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即興2人芝居WS 初級コース 20230511


◆内容◆
60分間の即興2人芝居を行なうためのワークショップ
初級コース

◆参加者◆
男性3
女性2
合計5名

◆内容◆
 ●マルチタスク
 ●次どうなるの
 ●10分間のシーン
 ●中級コース昇格試験

◆備考◆
中級コースへの昇格試験アリ(2名)


以下振り返り

●関係性を創る事と同じくらい大切な事●
ぼくはこれまでワークショップの参加者に「シーンが始まったら、まずは出演者同士の関係性(relationship)を創りましょうね」と口酸っぱく、時には暴力を用いて教え続けてきた。これはこれで大切だと思うが、もしかするとそれよりも先に、「アイデアを出すのは半歩ずつでいい」という事を教える方が効果的なのかもしれない。
「関係性を創りましょう」と言っても、どうやって創ればいいのかわからない状態に参加者を陥らせていたかもしれない、と本日のワークで感じた。
例えば、「うちら親子じゃん?お前って俺の子じゃん?」という台詞の場合。これは出演者同士で情報の共有を一瞬で行えるものの、説明台詞であり不自然極まりない。
ではどうやって2人の出演者(AとB)が親子である事を表現する事ができるだろうか。
その方法は無数にあるが "アイデアを半歩ずつ出す" という事を実践する場合、例えば下記のようになる。
A「おはよう。朝ご飯食べる?」
B「食べてたら学校に遅刻するからいらない」
A「学校へは車で送っていってあげるから食べていきなさい」
これをさらに、説明部分を省いてみると
A「朝ごはんは?」
B「食べてたら学校遅刻する」
A「車で送ってくから食べなさい」
このようになる。
(AがBのご飯を用意する立場でありつつも、ご飯だけでなく遅刻をカバーできる存在であるという事を小出しにしていく)
この1,5ラリーの会話で、親子だと断定まではできなくともそれに近い関係性である事を推測できる。この後続く会話のラリーで親子だと確定させればよい。ラリーが多くなる事は情報の豊かさに繋がる為、恐れる必要は無い。

ちなみにこの場合、「親子である事」を表す際に「親子」という単語を一切使用していない。
人が会話をする時は、基本的には
 ・情報の共有
 ・共感
の為に行なう。
すでにお互いが知っている情報を敢えて台詞にする事を説明台詞と呼ぶ。
説明台詞を避ける為にも、アイデアを半歩ずつ出すというこの感覚を身に付けさせる事が即興芝居を行なっていく上で最優先事項かもしれない。という気付きを得た。来シーズンではそのように試してみたい。

●中級コースへの昇格試験●
今回は2名の参加。
他の参加者と同様、ノンストップで10分間のシーンを演じてもらった。
シーン冒頭の関係性を創るところや、第三者の立ち位置など危ういところはあったものの互いのコミュニケーション自体は非常に丁寧に取られていた。
結果は審査員3名中3名から「もう一度このパフォーマーを見たい」と太鼓判を押される形で幕を閉じた。
下記、閲覧者のコメント。
 ・物語が面白くなりそうな要素がたくさん出ていた
 ・二人とも落ち着いていた
 ・セットアップがしっかりできていたのでこれから起こる物語に興味を持てた

●今日のポイント1●
出てきたアイデアは、出てきた瞬間にさっさと掘り下げる。
「後で掘り下げよう」と思っても、その機会は回ってこない(仮に後で掘り下げる事ができたところで効果は薄い。観客の興味はもうすでに別のところに移っている可能性がある)。
出てきた瞬間にさっさと掘り下げるべきである。
その一方で「伏線」という考え方がある。出てきたアイデアを掘り下げずにあえて泳がせ、後に回収するやり方である。が、これはおそらく中級でも扱わない。だってとっても難しいんだもん…

●今日のポイント2●
すべての台詞には意味がある。
そのキャラクターはなぜその台詞を言っているのか、をプレーヤーは知るor気付く必要がある。
独白でない限り、台詞は相手役に何らかの影響を与える為に発されている。
即興ゆえ、喋り始めるきっかけは特にないかもしれない。それこそ「なんとなく言いたくなったから」でも問題ない。しかし、発語したその瞬間から、その台詞を言う意味or理由が必要になる。
観客に「なんでその台詞今言ったの?」と思われてはならない。
台本やシナリオの場合、それらに書かれた台詞に無意味なものは一つもない。すべての台詞が脚本家やシナリオライターの明確な狙いと意思で書かれている。即興芝居の場合、セリフに意味と命を与えるのは役者が行なう必要がある。やる事多い…

●今日のポイント3●
アイデアについて。
「bestは存在しないがbetterは存在する」
というのがぼくの考え方だ。
リンゴのイラストを描き続けるキャラクターがいた場合、なぜそうするのかのアイデアは無数に存在する。
 ・りんごが好きだから
 ・昔食べたりんごの味が忘れられないから
 ・セザンヌの生まれ変わりだから
アイデアの質は作品の質と直結する為、アイデアは何でも良いわけでは無い。より良いアイデアを瞬時に出せるようになる為のトレーニングは必要である。
がしかし、シーンの最中にいちいちアイデアの選別を行なう事は不可能だ。ではどうするか。
出てきたアイデアを使って物語を紡いでいくしかない。
正解のアイデアを探すのではなく、出たアイデアを正解にしていく超ストロングスタイルだ。AというアイデアとBというアイデアを結びつける能力が必要になってくる。

以上。

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