受験小論文記録㉜ ジョブ型社会とメンバーシップ型社会

問1 ジョブ型社会とメンバーシップ型社会のそれぞれの特徴と違いを簡潔に説明したうえで、それらと女性の雇用、男女平等の在り方について筆者はどのように述べているか論じなさい
問2 1990年代半ば以降の規制緩和政策と女性の雇用の関係について、筆者はどのように述べているか論じなさい
問3 我が国において今後雇用における女性の活躍推進を図っていくためにはどのようにすればよいと思うか自分の意見を600~800字で述べよ

問1
 ジョブ型社会は、企業の中の労働をその種類ごとに職務として切り出し、その各職務を遂行する技能のある労働者をはめ込むのに対し、メンバーシップ型社会は、社内のあらゆる職務において企業の命令に従って職務を遂行することを前提とした社員と呼ばれる人の束をはめ込む。採用において、ジョブ型社会は欠員補充であるが、メンバーシップ型社会ではそのスキルに相応する賃金が支払われるのに対し、メンバーシップ型社会は様々な職務をこなしていけそうな人を新卒一括採用で「入社」させる。又、賃金において、ジョブ型社会ではそのスキルに相応する賃金が支払われるのに対し、メンバーシップ型社会では年功序列的に賃金が上がっていく、というような違いがある。
 メンバーシップ型社会の日本において、女性はいま目の前の仕事をどれだけきちんとこなせるかという些細なことではなく、数十年にわたって、企業に忠誠心を持って働き続けられるかという「能力」とどんな長時間労働でもどんな遠方への転勤でも喜んで受け入れられるという「態度」を査定され、それができないと男性並みに扱われない。
 男女平等を進めるにおいて、日本ではそもそも雇用も賃金もジョブとは無関係である。従って年功をベースとしつつ「能力」と「態度」を査定して決められる賃金に格差が生じても、直ちに違法にはならない。また、性別職務分離への男女平等の促進に関しても、日本社会の職場ではそもそも男女であまり仕事が分かれていないが、長期的な職業キャリアでは全然異なるコースで分かれる日本社会で、欧米のような「ジョブの平等」は意味がない。このように欧米の進める男女平等は日本社会のようなメンバーシップ型社会には影響を与えないという問題がある。

問2
過去20年間の日本の規制緩和策は、中核に位置する正社員に対する雇用保障と引き換えの職務・労働・勤務場所が無限定の労働者には全く手を付けず、むしろ元々手薄だった労働法規制をさらに緩和したことで、正社員の長時間労働やメンタルヘルスの悪化などの歪みが増幅した。又、周辺部の非正規雇用労働者を拡大する方向で政策をとってきた。
 そのため、女性が多い一般職コースは契約社員や派遣社員という形で非正規化が進行しており、総合職女性はよりハードワークを求められるようになってしまった。
 そのうえ、今や女性労働者の半分は非正規雇用になっており、低処遇不安定雇用にもかかわらず、その仕事内容はかつての正社員並みかそれより高い水準をもとめられるようになっている。

問3
 日本において今後雇用における女性の活躍推進を図っていくには、適切な労働時間の規定、ジョブ型社会への移行、子育て支援などが必要である。
 メンバーシップ型社会である日本において、現在女性は家庭と仕事の両立が難しい状況にある。少子高齢化が進行している日本で、女性が子育てで一定期間休んでも同じように職務へ復帰できるようにすることは必要だ。
 ジョブ型社会の採用は欠員補充ゆえ、非正規雇用はなくなる。さらに、適切な労働時間を規定する、又子育て支援をすることで、安心して子育て、復帰後のキャリア形成ができるようになる。
 ただ日本社会がジョブ型社会へ移行することには大きな障壁がある。それは欧米との意識の違いだ。欧米では古来からそれぞれが独立した個人として王や地主と契約関係を結びあっている社会を形成してきた。又、個人が自由や平等を衝突や犠牲もありながら獲得してきた歴史があり、国民全体としてそういう意識が根付いている。いっっぽう日本は、単一民族で村社旗的な社会を古来から形成してきたため、国民レベルで自由や平等、民主主義の意識から、ジョブ型社会の仕事の関係が根付いていない。
 従って、このような施策によって、女性が雇用においても男女格差なく、子育てもキャリア形成も満足にできる環境を作っていくことが、女性の社会での活躍促進につながるだろうが、依然として大きな障壁がある。制度の変更とともに意識の変更が必要だ。

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