「文舵」 練習問題 (その4)

ル=グイン著「文体の舵を取れ」の練習問題に対するワークです

〈第3章 練習問題① 「長短どちらも」 問1〉

15文字くらいの文でひと段落の語りを書くというお題

■日本語の語数と英語の語数概念の違いなのか、ずいぶん不自由に感じました。まあ、漢字を多く使うとかツイッターに似た工夫ができるのでしょうが、たぶん、問の本意とは違うでしょうから、「短文」という範囲で。30分を5分程度オーバーしました。すいませんです。こういうのは苦手だ。


(本文) 【472w】

ラインが前触れなく停止した。ミカが気づき班長が確認した。班長は〈材料〉を心配する。その自動供給は停止していない。プール内の〈材料〉は総質量を増していく。「臨界するぞ」と班長が叫ぶ。彼は〈材料〉の停止を本部にリクエストする。それでも惨事は避けられそうにない。工場には緊張と諦念が満ちる。誰もが思い出している。十七年前の事故のことを。入口近くの工員から逃げ始める。一人、二人、十人、十五人。全員が振り返らずに全速力で走る。狭い鉛のドアに何百人もが押し寄せる。ミカも走る。走りながら兄の声を聞いた気がする。「お前たちは俺たちが守る」と。彼は前の事故のとき工員たちを救った。数人の仲間と〈材料〉を汲み出したのだ。〈材料〉は質量を保ち臨界に至らなかった。代わりに彼らは大量被爆した。ミカは私は無理だと自分に言い聞かせる。無理無理無理と叫びながら走る。兄の優しい笑顔が「大丈夫」と言う。五人の同僚がプールに向かい走り始めた。ミカはなんとか鉛のドアの外に出る。今度は彼らが犠牲になるのだ。兄と同型のR-22汎用型だ。ミカは兄の通信に応える。私たちは大丈夫だよ、と。

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