本:Engineers in VOYAGE - 事業をエンジニアリングする技術者たち

ソフトウェアエンジニアのモチベーションの源泉というのは人によって様々ですが、「事業に貢献する」ことに強くモチベートされる方が、偶然私の周りには多くいます。「Engineers in VOYAGE - 事業をエンジニアリングする技術者たち」は、そういう種類のソフトウェアエンジニアが読むと、この会社で仕事したら楽しいだろうな!と思わせてくれる本だと思います。

この本でエピソードを語るソフトウェアエンジニアたちは、すべからくVOYAGE GROUPの企業理念として掲げられたSOULとCREEDを体現している方々なのだと思います。事業開発もソフトウェア開発も、様々な判断の積み重ねです。結果として成功できている事業には、そこに到達するまでの「学び」が様々な形で積み重なっていて、時折、それは「技術的負債」のような見え方でソフトウェアエンジニアに壁として立ちはだかります。また、負債そのものよりも、「負債の返済活動」自体が難しくなってしまうことも、本当にあるあるだと思います。ソフトウェア業界では、これらをどう解決していくのかが常にテーマとして、姿形を変えながら取り扱われているくらいです。本書を読んで私が思うのは、VOYAGE GROUPは、負債の上手い乗りこなし方を身に付けているということです。事業開発という目的のためには、避けて通れない技術的負債の問題に対して、組織としての対応能力を磨いているように思います。

本書で語られるエピドードはどれも、何かしら私自身に刺さるものがありました。直接知っている方の名前も出てくるのでなおさらです。その中で個人的に最もいろいろな想像を掻き立てられてやまなかったのは、ECナビのエピソードです。「よく分からなくなっている1200を超えるDBテーブル」 この1文だけで、ソフトウェアの設計、アーキテクチャ、エンジニアのチームとそれを取り巻く組織や事業部の構造、組織の文化、エンジニアやチームの評価、エンジニアのモチベーションなどなど、語れることが無限に出てきそうです。本書の中では、この壁と立ち向かう戦略や、それを実行するための作戦群の一部としての「葬り」の取り組みなどが語られていています。葬りは、取り組む対象のスコープ(またはレイヤー)に応じてカテゴライズされているのがとても良く、同じような課題に取り組む必要があるチームにはそのまま参考になるかと思います。それと同時に、葬りを可能にする、つまり価値ある活動だと評価される方向づけ(価値観や指針)が、VOYAGE GROUPには根付いているのだということにも気付かされます。価値観や指針といっても、人によって少しづつ理解度や状況に応じた解釈が異なるのは当然なので、現実には多くの価値観のすり合わせ(価値ある活動だと理解してもらうための活動)も行われていたでしょうね。良い方向付けと、そこへ向かうための努力。一筋縄では作ることができない目に見えないモノを、VOYAGE GROUPは創り上げているのだと思います。

事業のエンジニアリングに関わる一人として、良い刺激をもらうことができた本でした。執筆に関わったVOYAGE GROUPの方々、CTO小賀さん、聞き手の和田さん、ラムダノートの鹿野さん、価値ある本の執筆ありがとうございました!

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