蒸し、やらない。貝類、買わない。
HP 砂抜きとかね、時間も手間もかかるから。
タバコの銘柄、愛のあるサンプリング
HP ちょっとこれ聞きたかったんだけど、みんなタバコ吸うでしょ。銘柄が何か、一人ずつ教えて。
近藤 チェのシャグです。シルバー。
HP チェって、革命家のチェ・ゲバラ?の手巻きのやつで。史人くんも手巻きだよね?
史人 手巻きです。アークロイヤルのバージニアゴールド。
小島 アメスピの青。
HP メンソール?
小島 いや、普通のですね。
藤田 おれはLARK。高倉健(俳優のほう)がCMをやってた。
HP そうなんだよ!このタバコの銘柄の質問さ、なんとなく思いついてさ。で、この前エルプエンテで高倉健メンバーらに会ったときに「今度さ、インタビューしたいんだけど。例えばタバコの銘柄とかさ、そういうカジュアルな質問とかも・・・」って言ったら、藤田くんが「いや、おれLARKですけど、その質問、何時間でも話せますよ!」とかグイグイ食い付いて来て。で、翌日ボケっとSNS見てたら「昭和の日本の広告」みたいなアカウントの画像が流れて来てさ、俳優のほうの高倉健がLARKの広告やってるポスター見掛けてさ。「藤田!あの野郎~!!そういうことか~!」みたいになってさ。
藤田 だって、ハードコアバンドをやる上で改めてハードコアめっちゃ聴いたし、高倉健っていう名前を付けてからも、高倉健の本とかもう色んなものをめっちゃ買ってはいる。礼儀じゃないけど、何かをやる上で大事なことだと思うから。
HP そういう人な気がする。高倉健を始めてからLARKにしたの?
藤田 そうそうそう、いや吸ってない時期とかもあったけど、高倉健を始めてからはもう、LARK。
HP 愛のないサンプリングはしない人って気がする。
藤田 高倉健は全員そうだと思うけど、そもそもが愛に飢えてるから、関わった人たちに対する愛情みたいなのが、めっちゃ強い。だからLARKも、美味しいとかどうこうではなく、もうこれでしかないっていう。
HP 我々の育った世代ってさ、タバコの広告がなかったじゃん。そのせいか「LARKはおじさんタバコ」とか言われてもさ、イマイチ実体が伴わないというかさ。
自分が名古屋に住んでる時、近所に角打ちが出来る酒屋があって、普通の酒屋なんだけど、タバコも売ってて、店内のカウンターで飲める店があったの。で、立ち飲みスペースに定番の漫画とか、ちょっとした文庫本とか、少し古い街のガイドブックとか、なんとなく飲みながら眺めるのに丁度良い本が置いてて、その中に80年代?90年代?のタバコのカタログみたいな冊子があって。日本全体が金持ちだったのかな、銘柄ごとの写真が一枚一枚すげえ凝ってて・・・。
藤田 当時の広告はめっちゃ凝ってますよ。やっぱあれ時代がね、テンプレを用いるにしても細かいところを詰めてて。
HP フォントも写真も・・・。各銘柄のイメージ写真の中でその銘柄に合う灰皿とかも選ばれてて。「なるほどLARKはこういうイメージなんだ」って可視化されるというか。自分は基本的にタバコ吸わないから分からない面が大きいんだけど、全ての銘柄にね、イメージがすごい・・・
藤田 ありますあります。
近藤 タバコの広告で言ったら、パーラメントの広告、めっちゃアーバンでおしゃれ。高級感があって。
HP で、タバコの銘柄に関連してみんなに訊きたかったのは「なりたい自分像」というか、それによってブランドを選ぶみたいなことはあるわけじゃない?逆に「こうは見られたくないな」って銘柄は選ばないだろうし。「味は好きだけど、今はマルボロメンソールライトとか吸えねぇな」みたいなさ。
藤田 だからそれこそ高倉健、CHARLES BRONSONからの引用についてはよく言われるけど、言われる前は分かりやすいようにYouth AttackのTシャツをよく着てたし、そういう匂わせというか、見る側がどう読み解くかみたいなのを散りばめてる。だからLARK吸ってたら「あ、高倉健じゃん!」みたいになってくれたら面白い。
HP それ今まで気付かれたことあるの?
藤田 無いです。
近藤 俺は単純に生活に根差した・・・
藤田 近藤くんは一杯吸うから。
HP 手巻きはやっぱり安上がりなの?
近藤 コスパが全然違う。
HP 小島くんはアメスピになんか思い入れがあるの?オーガニック的な?
小島 いや、長く吸えるんすよ。
HP 着火剤が入ってないんだっけ。
近藤 葉っぱもめちゃめちゃ詰まってるから。
藤田 俺はLARKの前はラッキーストライクだったし、学生の時はウィンストンだった。
HP 割と渋い系というか・・・。
藤田 デザインがかっこいいなってのがまずあったから。やっぱLARKは今もかっこいいですよね。かっこいいと思うよ。普通にやっぱいい。
史人 当時のデザインと変わってない。
藤田 かっこつけて吸ってる感じもしないんで。だって俺がJPS吸ってたらやばくないですか?
HP あの、黒いボックスに金文字の・・・。
藤田 やっぱり合う合わないってのもあると思う。
HP おれの大学の軽音部のやつで、清春ってあだ名のやつが居て、まぁ名前の通り黒夢の清春みたいな感じで全身真っ黒なんだけど、タバコもJPS吸ってて、そこまで行くとギャグっぽさが出て来て。
藤田 でもあれかっこいいよね、中二病の心をくすぐる。俺は今ダサいと思っちゃうけど、学生時代にはかっこよく見えてた。
近藤 大学時代ブラックデビル吸ってたやついたじゃん、チャラいやつ。
藤田 居た居た!あれはチャラすぎてもう・・・。でも俺も高校生の時とか、味付きのグリーンアップル味のとか吸ってて・・・。
話は流れて使用機材の話、そして髪型の話題へ
HP 俺ね、黒のレスポールカスタムを使うやつはクズだと決めつけちゃうんだけど・・・。
藤田 いないすもんね、逆に。
HP クズは言い過ぎたけど、一種の憧れはあるけど、なんかカッコ良過ぎて照れるじゃん。
おれ、高倉健は使ってる楽器もカッコイイなと思ってて・・・
史人 この機材使ってるとカッコイイとか、あんまり考えたことない。
HP いや、史人くんかっこいいの使ってるでしょ!オリンピックホワイトのフェンダープレシジョンベース!シド・ヴィシャスと同じやつじゃんよ!
藤田 でも史人くん迷走期もめっちゃあるから。
史人 その前はSGベースを・・・
藤田 いや安いのばっか一杯買ってたから、一回ちゃんと良いのを買って固めた方がいいよって言って。
HP いくらしたの?
史人 あれは11万。
HP 楽器としては言うほど高くは無い・・・。
史人 いや、でも俺にとっては結構・・・。
近藤 でもフェンダーUSAでしょ?
史人 そう。でもUSAでも一番安めのやつ。でも俺、シドじゃなくてRAMONESのつもりだったんですよ。そしたら周りからシドだとか言われて。何やらシドもRAMONESが使ってたから同じのを使ってたってことを後で知って。買った後に恥ずかしくなったけど、でも買って良かった。
HP あぁ、そういう流れなのね。そういえば最初に出会ったとき、髪型こんなラモーン感無かったよね?
史人 ちゃんと伸ばそうと思って。
近藤 去年のM-1の敗者復活でバッテリィズを見て・・・
史人 「バンドにはとりあえず一人ぐらいロン毛のやつが居たほうが良いだろう」って言って、ただ伸ばしてるだけだったけど。そしたら近藤くんがそれを教えてくれて。
近藤 たまたまM-1の敗者復活を岩波さん家で見てて、バッテリィズが、なんかやばい髪型の人だなと。
史人 それまでもうほんとボサボサだったんですけど、その後は職場であんまり言われなくなりました。いや、たまたまかもしれないけど。
そろそろ〆たいHPと更に荒れる藤田
HP (紙焼きの質問リストを見ながら) なんかもういいかな、全部聞いた気がするな。なんかもう疲れたな・・・。でも機材の話はもうちょっと訊くか。藤田くんは?
藤田 元々ジャズマスターで。それでずっと出来れば良かったけど。そのジャズマスター、フェンダーUSAなんすけど、高校の時に友達から一万円で譲ってもらったやつで。で、今はテレキャス。ジャズマスターだとハードコアやるには出力が弱すぎて使い物にならなくなっちゃって。
HP ピックアップは?普通のまま?テレキャスなのに音でかいよね?
藤田 ピックアップは普通のまま。でもアンプ二台繋いでるんで。
HP 史人くんはそもそもジャズ畑なんでしょ?
史人 そう、まぁ、ジャズ、いや、ジャズ畑って言われるとそんな全然・・・
藤田 全然ジャズ畑でしょ。
HP それで、速いハードコアとか通って無かったんでしょ?
史人 全然。MINOR THREATも知らないくらい。
HP じゃあ、ハードコアのピックでベベべべみたいのは、そんなにやって無かったわけだ?
史人 やってなかった。
藤田 やっぱりハードコアってすごい特殊ですよ。その身体性みたいなのって、ちょっと鍛えないとやれない。それはボーカルもそうだし、楽器もそうだし、他の音楽とはちょっと違う気がする。だってヒデジさんめっちゃ走り込んでる。ライブの時、息切れしないで歌いきって、綺麗過ぎるくらいちゃんと全部成立させて。あれはめちゃくちゃ凄い。
史人 この前の鶯谷what’s upでも歌詞ちゃんと聞き取れて。
藤田 小島も走り込んだ方がいいよ。
小島 どうする?俺がヒデジさんよりも走れたら?
藤田 いや、走れない!8キロとか10キロとか走ってる人だよ!?朝一に、仕事行く前に!普通にそれをやってる。あのね、小島ね、俺たちもね、練習しているからね!曲も歌詞も作るし、その上で弾いてる。小島はね、舐め過ぎ!自分で作った曲でも最初は弾けないからね!
小島 自分で作ったのに弾けないの?
藤田 弾けない!
史人 デモで録音したものがベストテイクで、その後は反復練習を。
近藤 おれも作った曲はめっちゃ練習する。
小島 え、その10キロ走るって何?朝?どれくらいの時間で?
HP 1時間くらいで・・・。
藤田 いや、俺ですら走ってるからね?
小島 10キロ!?
藤田 いや、3キロぐらい・・・。
小島 3キロか・・・。
藤田 俺は引きこもりだからさ。運動のためではあるんだけど。
近藤 ちなみに俺は50メートルも走れない。
藤田 いや近藤くん体力無さ過ぎる。鍛えた方が良い。ドラム体力無さ過ぎ。高倉健のライブさ、前半の3分くらい良いのに、後半がひどいんだよね。
史人 フロアから「おい疲れてんぞ!」とか言われて。
藤田 あの野次はキツイよね、応援されるやつ。で、その人がアンコールとか、もっとやれー!とか言って来て。
HP でも、それとカッコイイかどうかって意外と別問題だったりもするしね。この前、王子の野外ステージでゲバ棒見たら、その日暑過ぎて、もうステージに登場する段階で5人ともヘロヘロで。でも見てる側はそれすらもアガる、みたいな。
史人 そうそう、もう暑過ぎて。
HP それがかっこいい、みたいな。
藤田 これは言葉に棘があるかもしれないけど、かっこいいバンドって、バンドに対して身体も生活も作ってるから。落ち着いた生活の人がやってるバンドを物足りなく感じることがある。年齢とかもあるし、インプットの量が減ったり、しょうがないことだし、俺もそうなんだろうけど・・・。その中で、やっぱり凄いのがスラスラとHIMOとジアクト。今の若い人たちは演奏も上手いし、ほんとにやばいバンドもたくさんいるけど、それは置いといて、上の世代で指針になるような人がいるのはありがたい。
この辺りからインタビューというか藤田が一人で喋ってるだけ
小島 お茶割り。
近藤 ウーロン茶ください・・・。
藤田 KUBOTAさんが褒めてくれたりとか、スラスラのメンバーが好いてくれるなんて、本当にあり得ないことで。
近藤 めっちゃ踊ってた。
藤田 そういえばうちさんもめっちゃ踊ってた。ペニボの時にダイブさせられてて。あとコレヒコさんにも近藤くんが挨拶出来て。HIMOのSYUCREAMさんが「高倉健がサンプリングしてるよ」って言ってくれてて。コピーまでして・・・。
近藤 楽曲使用料、ハイネケン一杯。
藤田 コレヒコさんは、もう怖いというか・・・。ずっと尊敬してる中でも尊敬の仕方が違う。だって俺たちの学生の頃の初期体験っていうか、俺たちどんだけデラシネに憧れてたんだよ、って。その本人の前でデラシネのカバーやって、それで出来がよくないって。でもまぁ、METEO NIGHTのライブはもう、反省して。だから次はね、近藤くん、小島は体力。俺は機材トラブル。でも史人くんが安定してたのはよかった。俺はあそこまで動いちゃうと、出音が安定しなかったりするから。
史人 機材トラブルを気にしながらやってるのがすげえ伝わったから。
藤田 あの日は大人しかった。
HP でもシールドが抜けた瞬間がカッコイイみたいなこともあるでしょ?
藤田 それは出来たと思うし、METEO NIGHTでは自分たちも結構よかった方だと思うんだけど。タイムテーブルもぐちゃぐちゃで外で他の出演者と話したり、物販やってたら見たいバンドを結構見逃しちゃって。
HP本気の〆モード。イージーアンドバイオレンスからモッシュの話へ。もちろん藤田は止まらない。
HP 最後の質問!高倉健のTシャツとかに書いてある「イージーアンドバイオレンス」って言葉は何なの?
藤田 これはCHARLES BRONSONのライブ動画で、悪乗りした客が曲間で「イージーアンドバイオレンス!」って言うんですよ。そこから取ってて。それが自分たちに合ってるなって。イージー、気軽さと、バイオレンスの。
HP なるほどね。じゃあパワーバイオレンスをちょっとこう、揶揄するじゃないけど・・・
近藤 そもそも本当にイージーアンドバイオレンスって言ってるかも分から・・・
藤田 分からないけど、そう聞こえる。で、元々その部分に書いてあるのは「ノーモアバイオレンス」だったんですよ。バイオレンスって言葉を批判的に扱いたかった。パワーバイオレンスとかハードコアにある暴力性とか、今の時代って言い方もあれだけど、暴力はいけないって当たり前のことを当たり前に言わなければいけない時期だと思ってるから。パワーバイオレンスって音楽の1ジャンルの名称でしかないけど、普通に戦争とかある中でその辺は意識的でありたいと思った。もちろんパワーバイオレンスは大好きだし、そこに属するバンドも尊敬してるんだけど、ただ自分がその言葉を使うのはためらった。だけどノーモアバイオレンスって言葉を自分の意図とは違う形で使ってる人がいるという話を聞いて。だからイージーアンドバイオレンスに変えました。
HP 纏めると・・・CHARLES BRONSONの客が叫んだ何かが「イージーアンドバイオレンス」に聞こえて、それが高倉健に刺さったと。
藤田 俺の中でノーモアバイオレンスと同義として扱ってる。ただ、今の話しと矛盾することかもしれないけど、今モッシュについてイベントの主催者が定義づけて表明するのをよく目にしますよね。この状況が少し息苦しく感じて、よく考えさせられる。
HP 大事な段階だと思うけど・・・。
藤田 うんうん。でも、俺はあんまり、自分が企画するイベントでああいう打ち出し方はしたくない。確かに正しいし共感もしているんだけど、基本は「自分の踊り方で踊ればいいんだよ」てことに尽きると思うし、ちょっと行き届きすぎてる気がして俺は行くのをためらって。
事故とか起きちゃう状況って複雑だとも思ってて。怪我なんて無いほうがいいけど、怪我しちゃう瞬間もやっぱあるんですよ、ライブだったら。それは意図してないし、どんなに配慮してても起こしてしまうことがある、そういうことをしてしまった後にどういった行動ができるか、それは本当に大事だと思う。
近藤 俺この間、耳の形変わっちゃったんです。
一同 うわ!本当だ!
藤田 だからこの耳だって、写真撮ってSNSに上げたら「ライブ行ったらこうなった」とか言って炎上するんだろうけど。いや、こういう瞬間もあるし、みんな必死だから、肯定しないけど、いやでもやっぱそれはあるんじゃないかなって思う。多くの人が安心して楽しめる場はもちろん大事だけど、自分が作れるのは少数の人のためにゾーニングした場所でしかないってことなのかもしれないすね。なんにせよ色んな場が在るってことはすごく大事だと思っていて・・・
一同 ・・・。
HP 終わるか・・・。
フジタシュンによる
「あとがき、というより感想…うーん弁明?」
てな感じでインタビュー終えたあとも飲み会は続き、飲み会が終わった後も俺と近藤くんは高円寺に移動して長州バーでなみちゃん、ヤマジと合流して朝まで飲んで喋り続けた。
ずっと喋ってるね、とよく言われる。自分では人見知りだし、寡黙で思慮深い自己像を思い描いているのだが、こんだけ言われるということはきっとそうなのだろう。たしかにおしゃべりが好きだ。会話ってオーガズムのない愛撫のようなものだと思う。だから快楽に身を委ねると延々と話し続けてしまうのだ。
思い返せば中学の時「そんなお喋りだと将来が不安になるよ」と先生に呆れられ、高校の時は私語に対する度重なる注意を無視してたらキレられた。最終的に取っ組み合いの喧嘩になり、70歳越えの年配先生だったのでナメてかかったら柔道を嗜んでいたらしく大敗を喫した。
後に文字起こしをすることなんてお構いなしにメンバー揃って散漫に話し続けていたら、枝葉に枝葉を生やして好き放題に伸び散らかした珍妙な大木のようなものになってしまった。自分たちにインタビューをしたいと申し出てくれたヒデジさんのように、その大木に魅力を感じる奇特な読者がいたら嬉しい。
何かを言及することで、そこからこぼれ落ちた言及しなかったものについて責められ、言及したとして、その言及の仕方を責められる時代に文章を残すメリットなんてあるのだろうか。最近はそんな暗いことばかり考えて言葉を残すのをためらっていた。
ヒデジさんが前書きにも書いているが、実際の話しはもっと散漫だったし、具体名を出して色んな人物や、場所、バンドについての悪口を言っている。すごくたくさん。
自分は悪口を言う人に好感を持つ。鈍器で後頭部を殴ってくるような悪口は引いてしまうこともあるけど、鋭い視点のものには唸らされるし、コンプレックスや私怨に塗れたものは素直だなと思い愛着すら湧く。
良い、悪いという価値判断はどんなに客観性を担保しようとしたところで好き、嫌いという主観的な趣向から逃れられない。
絵画が額縁や設置の仕方、場所によって見え方が変わるように、自分の好みもそれくらい可変的かついい加減なもので、極論どうでもいいものだと思ってる。だから、その時思ったことを嘘がないよう口にしてきたつもりだし、そういった軽口で災いを生んだこともあるけど、その災いのおかげで深まったものもあった。結果が全てという言葉があるけど、その結果だって時を経れば過程でしかないのかもしれない。そう考えると物事が引き起こす顛末なんてどうでもよくなって、ヒデジさんが誘ってくれたならやってみようという気になった。そして気づいたらノリノリで喋りまくっていた。
散漫とした会話の筋道をつくり、読み物としてまとめてくれたのは編者としてのヒデジさんの尽力のおかげだ。本当にありがとうございました。
ちなみに飲み会のテンションを削がない程度にたっくさん赤入れさせてもらいました。具体名を伏せた部分がいくつもある。その理由は文章として固着化することで、失われていく可能性がいっぱいあると思ったからだ。
きっと悪口は記憶という曖昧なものの上でするからいいのだ思う。嫌いだった物事をちょっとしたきっかけで好きになることがある。そして好きになったものはなるだけ大切にしていきたいと思う。今までにそういう経験を何度もしたからこそ、これからもそういう可能性を残しておきたいし、その時下した判断が結果ではなく過程でしかないのかもしれないということには常に留意していきたい。
というわけで最後までお付き合い頂いた皆さん、あざした。
フジタシュン(高倉健)
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