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【MMPI研究5.2】最新の基礎的な尺度 再構成臨床(Restructured Clinical/RC)尺度~②開発の4ステップ

 「MMPIでMMPI-2を使う」ことを目指して学んでいます。「MMPI2(by1)」計画と呼んでます。その学びの一端をシェアしたいと思います。本ノートはMMPIヘビーユーザー向けです。
 特に今回は、MMPI-3にも引き継がれる再構成臨床(Restructured Clinical/RC)尺度です。すべてMMPI-2トレーニングスライドに基づいています。今回は、RC尺度の作り方、について。


RCスケールの開発
• ステップ1:士気喪失をとらえる
―“MMPI-2の第一因子first factor”に関連する
 ―ウォルシュのA
 ―全般的不適応
• 士気喪失の仮説:
 ―多くの士気喪失項目がMMPI-2の臨床尺度にある
 ―臨床的に重要で、測定する価値がある
 ―自己報告された性質における、全般的な快-不快または 悲しみ-幸せの次元に相当する ―ほとんどの臨床上の状態に共有されるが、あらゆる感情的/心理的障害の区分をしない。
 ―不安を含むネガティブな活性化と正の相関がある。
 ―抑うつへのリスクを増すポジティブな活性化と負の相関がある。
 ―臨床尺度の2と7を組み合わせた項目の因子分析を通して復元することができる。
・ステップ1の完了:
 ―士気喪失項目セットの同定
  ・臨床尺度の2と7からの項目への因子分析は、双方の尺度からの項目における一つの大きな因子(士気喪失)、第2尺度特有の項目と、第7尺度特有の項目、そしてそれぞれの尺度の中核成分を明らかにした。
• ステップ2:弁別的なコア成分についての作業仮説
 ―士気喪失はあらゆる臨床尺度の弁別的コアではない
 ―臨床尺度から士気喪失の項目を除去すると、さらなる収束的妥当性や識別的妥当性の測定をすることが必要となる
 ―士気喪失と結合した臨床尺度をそれぞれ因子分析することによって、士気喪失の因子と、臨床尺度の弁別的コアを表す因子を明らかにするだろう
• ステップの2の完了:
 それぞれの臨床尺度の項目と、士気喪失の項目の結びつきについて因子分析を行い、それぞれの臨床尺度に弁別的コア成分(因子)の特定がなされた(※1)
• 臨床尺度の弁別的コア1:身体的訴え項目
• 臨床尺度の弁別的コア2:低肯定感情・失感情項目
• 臨床尺度の弁別的コア3:冷笑性項目
 ―反転したスコアは素朴さ項目
 ―第3尺度は不均質(※2)で、ほかの成分が同定された。
• 臨床尺度の弁別的コア4:反社会的行動項目
• 臨床尺度の弁別的コア6:妄想反映項目と被害感項目
• 臨床尺度の弁別的コア7:緊張、不安、神経質といったような機能不全的否定的感情に関連する項目
• 臨床尺度の弁別的コア8:異常な感覚体験、思考障害、常軌逸脱経験を示す項目
• 臨床尺度の弁別的コア9:軽躁的活動性に関連した項目
• ステップ3:再構成臨床核(S)尺度を抽出する
• S尺度の目的:
―同定された臨床尺度のコア成分表す
―核尺度の弁別性を最大限にする。
―最終的なRC尺度の開発に使う
•ステップ3の完了
 ―臨床尺度の項目が適切にその尺度のコアと相関し、ほかの尺度のコア(そして士気喪失)と相関が最小になるように特定された。
 ―12の比較的簡易なS尺度が開発された。士気喪失、RC1、RC2、RC3、RC4、RC6、RC7、RC8、RC9(核尺度は第5尺度、第0尺度も開発しており、RC5m,RC5f,RC0)
• ステップ4:最終的なRCスケールの抽出
―それぞれの臨床尺度で特定されたコア成分がしめされた。第5尺度、第0尺度は除外(精神病理の尺度ではない)
―4つの臨床サンプル (精神科の男性、精神科の女性、ETOHの男性、ETOHの女性(※9))で、全567のMMPI‐2項目と12のS尺度の相関を算出した。
―4つのサンプルすべてにおいて、3つの基準すべてを満たす場合、項目を選択する
• 全般:すべてのサンプルで高い相関
• 収束的:核尺度と閾値の相関以上
• 識別的:ほかの核尺度と閾値の相関以下
• さらなる改良点:
―RC7とRC9のコア特徴をより弁別的に特別な分析を行った
―思わしくない項目を特定するために、内部整合性を分析した。
―外的基準との相関に基づいて項目を削除または再割り当てした

http://images.pearsonclinical.com/images/assets/mmpi-2/4_mmpi-2_rc-scales.pdf
P3~11

  おもに因子分析をつかった、統計的手法に基づいた質問紙の作り直し、の流れ。中心は「士気喪失」。これが団子の櫛。臨床尺度の中心は文字通り「種」。「種」は核となる要素、今まで臨床尺度は項目重なっちゃっていたから、ちゃんと弁別できる、他と違う尺度をえりすぐって取り出してつくっていく、というイメージでしょうか。「種」から花咲くのがRC尺度ですね。
  そのなかで第5尺度、第0尺度はお別れ。確かに、MMPI・MMPI-2時代から、5,0を含むコードタイプってその是非が問われていました。そうだ、MMPI-2RF/MMPI-3では、4-5-6尺度の「受動攻撃Vパタン」は、もう使えないんでしょうね。受動攻撃Vパタン、結構いいんですよ。使えるんですよね、あれ。

注釈にコメントします。
(※1)
よく意味が分からない。
原文は
Item factor analyse of each individual Clinical Scale combined with Demoralization items will reveal Demoralization factor and factor representing distinctive core of Clinical Scale in question
たぶん、あんなかんじだとおもう。
(※2)
不均質の原文が「heterogenity」
「異質な、不均質な」という意味。
 対義語に homogenity 「同種、同質(性)、同次性、均質性」
この対の言葉は印象的で、まさにMMPIの基礎尺度はheterogenity、RCはhomogenityってこと。

(※3)
ETOHがわからない。
 検索しても全部「エタノール」と出てくる。エタノール男性、エタノール女性?アルコール依存グループか?などと考えてしまうが、そうだと裏付ける情報もないです。

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