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lncRNA paper 23 - Liquid phase condensation in cell physiology and disease

「今回の論文」

Science. 2017 Sep 22;357(6357):eaaf4382. doi: 10.1126/science.aaf4382.

Liquid phase condensation in cell physiology and disease

Yongdae Shin, Clifford P Brangwynne

「要約」

細胞内で液相凝縮体は、タンパク質やRNAなどの生体分子が相分離を起こすことで形成されます。これは特定の条件下で、多価のドメインや無秩序領域を持つタンパク質が相互作用し、液相凝縮体を形成することによって実現されます。液相凝縮体は細胞内で特定の分子を集中させ、機能的な領域を形成する役割を果たし、RNAの制御的な処理や翻訳の調節に関与しています。また、液相凝縮体が固体状態へと変化する過程は、タンパク質の凝集疾患の理解に重要であり、アミロイド線維の形成や凝集疾患のメカニズム解明に貢献します。

Q1. 細胞内の膜のない集合体は、どのようにして液体のような特徴を示しますか?

細胞内の膜のない集合体は、液体-液体相分離と呼ばれるプロセスを通じて液体のような特徴を示します。この現象は、タンパク質やRNAなどの生体分子が細胞質や核質内で膜が存在しない状態で凝縮した液体状の液滴を形成することを含みます。

これらの集合体は通常、丸い形態を取り、接触すると単一の液滴に融合し、核膜などの細胞内表面に付着することができます。

これらの集合体内の成分分子は、周囲の細胞環境との動的な交換を示し、液体相凝縮メカニズムを示唆しています。多価ドメインや固有の無秩序領域を持つ分子間の弱い一時的な相互作用が、相分離の主要な駆動力となります。

さらに、これらの構造は部分的に固体のような特性を持つ多層構造を示すことがあります。複数の異なる液体相がこれらの集合体内に共存し、相対的な液体表面張力によって決定された豊かな構造の液滴アーキテクチャが生じます。さらに、固体のような相は、運動学的および熱力学的な起源の複数の経路を通じて、代謝性な液体凝縮物から生じることがあり、これはタンパク質凝集病の理解に重要な意味を持ちます。

Q2. 生物学的プロセスにおいて多様な役割を果たす膜なしオルガネラの例にはどのようなものがありますか?

生物学的プロセスにおいて多様な役割を果たす膜なしオルガネラの例には以下のようなものがあります:

核小体(Nucleolus): 核内で見られる最大の核小体であり、新生rRNAの逐次処理に重要であると考えられています。

ストレス顆粒(Stress Granules): 細胞質内で形成されるRNAとタンパク質からなる構造で、ストレス応答に関与しています。

P-体(Processing Bodies, P-bodies): mRNAの貯蔵、分解、および翻訳の制御に関与する細胞質内の構造です。

ジェルム粒子(Germ Granules): 生殖細胞において重要なRNAやタンパク質を含む構造であり、発生や生殖に関与しています。

これらの膜なしオルガネラは、細胞内で特定の分子群を区画化し濃縮することで、様々な生物学的プロセスに貢献しています。

Q3. 細胞内で液相凝縮体はどのように形成されるのでしょうか、またこのことはタンパク質の凝集疾患を理解する上でどのような意味を持つのでしょうか?

細胞内で液相凝縮体は、通常、タンパク質やRNAなどの生体分子が特定の条件下で相分離を起こすことによって形成されます。この相分離は、分子間の相互作用の変化や特定の領域の濃度勾配などによって引き起こされます。特に、多価のドメインや無秩序領域を持つタンパク質が相互作用し、弱い結合を形成することで、液相凝縮体が形成されます。

液相凝縮体の形成は、細胞内で特定の分子を局所的に集中させ、機能的な領域を形成することができるため、細胞内の生物学的プロセスに重要な役割を果たします。例えば、ストレス顆粒やP-体などの液相凝縮体は、RNAの制御的な処理や翻訳の調節に関与しています。

また、液相凝縮体が固体状態へと変化する過程は、タンパク質の凝集疾患を理解する上で重要です。液相凝縮体が時間とともにより固体状態に移行することがあり、これがアミロイド線維の形成やタンパク質凝集の基盤となることが知られています。このような相転移は、アミロイド線維の形成や凝集疾患の発症メカニズムを理解する上で重要な手がかりとなります。

「創薬への展望」

液相凝縮体とlncRNAの関係は、創薬分野においても重要な研究対象となっています。液相凝縮体が細胞内で特定の分子を集中させ、機能的な領域を形成することで、細胞内の生物学的プロセスに影響を与える可能性があります。一方、lncRNAは遺伝子発現の調節や細胞内シグナル伝達に関与し、液相凝縮体の形成や機能に影響を与えることが知られています。

創薬においては、液相凝縮体やlncRNAを標的とした新規治療法の開発が期待されています。液相凝縮体を標的とした創薬アプローチでは、特定の凝縮体を分解したり、凝縮体の形成を阻害することで病態を改善する可能性があります。また、lncRNAを標的とした創薬研究では、特定のlncRNAと液相凝縮体の相互作用を阻害することで、疾患の進行を抑制する新たな治療法が開発される可能性があります。

このように、液相凝縮体とlncRNAの相互作用を理解し、それらを標的とした創薬研究が進められることで、新たな治療法や薬剤の開発につながる可能性があります。これらの研究は、疾患のメカニズムを理解し、より効果的な治療法の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。

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