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リファラル採用(紹介による採用)のメリット・デメリットの一考察

リファラル採用の活用

 最近リファラル採用(Referral recruiting)が多くなってきました。昔の「コネ」に近いものですが、採用のプロセス自体は他の応募者と、同じように行う企業も多くなってきているように感じます。

 リファラル採用メリット、デメリットをまとめました。ここで示すメリット、デメリットはある条件の下で考えられることであり、一考察ですので、一つの切り口と捉えていただければと思います。メリットがデメリットに、そして逆もあり得ます。私も長く採用業務を担当する中で、何回かリファラル採用の現場を体験しましたが、色々考えさせられるところがありました。

 リファラル採用は採用の手法の1つに過ぎません。メリット、デメリットをしっかりと理解する、リファラル採用だけに頼りすぎないことも重要です。


リファラル採用のメリット

リファラル採用には以下のメリットがあると考えられます。

1.優秀な候補者の獲得
 従業員自身が、信頼できる関係またはネットワークから、よいと思われる候補者を推薦します。したがって、高品質の候補者を獲得できる可能性が高いです。従業員は、自身の経験や知識に基づいて、自社の組織文化、求められるスキルに適合する候補者を見極めることができます。

2.自社の文化の強化
 既存の従業員の組織に対する愛着、忠誠心を高める効果があります。自身が推薦した候補者が採用(成功)された場合、従業員は「自身の貢献や組織への関与を認められた」と感じることができます。また、既存の従業員が、自身のネットワークを通じて新たな人材を招くことで、組織の文化や価値観を共有する人材を増やすことができます。

3.採用プロセスの効率化
 通常の採用プロセスに比べて効率的な結果をもたらす傾向があります。従業員が推薦した候補者は、既に推薦者によってスクリーニングされたことになります。採用プロセスの初期段階での選考時間、コストを削減することができます。

4.自社のブランド価値の向上
 自社のブランド価値を高める効果があります。従業員が自身の関係やネットワークを通じて積極的に自社を売り込むことは、組織の魅力・働きやすさを証明することにもなります。自社ブランドを向上させ、組織への関心、好意的なイメージを広める効果があります。これにより、優秀な候補者がより興味を持ち、応募する可能性が高まります。

5.高い採用成功率
 一般的に、「採用成功率」が高いとされています。推薦者と候補者の関係があるため、候補者はより組織に適した人物であり、文化の適合性、チームへの適応性が高い傾向があります。また、リファラル採用によって採用された候補者は、推薦者から、情報やサポートを受けることができるため、早期に組織に適応しやすいといわれています。中途採用者で、組織への適応に苦しむというのはよく聞きます。

6.採用コストの削減
 採用プロセスの一環として従業員が積極的に参加することになります。結果として、採用コスト(この場合はキャッシュ)を削減する効果があります。広告費や採用エージェントへの手数料(結構高いです!)など、通常の採用方法に伴う費用を節約することができます。さらに、リファラル採用によって優秀な候補者が獲得できることから、新入社員の教育やトレーニングにかかるコストも削減することができます。

7.多様性の促進
 多様性を促進する機会を提供します。従業員は、自身のネットワークを通じてさまざまな背景や経験を持つ候補者を推薦することができます。これにより、より多様な人材が組織にアクセスし、さまざまな視点やアイデアが組織内にもたらされる可能性が高まります。リファラル採用は、組織の多様性の取り組みをサポートする一手段となります。

リファラル採用のデメリット

 リファラル採用にはいくつかのデメリットも存在します。以下にいくつかの例を挙げます。

1.多様性がなくなる
 従業員の関係やネットワークに「依存」して候補者を獲得します。従業員のバイアス、社交的なつながりの影響を受ける可能性があります。その結果、組織の多様性を欠いた採用結果となる可能性があります。この問題を緩和するために、リファラル採用においても多様性を重視し、積極的な取り組みを行う必要があります。

2.公平な機会の提供の欠如
 推薦者と候補者の関係に基づいて行われるため、推薦された候補者には他の応募者よりも「優遇」されてしまう可能性があります。これにより、他の有資格者が公正な機会を受けることができなくなる可能性があります。採用プロセスを公平かつ透明に行い、リファラル採用による候補者との公平な競争を確保することが重要です。

3.従業員の関係への影響
 リファラル採用によって推薦された候補者が採用された場合、従業員と候補者の関係が影響を受ける可能性があります。推薦者は、採用された候補者の業績・行動に責任を感じることになります。結果として、個人間の関係に影響を与える可能性があります。組織は、このような状況を予防し、公正かつプロフェッショナルな労働環境を維持するためのガイドライン等を策定する必要が生じる可能性があります。

4.内部のモラルハザード
 従業員に採用プロセスに関与する機会を与えることで、不正行為や利益相反のリスクを引き起こす可能性があります。従業員が個人的なつながりや利益を優先し、適切な評価や選考プロセスを経ずに推薦する場合、採用の質や公正さに問題が生じる可能性があります。組織は、厳密なガイドラインと監視体制を確立し、内部のモラルハザードを防止するための対策を講じる必要があります。

5.人事部門の負担増
 従業員の積極的な参加を必要とするため、人事部門や採用担当者の負担がかえって増加する可能性があります。推薦候補者のスクリーニングや選考プロセスの管理、候補者との連絡や対応など、追加の作業と対応が必要です。組織は、人事部門のリソースや効率的なプロセス設計に投資することで、負担を最小限に抑える必要があります。

6.組織の革新の制約
 既存の従業員のネットワークに基づいて行われるため、新たな視点や異なるバックグラウンドを持つ人材の獲得が制約される可能性があります。組織が特定の社交グループや、業界内のネットワークに偏る傾向がある場合、多様性と革新が制約される可能性があります。組織は、リファラル採用と並行して、幅広い求人チャネルや採用手法を活用し、多様な人材の獲得にも努めるべきでしょう。

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