受験小論文記録㉗ エスカレーターの利用方法と法規制の在り方

 私は、駅構内のエスカレーターの片方を開けて利用することを禁止すること自体は是認されるが、違反者に科料を科すように法律で定めることは是認されないと考える。なぜなら、駅に設備されているエレベーターを故障から守るためではなく、国民の権利を守るためのみに法は適応されるべきだからである。
 エスカレーターの片側を開ける行為は、日本人の協調的な傾向と相まって生まれた。そして、この行為はエスカレーターの劣化を速めてしまうという指摘から、鉄道会社が呼びかけを行っているが、未だに根強く残っている。この行為をやめさせるために、駅構内のエスカレーターでの歩行を禁止し、違反者に科料を科す法律を国会議員Aは定めようとしたが、エスカレーターの故障阻止のために、人々の身体的自由を制限する呼びかけをすることはできるが、その目的のために法を適用することはできないだろう。
 では、法律はどの範囲を規定することができるのか。電車内で老人に席を譲る状況を例にとってみると、韓国では、儒教的価値観が根付いているので、電車で老人に席を当然のように譲る。対照的なのがドイツで、この状況では、老人が、自分が高齢者であることを示すカードを提示すると、それが席を譲らなければいけないサインだという法が制定されている。これの中間をとっているのが、日本である。当然のように老人に席を譲るという価値観が全員に根付いている訳ではないが、特定の場合に必ず席を譲らなければいけないという法律もない。あくまで、慣習にまかせているのだ。
 従って、駅構内のエスカレーターの歩行を禁止すること自体は是認されるが、法律が規定できない慣習の部分に、エスカレーターの片側に並ぶ現象の是非が入ることから、法律では規定できない。
 

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