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【書籍】旅路の仲間ー瞽女小林ハルの人生哲学

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp238「7月21日:よい人と歩けば祭り、悪い人と一緒は修行(小林ハル 越後瞽女・人間国宝)」を取り上げたいと思います。

 小林氏は、生後3か月で失明しました。その後、5歳から瞽女(ごぜ)の修行を開始。数多くの苦難を経て晩年に「最後の長岡瞽女」、「最後の瞽女」として脚光を浴びた人物です。自らの経験を通して人生の深い教訓を伝えています。彼女は越後瞽女として、人間国宝に認定された一人で、視力を失っているにも関わらず、その障害を乗り越えて豊かな人生を歩んできました。彼女の話には、旅する中で様々な人々との出会いがあり、それぞれの人間関係が彼女にとっての祭りであったり、修行であったりしたことが語られています。瞽女の生活では、視力のある「手引き」とペアを組み、一緒に旅をする必要がありましたが、常に気の合う相手と組めるわけではなく、多くの場合、さまざまな性格の人々と共に時間を過ごさなければなりませんでした。小林ハルは、これらの経験を通じて、人との関わり方における大切な教訓を学びました。

瞽女は目が見えないので、必ず「手引き」という目の見える人と組んで旅に出かけます。いつも気の合う人と歩ければいいのですが、そういったことは滅多になく、あの人と歩いたり、この人と歩いたりと、いろいろな人と組まなければなりません。だから、瞽女の組み合わせは一つの修行といってもよいかもしれません。私はいい人と歩けば祭りだし、悪い人と一緒だと修行だと思っていつも歩いてきました。瞽女は目が見えないので、必ず「手引き」という目の見える人と組んで旅に出かけます。いつも気の合う人と歩ければいいのですが、そういったことは滅多になく、あの人と歩いたり、この人と歩いたりと、いろいろな人と組まなければなりません。だから、瞽女の組み合わせは一つの修行といってもよいかもしれません。私はいい人と歩けば祭りだし、悪い人と一緒だと修行だと思っていつも歩いてきました。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p238より引用

 73歳で老人ホームに入居ましたが、彼女はそこで新たな人間関係の中で生活することになります。ほとんどの入居者が視力を持つ中、彼女は一人の意地悪な人物と同室になります。この同室者は彼女に対して度々辛辣な言葉を投げかけますが、小林氏はそれに屈することなく、自身の信念を持って対応しました。彼女は、どこへ行っても、どんな年齢になっても、人生はさまざまな困難に満ちていると認識していましたが、それを乗り越えるためには、自分自身を見失わず、他人に対しても慈悲の心を忘れないことが重要であると考えていました。

 老人ホームでの生活は、瞽女としての旅と同様、良い人との出会いは祭りのように楽しく、悪い人との共生は修行のように厳しいものでした。しかし、時間が経つにつれ、彼女は良い人々と出会い、互いに支え合うことができるようになりました。この経験から、彼女は人生の苦労や困難を乗り越えることの大切さ、そしてその過程で得られる喜びや満足感について深く理解しました。

 小林氏の話は、苦難の中にも幸せや学びがあること、そして人生の旅路で出会う人々が自身の成長に不可欠であることを示しています。彼女は、どんな状況下でも決して人に背くことなく、神仏への信仰を持ち続け、人生の苦楽を受け入れることで、最終的には真の幸せを見出すことができました。

どこへ行っても、いくつになってもいろいろな苦労があるものです。しかし、神仏はすべてお見通しです。人に言いたいこと、したいことを何も考えないでしていると、必ず天罰があたる。私は決して無理なことを言ったり、したりしないですべて神仏にお任せしてきました。言いたいことはいっぱいありましたが、それを口から外に出してしまえば必ずバチがあたります。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p238より引用


 この物語は、若い頃の苦労が後の楽しみの種であるという教訓を体現しており、百歳になった今(記事記載当時で、2005年に105歳で死没)でも、彼女はその真実を深く実感しています。彼女の人生哲学は、どのような状況にあっても決して諦めず、常に前向きに生きることの重要性を私たちに教えてくれます。

人事の視点から考えること

 小林氏の物語は、人間関係の複雑さと、人生の旅路における挑戦と報酬の絶え間ない交錯を示す、深い洞察と教訓を含んでいます。瞽女としての彼女の経験は、私たち一人一人の人生における「手引き」の役割を持つ人々との出会いの重要性を浮き彫りにします。この物語を通じて得られる教訓は多岐にわたり、それぞれが人生を豊かにするための価値ある示唆を提供しています。

人生の旅路と人間関係の重要性

 人生は、さまざまな人との出会いと共に織りなされる一連の経験です。小林氏の言葉には、良い人との出会いが人生を祭りのように楽しいものに変える一方で、困難な人との関わり合いが修行のようなものになり得るという、深い真実が込められています。これは、私たちが日々交わる人間関係が、私たち自身の成長にどのように影響を及ぼすかを示しています。良い関係は私たちを支え、悪い関係は私たちを試練に立たせますが、どちらも最終的には私たちを形作る重要な要素です。

耐え忍ぶ力と前向きな姿勢の力

 老人ホームでの小林氏の経験は、年齢を重ねるにつれて直面する新たな挑戦の一例を示しています。意地悪な同室者との関わりは、彼女にとって新たな試練でしたが、彼女はこの状況を乗り越えるために耐え忍ぶ力と前向きな姿勢を用いました。この姿勢から、困難な状況でも平穏を保ち、自らの心を乱さずにいられる精神的な強さの重要性を学ぶことができます。人生のどの段階でも、この種の内面的な強さが私たちを支える礎となります。

人生の晩年における幸福の可能性

 小林氏が最終的に良い人との出会いを経験し、幸せを享受したことは、人生の晩年でさえ新たな幸せを見出すことが可能であることを示しています。この物語は、年齢を重ねることが新たな絆や喜びを見つける機会を閉ざすものではなく、むしろ新たな始まりを意味することがあることを教えてくれます。老人ホームでの生活が、最終的には姉妹のような関係を築く場となったのです。これは、人生のどの段階においても、人間関係を豊かにし、新たな幸せを追求する余地があることを強調しています。

苦難を乗り越えた先にある報酬

 「若い時の苦は楽の種」という小林氏の言葉は、苦労や困難が最終的には報酬や満足感につながる可能性を示唆しています。人生における挑戦や試練は、一見すると乗り越えがたい障害のように見えるかもしれませんが、これらの経験が私たちにとって価値ある教訓を提供し、成長の機会となることが多いのです。小林氏が示すように、これらの苦難を乗り越えることで、私たちは人生の深い満足感と幸福を手に入れることができます。

まとめ

 小林氏の人生と教訓は、人間関係の重要性、耐え忍ぶ力、前向きな姿勢、人生の晩年における幸福の可能性、そして苦難を乗り越えた先にある報酬の価値を示しています。彼女の物語は、人生のあらゆる段階で直面する挑戦に立ち向かうための指針を提供し、私たち自身の人生の旅を豊かにするための貴重な教訓を含んでいます。小林氏の経験は、人生の複雑さと美しさを理解し、それを最大限に生きるための気づきを与えてくれます。

多様な背景を持つ人々に囲まれた高齢の女性が、彼女の知恵と強さを分かち合う温かく心温まる瞬間を捉えています。彼女の盲目は、集まりの中心としての彼女の役割を妨げるものではありません。代わりに、彼女はその場の人々全員を自分の話や笑い声で引きつけます。この場所は温かみと快適さを放ち、グループ間の結束と相互支援を反映しています。このシーンは、人間関係の本質、成長、そして共有された体験の美しさを体現しており、彼女の人生の旅を形作ってきた豊かな人間関係の絵を描いています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




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