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【書籍】雪絵ちゃんとの約束: 特別支援学校の教諭(山元加津子氏)と生徒の心温まる物語

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp200「6月15日:雪絵ちゃんとの最後の約束(山元加津子 特別支援学校教諭)」を取り上げたいと思います。

 特別支援学校の教諭である山元加津子氏が、特別な生徒である雪絵ちゃんとの心温まるエピソードを綴った物語です。12月26日、著者が韓国への旅行準備をしている最中、雪絵ちゃんが亡くなったという知らせが入ります。雪絵ちゃんの自宅に駆けつけた著者は、平和な表情で眠る雪絵ちゃんとその家族に対面します。亡くなる直前、雪絵ちゃんは遠い病院への転院を控え、生まれ育った家での最後の時間を選んだと家族は語ります。

 山元氏は雪絵ちゃんの記憶を胸に、家族から託された形見を持って韓国へと旅立ちます。しかし、旅行中も雪絵ちゃんのことを忘れることはできず、彼女の短い人生に思いを馳せながら、彼女が残した詩を見つけます。その詩では、雪絵ちゃんが自分の人生と誕生日を肯定的にとらえ、自己愛に満ちた姿勢を示しています。雪絵ちゃんの強い精神とポジティブな生き方が、著者に深い印象を与えます。

誕生日
私、今日うまれたの。一分一秒の狂いもなく、今日誕生しました。少しでもずれていたら、今頃健康だったかもしれない。今の人生を送るには、一分一秒のくるいもなく生まれてこなければいけなかったの。 結構これって難しいんだよ。一二月二八日、私の大好きで、大切で、しあわせな日。 今日生まれてきて大成功!「すのう」に生まれてきて、これもまた大成功!
※すのう=雪絵ちゃんのペンネーム

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p200

 山元氏は日本に戻った後も、雪絵ちゃんの死とその影響に苦しみます。自分の人生における意味と方向性を見失いかけた時、雪絵ちゃんとの最後の約束を思い出します。それは、人間はそれぞれが異なり、それぞれが大切であるという理解を世界中に広めるというものでした。この約束を果たすために、著者は再び立ち上がる力を見いだします。

「世界中なんて、そんなこと私には無理」と言いかけた時、雪絵ちゃんに「何にも言わないで。何でも聞いてくれるって言ったよね」と言われて、私は「分かったよ」と約束したんです。そうだ、雪絵ちゃんとの約束を果たさなきゃ。この思いが私に再び立ち上がる力を与えてくれました。

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p200

 この物語は、障害を持つ一人の少女が抱いた生きる希望と、山元氏を取り巻く人々との深い絆を描き出しています。雪絵ちゃんとの出会いと別れを通じて、自身が人生の意味と向き合う過程を経験し、読者にも深い感動を与えます。それは、人生の困難に立ち向かう勇気と、愛する人との約束を守ることの大切さを教えてくれる物語です。

人事としてどう考えるか

 雪絵ちゃんとの最後の約束の話は、人事が直面する多くの課題に対する深い洞察を提供します。これは、組織内での個々の従業員の扱い方、人材開発、コミュニケーション戦略、そして組織文化の構築に至るまで、多面的な示唆を含んでいます。以下に、これらの要素を掘り下げ、人事の役割としてどのように応用できるかを詳細に述べます。

1. 個別のニーズへの対応

 雪絵ちゃんの話は、教育の現場だけでなく、職場においても、個々人のニーズと期待に対する理解と対応の重要性を浮き彫りにします。人事としては、従業員一人ひとりが抱える固有のニーズや課題に敏感であり、柔軟に対応できる体制を整えることが重要です。たとえば、従業員が仕事と私生活のバランスを取りやすくするためのフレックスタイム制度の導入、キャリア発展を支援するための研修プログラムやメンタリングの提供、さらには多様なバックグラウンドを持つ従業員が共感し合える包括的な職場環境の構築などが挙げられます。

2. コミュニケーションの力

 雪絵ちゃんとの最後の会話からは、強力なコミュニケーションの力が伝わってきます。人事としては、組織内外のコミュニケーションを促進し、オープンで透明性のある情報共有を心掛けることが重要です。従業員が自分の声が聞かれ、価値を認められていると感じることで、組織への帰属意識やエンゲージメントが高まります。これには、定期的なフィードバックの機会の提供、従業員の意見を聞くためのフォーラムやサーベイの実施、そして多様性と包括性を促進するイニシアチブが含まれます。

3. 苦境を乗り越える力

 雪絵ちゃんの物語はまた、個人が困難に直面したときに内に秘める強さを引き出すきっかけにもなり得ることを示しています。人事としては、従業員が困難な状況に直面した際にサポートとリソースを提供することで、レジリエンス(回復力)を育むことができます。これには、メンタルヘルスのサポート、ストレス管理のためのワークショップ、そしてキャリアや個人的な困難に対処するための相談サービスが含まれます。また、成功体験や困難を乗り越えた話を共有することで、他の従業員にも前向きな影響を与えることができます。

4. 教育と人材開発の重要性

 雪絵ちゃん自身が自己表現の手段として詩を選んだように、従業員が自らの才能や能力を最大限に発揮できるような機会の提供は、人事にとって重要な役割です。これには、専門的スキルの向上を目指す研修プログラム、リーダーシップ開発プログラム、キャリアパスの計画支援、そして新しい技術や方法論を学ぶためのリソースの提供が含まれます。従業員が自己成長の機会を持ち、その過程で組織に対しても価値を提供できるようにすることは、持続可能な組織成長に不可欠です。

5. 組織文化の構築

 最後に、雪絵ちゃんとの経験からは、強い組織文化が個人のエンゲージメントやパフォーマンスに与える影響の大きさが伝わってきます。人事としては、共有された価値観と目標を持つ組織文化の構築に努めることが求められます。これには、従業員の成功を祝う文化、失敗から学ぶ機会を提供する文化、そして多様性と包括性を重視する文化が含まれます。組織が一丸となって目標に向かって努力するとき、その成果は個々人の成長と組織全体の成功につながります。

 雪絵ちゃんとの最後の約束から得られる教訓は、人事が直面する日々の課題に対して、深い洞察と具体的なアクションプランを提供します。個々の従業員への理解とサポート、効果的なコミュニケーション、困難を乗り越えるためのレジリエンスの育成、教育と人材開発への投資、そして強固な組織文化の構築は、どのようなビジネス環境においても、組織と従業員の両方にとっての成功への鍵となります。

特別支援学校の教諭が愛する故人である生徒、雪絵ちゃんの平和な自宅を訪れる心温まる夕暮れのシーンを捉えています。教諭は形見を手に持ち、故人の家族が集まるリビングルームを優しい光に包まれながら見つめています。雪絵ちゃんは穏やかに眠る姿で描かれ、彼女の平和な旅立ちを象徴しています。部屋は暖かさと思い出で満ちており、壁には雪絵ちゃんと家族の写真や絵が飾られています。教諭のシルエットは外の優しい夕日によって縁取られ、雪絵ちゃんの生涯を思い出し、彼女が残した愛、回復力、そして詩を称える旅を反映しています。この瞬間は、教諭と生徒の間の深い絆と、雪絵ちゃんの人生に対する前向きな見方が周りの人々に与えた深い影響を包含しています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




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