受験小論文記録㉒ 闘技民主主義による熟議民主主義の批判

問1 熟議民主主義および闘技民主主義の内容を300字以内で説明しなさい。
問2 闘技民主主義による熟議民主主義に対する批判についてどのように考えるか、あなたの考えを500字以内で述べよ

問1
 熟議民主主義は、公開の討議の中で、多様な意見から公正な意思決定を行うための手続きを重視し、そうした手続きを得られた結論には正当性があると考える。重要なのは、話し合いが、合理性や不偏不党性のどの諸価値にのっとって行われることである。又、熟議では、恣意的な仕方で排除することがあってはならない。なっぜなら、ある一部の人々は、正当な理由もなく熟議や意思決定の場から排除されていれば、その決定プロセスは民主的な観点から見て望ましいからだ。
 一方、闘技民主主義は、和解や合意よりも対立や不和を重視し、それを民主主義の活力とみなす立場だ。闘技民主主義は、我々と彼らの境界線をめぐる終りなき抗争に価値を見いだす。

問2
 熟議民主主義への批判として、参加者の合意を目指して行われる熟議のうちに、府合意の声を退ける暗黙の強制力が働いているというものがある。「コンセンサスを形成できる」という想定は時に抑圧的に働き、とりわけ声の小さい人を沈黙させうる。又、熟議モデルは政治における感情や情念の役割を適切に強化できていないという批判もある。噴出する人々の怒りや義憤、あるいは嫉妬やルサンチマンは、政治で不可避に働く力学なのだ。感情の意義を反映しない民主主義は、いずれ排外主義のポピュリズムに回収されていく。
 また、現代のようなスピード感のある意思決定が求められる時代において、熟議民主主義的な意思決定の過程は時間がかかりすぎてしまうという問題点もある。
 国民の中のさまざまな考えを反映した政党同士が、闘技民主主義的な議論を重ね、その様子を国民にオープンにし、最終的な意思決定に向かっていくような政治をすべきだろう。
 時代によって、国民の利益になることは変わってゆく。したがって、選挙や政党同士の議論を通じて、国民がその時代に最適な政治体制を選択することが必要である。

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