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【書籍】一本のロウソクのようにー森信三と田中繁男の教育哲学

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp128「4月7日:それで、あなたは何をしましたか(田中繁男さん 実践人の家副理事長)」を取り上げたいと思います。

 田中繁男氏が教育現場で直面した挑戦と、その対応について語っています。学校は生徒の不良行為に悩まされていましたが、田中氏は生徒たちを理解し、彼らの心に寄り添うことで状況を改善しました。森信三先生は、田中氏の取り組みを現代の宗教と称賛し、教育の現場における行動の重要性を強調しました。森先生自身も、困難な状況で何を行うかという問いを投げかけ、一本のロウソクのように行動することの価値を説きました。

この話を、森信三先生が神戸でやっておられた読書会で報告しました。 すると、こう言われました。「田中さん、それが現代の宗教です。 あなたがやっているように、反抗する子どもの心の底にあるものを探り当て、相手のしてほしいことをする。これが現代の宗教なのです。あなたのやっていることは宗教です」
(中略)
「現在の学校が困難な状況にあることは、私も知っています。 だから、その中でいまあなたが何をしているか、それを知りたいのです。例えば、満員の講堂が停電になったとします。しかし、五燭の電灯一つ、あるいはロウソク一本があれば、大きな騒ぎにもならず、無事退場できるのです。あなたには、その一本のロウソクになろうとする気持ちがないのですか」

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p128より引用

 田中氏は、森先生との読書会を通して、教育における実践の重要性を深く理解しました。森先生の逝去に際しては、田中氏に対する深い信頼と尊敬の証として、「清虔」という言葉を贈りました。これは、田中氏が教育者として、そして人として、生涯にわたって誠実で純粋な生き方を貫いたことを示しています。全体を通して、教育現場で直面する挑戦に対する情熱的な取り組みと、個人の成長と貢献の重要性が強調されています。

<人事の立場で考えること>

 この物語は、深い教育的洞察と人間理解に満ちた、田中繁男氏の経験を通じて、教育現場の困難に直面した際の具体的な対応策と、それに対する思慮深い反省を伝えています。田中氏の行動は、単に問題を解決することを超え、生徒の心に寄り添い、彼らの本質的なニーズを理解しようとする姿勢を示しています。この姿勢は、人事管理の文脈においても非常に価値があります。人事の立場から見ても、この物語から学べる教訓は多岐にわたります。特に、組織内の問題や挑戦に直面した際の対応、個々の従業員のモチベーションとエンゲージメントの維持、そして組織文化の構築に関連しています。

個々への積極的なアプローチ
 
田中氏が学校に来ない生徒のために自宅まで迎えに行くという行動は、組織内で問題を抱える従業員に対する積極的なアプローチの重要性を示しています。問題が発生した際には、待っていても解決しないことが多いです。人事部は、問題を早期に特定し、適切な支援を提供することで、従業員が抱える問題の解決に貢献することができます。

深い理解と共感の示し方
 物語の中で、反抗する子どもの心の底にあるものを探り当て、相手のしてほしいことをするというアプローチは、従業員のニーズと期待を理解し、それに応えることの重要性を強調しています。人事部は、従業員一人ひとりの動機や価値観を理解し、個々人の成長と満足を支援するために、個別化されたアプローチを採用する必要があります。

危機に対するポジティブな対応
 森信三先生が提唱する「その一本のロウソクになろうとする気持ち」は、困難や危機に直面した際に、ポジティブな影響を及ぼすリーダーシップの役割を示しています。人事部は、組織内の変化や挑戦に対して、前向きな姿勢を持ち、従業員を励まし、導くことが重要です。

教育と継続的な学びの価値
 物語全体を通じて、教育とは何をしたか、という問いは、組織における継続的な学習と成長の必要性を強調しています。人事部は、従業員のスキル開発とキャリア成長を支援するために、教育プログラムや研修を計画し、実施する責任があります。

倫理と価値観の実践
 田中氏が示した清虔な生き方とは、個人として、また組織として、高い倫理観と価値観を持ち続けることの重要性を示しています。人事部は、組織の価値観を定義し、これらの価値観が日々の業務や意思決定プロセスにおいて実践されるように努める必要があります。

 教育現場だけでなく、ビジネスの世界においても、人々に対する深い理解と共感、個々のニーズに対する真摯な対応、そして困難な状況におけるリーダーシップと倫理的な行動がいかに重要であるかを教えてくれます。人事の立場からは、これらの価値を組織内で実践し、育成することが、持続可能な成長と従業員の満足に繋がる重要な鍵であると言えるでしょう。


教室での心温まる光景を描いています。教師と生徒たちの間には深い理解と繋がりがあり、困難にもかかわらず、希望と教育の力を信じる姿勢が感じられます。背景の書籍や教材、倫理的価値を象徴するアイテムが、ポジティブで変革的な教育の雰囲気を映し出しています。柔らかく優しい画風は、この物語の感情的な深みを捉え、教育が個人の成長とコミュニティの幸福に与える深い影響を伝えています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




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