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lncRNA paper 10 - Noncoding RNA therapeutics - challenges and potential solutions

【今回の論文】

Nat Rev Drug Discov. 2021 Aug;20(8):629-651.
doi: 10.1038/s41573-021-00219-z. Epub 2021 Jun 18.

Noncoding RNA therapeutics - challenges and potential solutions

Melanie Winkle, Sherien M El-Daly, Muller Fabbri, George A Calin

【要約】

この論文は、ノンコーディングRNA(ncRNA)を標的とした治療法の課題と潜在的な解決策に焦点を当てています。ncRNAには、マイクロRNA(miRNA)や長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)などが含まれ、これらのRNAは遺伝子発現やタンパク質機能を調節する重要な役割を果たしています。がんなどの疾患の治療において、ncRNAを標的とした治療法は有望なアプローチとされています。過去10年間で、RNAベースの治療法の臨床応用に向けた取り組みが進められてきました。これには、主にアンチセンスオリゴヌクレオチドや小さな干渉RNAを用いたものが含まれており、いくつかの治験で強力な効果が報告されている一方、他の研究では限られた効果や毒性が示されています。さらに、アンチmiRNAなどの新たな治療法も臨床試験中であり、lncRNAを標的とした治療法も注目を集めています。RNAベースの治療法は、がんやその他の疾患の治療において重要な役割を果たす可能性があり、今後の研究と臨床応用が期待されています。

Q1. ncRNAは遺伝子発現やタンパク質機能をどのように調節していますか?

ncRNAは、遺伝子発現やタンパク質機能をさまざまな方法で調節しています。主なメカニズムには以下のようなものがあります:

miRNA: miRNAは、mRNAと相互作用して特定の遺伝子の発現を抑制することができます。miRNAは、mRNAと部分的に相補的な配列に結合し、その結果、mRNAの翻訳が阻害されることでタンパク質の産生が制御されます。

lncRNA: lncRNAは、転写調節やエピジェネティックな変化を介して遺伝子発現を制御することができます。一部のlncRNAは、転写因子やクロマチン修飾酵素と相互作用し、遺伝子の転写を促進または抑制することが知られています。

サーキュラーRNA(circRNA): circRNAは、miRNAのスポンジとして機能することがあります。つまり、miRNAがcircRNAに結合することで、miRNAがその本来の標的mRNAと相互作用するのを阻害し、遺伝子発現が調節されます。

これらのncRNAは、遺伝子発現の調節において重要な役割を果たしており、細胞内のさまざまなプロセスを制御することで、細胞の機能や状態を調節しています。

Q2. 論文で言及されているRNAベースの治療法にはどのような種類がありますか?

アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASOs): ASOsは、特定のmRNAに結合してその翻訳を阻害することで遺伝子発現を調節します。ASOsは、特定の遺伝子を標的とすることで疾患の治療に活用されています。

小さな干渉RNA(siRNAs): siRNAsは、特定のmRNAに結合してその分解を促進し、遺伝子発現を抑制します。これにより、疾患関連の遺伝子の発現を制御することが可能です。

マイクロRNA(miRNA)ミミクス: miRNAミミクスは、細胞内のmiRNAと同様の機能を持つ人工的に合成されたmiRNAです。これらは、miRNAの機能を補完することで遺伝子発現を制御し、疾患の治療に役立てられます。

アンチmiRNA(antimiRs): アンチmiRNAは、特定のmiRNAと相互作用してその機能を阻害することで、遺伝子発現を調節します。これにより、疾患に関連するmiRNAの活性を抑制することが可能です。

サーキュラーRNA(circRNAs): circRNAsは、miRNAのスポンジとして機能することがあります。miRNAがcircRNAに結合することで、miRNAの標的mRNAとの相互作用が阻害され、遺伝子発現が制御されます。

これらのRNAベースの治療法は、遺伝子発現の調節や疾患の治療において有用なツールとして研究されており、いくつかはFDAやEMAによって承認されています。

Q3. 現在、FDAやEMAによって承認されているRNAベースの治療薬はいくつありますか?

現在、FDAやEMAによって承認されているRNAベースの治療薬は11種類あります。これらの治療薬には、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASOs)や小さな干渉RNA(siRNAs)などが含まれています。これらの治療薬は、特定の遺伝子を標的として遺伝子発現を調節し、さまざまな疾患の治療に使用されています。FDAやEMAによる承認は、これらの治療薬が安全かつ有効であることを確認するための重要なステップとなっています。

【創薬への展望】

RNAベースの治療法は、遺伝子発現の調節や疾患の治療において革新的なアプローチを提供しています。将来の創薬における展望としては、以下のような点が挙げられます:

新たな治療標的の発見: RNAベースの治療法は、従来のタンパク質標的に加えて、遺伝子レベルでの標的を持つことができます。これにより、新たな治療標的の発見や疾患のメカニズムの理解が進む可能性があります。

個別化医療の実現: RNAベースの治療法は、遺伝子発現の個別化された調節が可能であるため、患者ごとに適した治療法を提供する個別化医療の実現に向けた可能性があります。

新たな治療法の開発: RNAベースの治療法は、従来の薬物療法やタンパク質ベースの治療法とは異なるメカニズムで働くため、新たな治療法の開発につながる可能性があります。

副作用の軽減: RNAベースの治療法は、特異的な標的に作用することができるため、従来の薬物と比較して副作用が少ない可能性があります。

疾患の早期診断と治療: RNAベースの治療法は、疾患の発症や進行に関与する遺伝子の発現を調節することができるため、疾患の早期診断や治療に役立つ可能性があります。

これらの展望を踏まえて、RNAベースの治療法は今後の創薬研究において重要な役割を果たすことが期待されています。

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