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lncRNA paper 20 - Functional Classification and Experimental Dissection of Long Noncoding RNAs

【今回の論文】

Cell. 2018 Jan 25;172(3):393-407.
doi: 10.1016/j.cell.2018.01.011.

Functional Classification and Experimental Dissection of Long Noncoding RNAs

Florian Kopp, Joshua T Mendell

【要約】

この論文では、長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)の機能的分類と実験的解析に焦点を当てています。lncRNAは遺伝子発現の調節に重要な役割を果たすことが知られており、その機能を理解することが重要であると述べられています。遺伝子制御要素(エンハンサーやプロモーター)が双方向に転写を開始することが一般的であることから、多くのlncRNAはエンハンサーやプロモーターで転写が開始されるが、特異的な機能を果たさないRNAである可能性があると指摘されています。論文では、lncRNAの機能を理解するための実験的アプローチや分類方法について提案されており、lncRNAの活動を解析するための戦略が示されています。これらのアプローチを通じて、lncRNAの新たな生物学的側面を明らかにする可能性があると述べられています。

Q1. 膨大なトランスクリプトームから機能的なノンコーディング転写産物を識別する上で、重要な課題は何でしょうか?

機能的なlncRNAを広範なトランスクリプトームから見分ける上での主な課題の一つは、多くのRNAが転写されていることに加えて、そのうちどれが実際に機能的な役割を果たしているかを特定することです。lncRNAは非常に多様であり、その機能が明確に理解されていないため、機能的なlncRNAを他のRNAや転写物と区別することは困難です。さらに、一部のlncRNAはタンパク質に翻訳される可能性もあるため、その機能を正確に特定することが重要です。そのため、lncRNAの機能を特定するためには、厳密な実験的アプローチや分析が必要とされます。

Q2. lncRNA 遺伝子座はその制御機能に基づいてどのように分類されますか?

lncRNAのローカスは、その調節機能に基づいて以下のように分類されます:

cisでの遺伝子発現の調節: 一部のlncRNAは近隣遺伝子の発現やクロマチン状態を調節するため、cisで機能します。この場合、lncRNAの成熟したトランスクリプトが特異的な機能を持つことによって遺伝子の発現を調節する可能性があります。

transでの機能: 一部のlncRNAは、転写サイトを離れて細胞内で機能するため、transで機能します。これらのlncRNAは、転写された場所を離れて他の細胞機能を調節する可能性があります。

これらの分類により、lncRNAの機能がローカルなクロマチン構造や遺伝子発現を調節するか、それとも細胞内で他の機能を果たすかが明確になります。

Q3. この総説では、lncRNAの活性を解明するために、どのような実験的アプローチが提案されていますか?

lncRNAの活動を解析するための実験的アプローチが提案されています。具体的な手法として、以下のステップが示されています:

機能解析のための検討対象となるlncRNAを特定する。

そのlncRNAがcisで遺伝子発現を調節するのか、それともtransで機能するのかを判断する。

機能解析を行うために、損失および増加の機能実験を実施する。

lncRNAの機能喪失の影響を評価するために、CRISPR/Cas9などのゲノム編集手法を使用して

lncRNAのプロモーターまたはローカス全体を削除する。

lncRNAの発現が変化した場合、近隣遺伝子の転写と安定した発現を決定する。

lncRNAの異常な発現によって近隣遺伝子の発現が変化した場合、そのlncRNAがcisで遺伝子発現を調節することを示唆する。

lncRNAの異なる発現がlncRNAノックアウト細胞で変化した遺伝子発現を救済しない場合、そのローカスがcisで遺伝子発現を調節することを確立する。

これらの手法を使用することで、lncRNAの活動を詳細に解析し、その機能や分子メカニズムを明らかにすることが可能となります。

【創薬への展望】

lncRNAの研究は、創薬分野においても重要な展望を示しています。lncRNAは、遺伝子発現の調節や細胞内シグナル伝達などの重要な生物学的プロセスに関与しており、疾患の発症や進行にも関連していることが明らかになっています。したがって、lncRNAを標的とした新しい治療法や創薬アプローチが期待されています。

lncRNAを標的とした創薬の展望には、以下のようなポイントがあります:

新たな治療標的の発見: lncRNAの研究により、新たな疾患関連遺伝子やシグナル経路が特定され、これらを標的とした治療法の開発が可能となります。

疾患の診断と治療の向上: lncRNAの発現パターンや機能が疾患の診断や治療予測に活用される可能性があります。

RNAベースの治療法の開発: lncRNAを標的としたRNA干渉療法や編集技術の進歩により、新しい治療法が開発される可能性があります。

個別化医療の実現: lncRNAの個体差や疾患特異的な役割を理解することで、個別化医療の実現に向けた取り組みが進む可能性があります。

これらの展望からも、lncRNAの研究は将来的に創薬分野において重要な役割を果たすことが期待されています。

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