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そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。 | オンラインサービスの価格設定FSP-Dモデル【要約】

まいどひでやです!

今回は『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。』という本を紹介します。

突然ですが、自社商品の価格ってどのように決めていますか?
ちゃんと学問をベースにしたロジックが存在していますでしょうか?

僕がこのYouTubeチャンネルでこの本を取り上げた理由はここにあります。
この答えが書いてあるんです。

海外に目を向けるとGoogleやamazonをはじめ、多くの最先端企業では、
経済学者の雇用が進み
「経済学のビジネス実装」の成果が実証されているそうです。

本書の著者の今井さんは日本でも「経済学のビジネス実装」を進め、成長戦略を加速すべきと主張します。

本書は全6章で構成されています。
第1章から第2章では、経済学がなぜビジネスの現場で必要なのかを説いています。
第3章から第6章では、経済学初心者でも知っているだけで、ビジネスの結果を変えることができる4つのツールと銘打ち、各章で一つずつ解説されています。

今回はIT事業に携わる方の大切なヒントになると僕が思った箇所を中心に解説していきたいと思います!

1.まずは無料でもめちゃくちゃ価値のあるビジネスコンテンツをつくる!

無料=F(フリー)なので、経済学の専門用語では「F」と表記されます。
Fとはモノやサービスを無料で提供するということです。
無料で提供することでサービス利用のハードルが下がり、顧客が増えることで収益を増やせるようになります。


「フリー」は「S=ソーシャル」の中にある「ネットワーク効果」との相乗効果によって、良い結果を生み出せます。

これはインターネット業界だけでなくあらゆる業種業態でも応用できます。

面白い例は米国の電子カルテ企業プラクティス・フュージョン。
この会社は、「無料クラウド型電子カルテ」を武器に急速に利用者を増やし、4000万を超える患者の電子カルテデータを保有しています。

他の多くの電子カルテ導入費用が今でも10万~数百万運用費用も数万円~数十万円かかるのにも関わらず、プラクティス・フュージョンは"無料"なんです。

その収入源は製薬会社などからの広告費やプレミアム版の課金収入などがありますが、収集した大量の医療ビックデータを活用しそれを匿名加工したデータベースを製薬会社や医療機関に有料で提供したり医療分析ソリューションなどを提供したりして収入を得ています。

これを第3者市場といい直接はプラクティス・フュージョンは病院とフリーで取引していますが
(2者間取引)、そこで得られたデータを第3者と有料で取引しているということです。

他にもフリーの興味深い事例はいくつもあります。

 YouTubeはミュージックビデオの無料配信を行うことで楽曲の売上が増加するという事例があます。
 500以上の楽曲の半分の時系列データを分析した結果YouTubeで無料公開すると、そうでない場合に比べてCDの販売数が約19%増加するのです。
 さらに長時間のフルバージョンのものの方が短時間の区切ったものより販促効果は高かった、とのこと。

このようにネットワーク効果によって好循環が起こり始めるユーザー数の「クリティカル・マス」を超えることで、加速度的に利用者が増えていき、顧客満足度は高くなりさらに利用者が増えるという好循環が生まれます。

顧客を増やすためにフリー戦略を採用するなら出し惜しみしないことがとにかく重要!!

クリティカルマス 
商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がる分岐点

例えばレシピ検索サービスのクックパッド。
有料のプレミアム会員になると、人気レシピだけを絞り込んで検索出来たり専門家厳選レシピを閲覧できるなどの便利な機能が増えますが無料プランの範囲内だけでも充分楽しめますよね。
有料版とほぼ同価値の無料版を用意し顧客満足度を高めるのです。

「無料でも十分に便利なすごいサービスだ」と利用者に感じさせることが、
多くのユーザーの獲得そしてネットワーク効果へとつながります。

ユーザー満足度の高い無料版は有料版への誘導役としても機能します。
ユーザーが無料版でいい体験をする場合のみ有料版の売上が増加するということが研究で明らかにされてます。

最初は中々収益に繋がらず赤字になって焦ることもあるかもしれません。
ですが現在の厳しいビジネス戦を勝ち抜き、他社より一歩先に出るには、
まずはユーザーの心を掴む無料のビジネスコンテンツを提供することが大前提です。

2.多段階価格差別で利益を最大化

フリー戦略から利益を上げるためには多段階価格差別を検討すべきです。
まず価格差別というのは2種類以上の価格で物を販売することを指します。

例えば映画館で映画を見ても同じ映画でも学生は安かったりレディースデーは女性が安かったり。
あるいは高齢者だったら安かったりというさまざまな価格がありますよね。
あれは完全に不平等なわけなんですけれども。
このように同じものに対して複数の価格が付けられることは日常でよくあるわけです。

さらにモバイルゲームを考えてみればわかるんですけれども。
モバイルゲーム産業においてゲームをやっている人って0円でやっている人もいれば、月に1,000円払う人もいたり月に1万円払う人もいれば月に10万円払う人もいますよね。

結局この支払う金額って何で決められているかと言うとその人の「ゲームへのハマリ具合」ですよね。
ものすごく熱中している人は10万円払ってもいい。
なんだったら50万円払う人もいるあるいはちょっとしたライトユーザーであれば数百円しか払わない。

このようにさまざまなお金の払い方を可能にしているのが「デジタル財課金」。
つまりガチャだったりアイテム販売だったりそういったことで支払う金額を柔軟にしてるわけですね。

これって考えてみれば同じサービスを展開している・提供しているにも関わらず、支払っている金額は人によってぜんぜん違うということで、この価格差別の段階を無限大にしているという解釈ができます。

これを本書では「多段階価格サービス」と定義し近年かなり増加しています。
この多段階価格差別とは一物一価の時よりも数十パーセント多い収益をもたらし、さらには5~10倍もの収益をもたらすということがわかっています。

一物一価
特定時点における同一の財やサービスの価格はある前提条件のもとに一つしか成立しないとする経済法則

実際にモバイルゲームではなんと上位1パーセントの人が収益の57パーセントを占めているというデータがあります。
驚異的ですよね
なんならこの人達だけでサービスが成立しちゃうぐらい。

しかしこの上位1パーセントの法則で成功するには無駄な99パーセントと思わないことが肝心。
無料ユーザー・低支払額のユーザーも満足感を得られるよう裾野を広げれば、この1%も自動的に増えていきます。
更にそのようにしてユーザー数が多くなれば、ネットワーク効果で上位1パーセントの支払額もどんどん増加していくんです。

他にも変則的な多段階価格差別によって利益を上げている企業にメルカリがあります。
メルカリを利用するとわかるんですけれども購入だけなら無料で利用できますよね。

ライトユーザー・メルカリをちょっと好きな人はいくつか最低限のものを出品しそれで手数料を払うと。
それですごく熱心なユーザーは大量に出品して出品手数料を払う。

もうメルカリにハマっている人は本当にハマっていますのでものすごい量の出品をするんですね。
そうするとその出品の金額・取引金額に応じての手数料がメルカリに入る仕組みですので、大量に出品してもらうほど多くの収入が入るんですね。

実はこれも変則的な多段階価格差別になっているということが言えます。

このように一見するとまったく異なるビジネスモデルであるこういったサービスでも、多段階価格差別の観点で整理すると共通点が表れます。

しっかりとお金を払ってくれる顧客をデータから見極め適切な価格を設定しましょう

3.「FSP-D」モデルを用いたビジネス戦略を立てろ!

「FSP-D」モデルとはさきほども触れた「無料(フリー)」、「多段階価格サービス」に、「ソーシャル」「データ」という4つを組み合わせたビジネスモデルを指します。
近年成功してる世界の企業は情報財を扱いこの「FSP-Dモデル」を採用してるのは明らかです。

F=フリー
モノやサービスを「無料」で提供し多くのユーザーを獲得する。
こちらは前章で詳しく解説したので割愛します。

S=ソーシャル 
人々のソーシャル性・ネット空間のロコミなどを利用する。
ソーシャルメディア・マーケティング(S)を行えばクリティカルマスの実現が近づきます。
熱狂的なファンから応援してもらい彼らのクチコミを活用することで顧客が増加します。

P=プライス・ディスクリミネーション
「多段階価格差別」で利益を最大化していく。
こちらも前章で詳しく解説したので割愛します。

D=データ 
以上の全てをどのように進めるかをデータを使って考える。
フリーモデルの当初の収入源は広告ビジネスとなります。
どのタイミングで 誰に どんな広告を打てば宣伝効果が上がるのか。
広告主にとって非常に重要な情報を詳細なデータ分析をすることで広告収入をアップできます
また有料モデルへの転換理由やタイミングをデータ分析によって明らかにできます。

またソーシャルの中のネットワーク効果によって膨大なユーザーのビッグデータが手に入ります。
このビッグデータを分析することで
「告知を出す最適な時間帯はいつか?」など、効果的なソーシャルメディア・マーケティング戦略を立てられるようになります。

「プライス・ディスクリミネーション(価格差別)」においてもデータ分析が効果を発揮します。
ユーザーの消費活動データを分析すれば適切に価格戦略を立てられるようになります。

データは効果的な戦略を立てるうえでの最強のツールなのです。

データというツールを利用しなければビジネスは「出たとこ勝負」となり成功確率が低下します。

顧客のデータを押さえた企業が今後勝ち組になるはずです。

4.先端の経済学をビジネスの場に取り込むには?

では先端の経済学をビジネスの場に取り込むにはどうすればよいのでしょうか。
経済学者の安田洋祐さんはサイエンスとエンジニアリングの両面からのアプローチが必要と説きます。

安田洋祐
日本の経済学者。大阪大学大学院経済学研究科教授。
専門はゲーム理論、産業組織論、マーケットデザイン。
東京大学経済学部内の最優秀卒業論文に対して与えられる大内兵衛賞を受賞し経済学部卒業生総代となる。

学校教育などの場では経済学の仕組みや理論経済データの扱い方などを学びますが、それは教科書上できれいに整理された「サイエンス」の領域。
それをビジネスの現場に実装するために必要となるのは「エンジニアリング」の領域です。

そのためには日本でも少しずつ増えてるサイエンスとエンジニアリング両方を理解する経済学者を、ビジネスの現場で積極的に登用することが経済学をビジネスの場で生かす第一歩だ主張します。

その際大切なのは経済学者を先生として扱い教えを乞うスタンスをとるのではなく、パートナーとして共に課題解決に取り組んでもらうこと
そのためにはむしろ企業側が自社や自社の属する業界についての基礎知識を教えることが肝要であり、成果を上げるには最初に双方のコミュニケーションをしっかりとることに労を惜しんではいけないと説きます。

例えば経済学者に多い性質ですが専門外のことには口出ししないという性質があります。
何か聞いても自分の専門外なら「それは専門外だから」といって答えてくれない。

これは学会では誠実さでしょうがビジネスでは「確実ではなくてもいいから教えて欲しい!」となってしまう。
その人が悪いわけではなく価値観の違いです。

確実性の高い真理を求める学界と不確実でもスピードを求めるビジネス現場の違いの問題なのです。
この違いをお互いが認識し双方の立場を受け入れて問題解決に立ち向かうことが重要です。

まとめ

「世の中には、自分が直面する課題が世界初」というものはまずなく、かなりの高確率で過去に同じか類似した事例があり先人たちが試行錯誤しています。

学問とはそんな過去の経験を整理し理屈を体系化し未来に使える道具を拵えたもの。それを使わないのはあまりにももったいない。

続きはコチラの動画にて↓↓↓

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