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「関東」、生活感の薄い言葉

これ余談なんですけど。

「○○のことって、『関東』の人たちはどう思ってるんですか?」「『関東』ではどうなんですか?」

食習慣の話題にしても、会話のリズムの話題にしても、大阪に越して来てから何気なしに聞かれる時の言い回しです。でも、正直、どう応えていいかいまだに迷ってます。迷う理由を結論から先に言うと、“関東”という、仲間意識や連帯感が希薄だからだと思います。

今暮らしている土地柄上、大阪の人に限らず、神戸や京都出身の人ともお話をする機会が多いです。そうした時、「神奈川で育って、東京で働き始めて、茨城にも住んでた」という自分の身の上を話すと、成り行き上、次のようにたずねられるのは自然なことです。

「へぇー、じゃあ関東から来たんですね。どうですか、関西は?」

なるほど、関西を代表してたずねることができるんだな、と思いました。現に「関西では家にたこ焼き器がフツーにありますよ」とか「僕たち関西人は・・・」とかいうのもよく耳にします。

ところが、逆を想定した時、成り立ちにくいんです。神奈川出身の人間が埼玉の大学に入ったとする。そこで滋賀出身の学生と出会って、仮にこうたずねる場面を想定すると・・・

「へぇー、じゃあ関西から来たんですね。どうですか、関東は?」

・・・この質問、あまりリアルじゃないんです。関東を代表して自分がたずねるという感覚を持てたことがほとんどない。

会話の中で、自分で自分のことを“関東人”と口にする人って、少ないかと思います。“関東人”というワードは、僕にとって、yahoo知恵袋とかの中だけで目にするネットスラングという印象です。

「そっか、言われてみれば、僕って“関東”出身かあ」ぐらいで、この、いわゆるを表わす“”印がいまだに取れないです。

それくらい、関東って言葉は、地上で暮らしてる人たちの生活感が薄い言葉です。せいぜい、「関東甲信越地方の天気をお伝えします」とか「関東ローム層だから土が赤いんです」とか、空か地面かの話をするときぐらいでしょうか。それ以外の場面では、関東というワードはほとんど耳にしてこなかったし、口にしてこなかったのです。

もちろん関東独特の風習ってあるみたいですよね。例えば、おでんにはちくわぶを入れるとか。でも、ちくわぶがローカルなものだと知った後になっても、そこまでちくわぶに思い入れを持とうにも持てないといいますか。

他の例を挙げてみましょう。例えば、高校野球のベスト8で、神奈川代表の東海大相模が敗れたとします。そしたら、準決勝に進んだ西東京代表の早稲田実業に対し、どういう気持ちを持つか。「同じ関東のよしみだから、あとは夢を託した」みたいに早稲田実業を応援するかというと、そうした感覚を持った記憶があまり「ない」のです、振り返ってみると。

連帯感が希薄でありながら、じゃあ逆に、県民性を取り上げる番組で言われているような、いわゆる“関東”の中でのライバル意識があるかというと、これもまた希薄です。トークバトルはガチじゃなくて、あくまでテレビの中だけのバラエティだなと思って観てます。なので、早実が勝ち上がったことを悔しがり、沖縄代表の興南にぜひ打ち負かしてほしい、とも別に思わないんです。

その一方、「関西」という言葉には生活感を感じます。この言葉の生活感には、まとまりがあると同時に、多様性もあるみたいです。買い物をするとき、「僕は梅田(大阪)」「私は河原町(京都)」「僕なら三宮(神戸)」みたいなそれぞれの愛着があるようだ、とでも言いますか。

そこから思うと、冒頭の「『関東』の人はどう思ってるんですか?」と聞いてくれるのは、ひょっとしたら多様性への配慮なのかもしれません。「私たちがなんでも大阪で十把一絡げにされたら困るように、あなたたちもきっと東京で十把一絡げにされたら困るだろうと思う。だから関東ってざっくり聞いてるつもりなんだけど」と。

そこで、関東というワードの話に戻すと、「関東」に当たる言葉って、自分の実感からすると、関西よりも、むしろ「近畿」に近いと思います。会社名に入っている程度の、そんなに生活感が濃くないニュアンスです。(関西と近畿の違いに関する、ウィキペディアに書いてあるような行政上の区分はひとまず置いといた話なんですけど。)

「近畿に当たる言葉が関東だとすると、じゃあ、関西に当たる言葉は何なの?」という疑問が当然浮かぶと思います。「首都圏」? いやいや、ますます生活感がありません。ラジオの道路交通情報ぐらいでしかほとんど耳にしない言葉です。なので、僕個人の応えは、今のところ次の通りです。「関西に当たるちょうどいい言葉は存在しないかもしれない」

そんなこんなで、関東を代表して何かをしゃべる、という自信がいまだに持てないまま、大阪暮らしが10年になろうとしています。

うーん、言ってること伝わるかわかんないんですけど。


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