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67歳のおじさんをヒッチハイクで送った話〜30分で感じた生き方について〜

2024年の7/6(土)、
午前中に山口きらら博記念公園での仕事を終えた帰宅中、山陽自動車道佐波川サービスエリア(上り)でのこと。

セブンイレブンでコーヒーと昼食に「たんぱく質が摂れるチキン&チリ」と「フルーツサンド」を買い、車の中で食べようとした瞬間

「トントン」
と窓を叩く音。

見ると60代ぐらいであろう作業服を着たおじさんが立っている。
窓を開けると
「大阪目指してヒッチハイクしているので乗せて欲しい」
とのこと。なので
「徳山東で降りるから、そんなに距離稼げませんよ?」
と伝えると、「途中のパーキングエリアでも良い」と。

ただ次の富海パーキングエリア(上り)は小さいし、長距離トラックぐらいしか普段停車してない気がする。それも伝えたのだが、「それでも良い」と。少し考えたが、気温は熱中症警戒アラートがでるぐらいの暑さ。かなり困ってそうなので「どうぞ」と後部座席に乗ってもらい出発した。

走り出して沈黙するのも嫌だし、せっかくなので話をしてみようと思い、「おじさん、大阪に何しに行くんですか?」
と聞くと
「大阪の知り合いに仕事を紹介してもらいに」という。

色々その後聞いてみたところ、おじさんは中卒で鹿児島で働いていたそうで、仕事は原子力発電所の塗装という特殊な感じの仕事をしていたそう。それが東日本大震災以降、仕事が無くなり、それもあって奥さんとも離婚。有り金をはたいて福岡まで出てきてそこからヒッチハイクをして防府東まできたが、そこから断られ続け、ここ数日は何も食べてない・・・。

正直、どこまで本当なのかは分からないし、確かめる術もない。ただ身の上話以外の話で興味深かったのが、
「僕は67歳だけど、お兄さんは何歳?」と聞かれたので、
「52歳ですよ」
と答えると、即座に
「イノシシだね」
と干支を言ってこられた。確かに・・・と思っていると間髪入れず、
「お父さん、何年生まれ?」
と言われたので
「昭和9年です」
と答えると、今度は干支のみならず
「石原裕次郎さん、坂上二郎さん、藤村俊二さんらと一緒だね」と。

運転中なのでその時は調べることは出来なかったが、後で調べると確かにそうだった。実は父は生前に石原裕次郎と同い年というのは記憶にあり、それもあって多分あってるんだろうなとは感じたので、
「スゴイですね」
と伝えると、今度は
「お母さん、何年生まれ?」と聞かれた。
「昭和11年です」と言うと、
「野際陽子さん、北島三郎さん、長嶋茂雄さんと一緒だね」と。これも間髪入れず、全く迷うことなく伝えてこられた。

これも後で調べると確かに合っていて、ある意味「特殊能力」だと感じたし、何か役に立つ仕事に就ければ良いのになと思った。

その他にも山口県の各市町ごとの出身芸能人やスポーツ選手の話(これもかなり詳しくて驚いたが)をする内に、富海パーキングエリアが近づいてきた。しかし、きっとここではまたヒッチハイクは断られ続けそうだし、手持ちの現金もほぼ無さそう。



結論。「徳山駅まで送るから、電車で大阪まで行ってもらおう」

ということで、おじさんにその旨を伝え、徳山駅で1万円と昼食に「たんぱく質が摂れるチキン&チリ」を渡して約30分の67歳のおじさんをヒッチハイクで送る旅は終わった。

ただ別れ際におじさんから
「絶対働いて返すから、名刺ください」と言われたので、職場の名刺を渡して別れた。1万円は返ってくるに越したことはないが、正直それは期待して渡してはいない。本当かどうか分からない身の上話を本気で信じた訳でもない。

ただ今の世の中は基本的に「個人情報の流出」や「詐欺被害」に会いたくないから必要以上に人に冷たくなってしまってないかなと普段から感じている。

確かにそれで被害に会うこともあるし、今回だって後ろから刃物でも突きつけられれば逃げ場も無いし、とんでもない事態になっていた可能性はある。

実際、上手く1万円を巻き上げられたのかもしれない。

でも、間違いなく自分は今生きてる。
1万円はパチンコで失うことも有る。(もう何十年もしてないけど)
1万円タバコで消費することも有る。(もう何十年も吸ってないけど)
1万円コンタクトで消費することも有る。(今まで使ったことないけど)

そう考えたら1万円を失うことは大したことない。そりゃいつもかつもは無理だけど。

1万円で「お兄さん、一生忘れない、感謝してる」って涙ながらに言われた方が生きた1万円を使った人生だと思う。

そんな人生のことを考えた30分だった。
おじさん、大阪に無事に着いてると良いな。

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