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FREE(FIRE AND WATER)と初めて味わった失恋の痛み

 何となくポールロジャースをしり、何となくこのアルバムを小倉の中古レコード屋で 買った。 本当になんとなくであった。 買ったまま封を開けることなく そのまま放置した。 アルバムジャケットの殺風景な 人物たち。 私は 興味を持つことがなかった。 19歳の冬の時だった。

20歳になった。 私は軽音楽部の ギターをやってる同級生の 女の子が好きになった。 一緒に食事に行ったり お互いの 部屋を行き来したり 一緒にレコードを聞いたり すごく幸せな時間を過ごした。 長崎の人だった。 すごく チャーミングで 好きな音楽は のジャンルは違えど 考え方に共感し 彼女が話す話も面白かった。 ギターに対する考え方も すごく共感ができた。 近所の 野球 焼き鳥屋さんに 頻繁に行った。 私は お酒はあまり強くなかったので 彼女の酒豪についていくことができなかったが、 彼女がよく飲んで飲んでいた 冷酒。 この味を私も覚えるようになった。
  夏祭りに一緒に行った時に 彼女に告白した。 真剣に私と付き合ってほしい。 ずっと私と一緒にいてほしい。 あなたが好きです。 あなたを愛してしまっている。 彼女の手を取った。 しかしその手は冷たくて 私は我に戻り その手を離した。 彼女からの返事はなかった。 その日以来 彼女は 私の電話に出ることなく 家に行ったが 彼女は出てこなかった。

 私は尊敬している 同じ 軽音楽サークルの 先輩がいた。 S 先輩という方である。 同じ楽器で やっていて よく教えてもらったりもした。 よく遊びにも連れて行ってもらった。 その先輩は 九州出身の先輩で、 私の関西弁を 面白がった。 ある時 酒の席 その先輩に「同級生の ギターのあの子が好きなんです 。告白しました」と言った。 その先輩は 目を丸くして 「実はごめん 、ずっと前から付き合っていたのよ。」 と言われた。 すごくショックだった。 飲めない酒 一気飲みして 、死ぬほど 吐いた。 もう死んでもいいと思った。 すごく苦しかった。 どうしてこんな苦しばなくてはいけないのか。 酔いが覚めると強烈な 二日酔い 。頭が痛い 。割れるように痛い 。そして心も 痛い。 そして、また買っていた 一升瓶の焼酎を コップに注ぐ。 そんな毎日を1週間ぐらい 繰り返した。 窓から 残暑の溢れ日が 容赦なく 私の汗を作る。 なんとなく このアルバムを聞いた。 歌詞の内容を見てみた。「火の中水の中 どんなことがあっても 愛してきたかな人が 去って行く 内容。 娘を連れて出てったに違いない 。 惨めな男の 失恋、 惨めな男の 失恋。」 まさしく 今の自分ではないか。

 秋になった。 学校も始まり 私の生活も 普段通りに戻った。 でも 失恋は引きずっていた。 毎日このフリーのアルバムを聞くことが日課になっていた まる先の量もそれに伴って増えていった。 ある日 手紙が入っていた。 その彼女からの手紙だった。「妊娠し退学することにしました。 今まで仲良くしていただいてありがとうございました。」 その手紙のインクが私の涙でにじんだ。

痛みは思い出に変わり 道は険しいが 必ず 違うものがある。彼女と一緒にいた時、一緒に夏の暑さのなか歩き、あくびし、やがてあなたはいなくなったが私にとって素晴らしくもあり、重い荷物のような想い出。私は背負って道を歩いていく。

【こればっかし歌詞の意味がわからない Mr.BIG】 私のイメージからして全くの推測であるが 自分の彼女を奪おうとする 男 ミスタービッグ これにうろつく なと 警告してるようなイメージがある。

 私、このAll Right Nowはあまり好きではなく、失恋中はこの曲だけは飛ばしてアルバムを聴いた。
  風の頼りに彼女が出産したと言うことを聞いた。

  それから35年。私も55歳になった。BOOK・OFFでこのCDを買った。昔聞いていたアルバムは大学卒業と同時に友人にあげた。偶然目にしたCD、この時も何となく買った。何となくである。
  初めて味わった大失恋がポールロジャースの歌声で走馬灯のように蘇る。

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